プノン・クーレンとクバール・スピアン

川の中に彫られた神像やリンガ。
変わった遺跡がシェムリアップ北東に残っています。
2006年12月訪問。

写真はクバール・スピアン



プノン・クーレン

プノン・クーレンはシェムリアップの北東にある小高い山です。道路が良くなったおかげで車で2時間強といったところでしょうか。プノンとは山、クーレンとはライチ。ライチの山という意味ですが、この地はアンコール王朝を開いたジャヤヴァルマン2世が即位した場所です。ジャヤヴァルマン2世はプノン・クーレンの高い丘の上で「宇宙の帝王すなわち転輪聖王」として即位しました。このため、この場所は当時、マヘンドラパルヴァダ、「偉大なるインドラ神の山」と呼ばれていたそうです。

王が即位する前のカンボジアは混乱状態にあり、ジャワの王朝(ボロブドゥールを築いたシャイレーンドラ王朝と考えられます)の支配下にありましたが、ジャヤヴァルマン2世はジャワからの独立を果たし、独立国の王となったわけです。王自身もジャワから戻ったという話もあるようです。

王朝創始の場所としてこの地は聖なる場所とされ、王がシヴァ神を信仰したことから、川の中にリンガ等が彫られたというのですが・・・・。

駐車場から川に着いて、すぐのところに彫刻があるとガイドさんに教えられました。・・・といっても、水の中なので、なかなかわかりにくい。ただ、横たわった人物像が石に彫られているのは、なんとなく分かります。


   


神像のレリーフは分かりにくいですが、これはさすがに分かりやすい。
四角の中に丸があります。リンガとヨニです。




こちらは千体リンガ。この千体リンガから、この川は「7千体のリンガの河」という意味のリンガ・ムイポアンと呼ばれています。

川の中に、たくさんの四角と、その中に丸。

ヨニとリンガだそうです。

単に岩を彫るというのではなく、川底の岩肌にこれだけのものを彫るのですから、結構大変な作業だったのではないでしょうか。

雨季と乾季がある国ですから、水の少ない乾季に彫ったのでしょうけれど(写真を撮った12月も乾季です)、それでも、かなり大変だったのではないかと思います。

そもそも、シヴァ神を信仰したからといって、なぜ、川の中にリンガを彫ったりしたんでしょうか。

ガイドさんによると、王がここで沐浴をしたからだというのですが・・・。

どうやら、神聖な場所にリンガを置くことで、より霊力を強め、そこで王が沐浴することで、王の力を強くする・・・というようなことのようです。

おそらく川にリンガを彫ることで、シヴァ神の威光を川の流れと共に広める、という意味もあるのだと思います。





その後、近くのお寺へ。観光地というより、地元の人達の信仰の場所です。大きな岩の頂上に巨大な涅槃仏が置かれていました。






その後、再び川に戻ります。滝があって、地元の人達が水遊びをしていました。
ちょっとした行楽地になっているみたいです。




私たちの目的はこれ。大きなヴィシュヌ神のレリーフがあるはずなんですが・・・。
眠るヴィシュヌ神の臍から蓮の花が咲いてブラフマーが生まれる様子が彫られているはず・・です。



よく分からないけど、滝はあるし、涼しかった・・・。




クバール・スピアン

クバール・スピアンはプノン・クーレンよりシェムリアップに近いところにあります。バンテアイ・スレイとプノン・クーレンの中間くらいでしょうか。

クバール・スピアンのクバールとは頭・スピアンは橋という意味。シェムリアップに流れる川の源流にあたります。ここは結構な山の中にあり、車を降りてからしばらく山歩きをしなくてはなりません。
ハイキングというには、ちょっとハードな山道を30分以上く登って、ようやくレリーフのある場所に出ます。

最初に見えたのがこのレリーフ
手前の岩にリンガが無数に彫られ、その奥に神像のレリーフがあります。
ナンディに乗るシヴァと妻パールヴァティ(右)とヴィシュヌ神。




ヴィシュヌ神を拡大してみました。
左のヴィシュヌ神はアーナンダ(竜王)の上に横たわっているようです。
右はヴィシュヌ神の臍から蓮が咲いてブラフマー神が現れたという神話でしょうか。





少し進むと、再び千体リンガとヴィシュヌ神のレリーフがあります。




ここには見事なヴィシュヌ神と、その臍から現れるブラフマー神のレリーフがあったそうですが・・・
ヴィシュヌ神の上半身が白くなっているのは盗まれたのだそうです。
カンボジアでは文化財の盗難が絶えないとガイドさんが哀しげに言っていました。




川沿いに進むと神像のレリーフやリンガが次々と現れます。

   


ここにもレリーフがありました。




これは分かりやすいヨニとリンガ(左下)。
千体リンガは何か所にもあります(右下)。

   


ナンディに乗ったシヴァ神でしょうか(左下)。
右下は、結構凶暴な顔をしてますがカエルなんだそうです。

   



ひと通り見終わったところに滝がありました。
気持ちいいなあ。




かっては見学なんて無理と言われたプノン・クーレンとクバール・スピアンですが、道も良くなり、地雷の撤去も進んだらしく、シェムリアップからの日帰り観光が可能となりました。私のツアーでは、バンテアイ・スレイを見てからプノン・クーレン、川べりで昼食後、クバール・スピアンと回っています(その後、バンテアイ・サムレにも寄りましたが、さすがに時間切れ)。

見学が楽なのはプノン・クーレンですが、レリーフの多さ・見ごたえという点ではクバール・スピアンでしょう。ただ、結構、山道はきつかったです。もしかしたら、今は道も整備されているかもしれませんが・・・。


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参考文献

アンコール 遺跡を訪ねる旅 日本語版(ARCHIPELAGO PRESS ディエリー・ゼフィー箸)

基本的に現地ガイドさんの説明に基づいてまとめています。