コンポン・スヴァイのプリア・カン(大プリア・カン)

シェムリアップから東南に約145キロ。
コンポン・スヴァイ(現コンポン・トム)に巨大遺跡があります。
訪れることの難しい遺跡に2007年1月行くことができました。

写真は遺跡入口


アンコールにも同じ名前のプリア・カンという遺跡がありますが、この遺跡は全く別の遺跡で、区別するために地名を付けて呼ばれたり、大プリア・カンと呼ばれることもあります。

「大」を付けて呼ばれるのも当然で、この寺院はアンコール・ワットの4倍の規模を持ち、二重の環濠と三重の外周壁を持っていました。11世紀前半にスールヤヴァルマン1世が造営を始め、12世紀終わりにジャヤヴァルマン7世が仏教寺院に改修したと言われています。
遺跡のあるコンボン・トムは、かってコンボン・スヴァイと言われ、アンコール朝の宿敵チャンパに対する防衛拠点でした。ジャヤヴァルマン7世はこの寺院で兵を集めたとも言われています。

この遺跡、ポルポト時代の内戦で荒れ果て、地雷も多いことから、道案内が不可欠です。

少し前まではクメールルージュの元将軍が道案内をしてくれていたそうですが、2006年には県知事になっていたため、部下の人達が道案内をしてくれました。

クメールルージュと聞くと、思わず警戒してしまうのが普通の日本人だと思いますが、クメールルージュがカンボジアを支配していたころ、当然のことながら優秀な人はクメールルージュ内で高い地位に昇ったのであって、クメールルージュだからダメというような簡単なものではないようです。

確かに、クメールルージュが支配していた時代に生き残るためにはどうしたらいいかを考えてみれば容易ではなかったはずです。

元クメールルージュでも優秀な人格者達は、カンボジア復興に力を尽くしているし、人々から頼られているとのこと。
実際、知事は尊敬されている人格者でした。

人達四輪駆動車で川を何回か突っ切り、ようやく遺跡です。
遺跡入口は上の写真のように、かなり立派です。
門の前にナーガが残っていました。


遺跡に入っていくと、立派な建物が傾いていました。
連子状窓を持ち、デバターで飾られた建物ですが崩壊が進んでいます。




遺跡はかなり荒れ果てている様子です。牛が放牧されてました。




現地ガイドさんによると、大プリア・カンが荒廃したのはポルポト時代の内戦にあることはもちろんだけれども、むしろ、その後の盗掘者の横行によるところが多いのだそうです。美しい彫刻やレリーフを盗みやすくするために盗掘者は平気で建物まで壊してしまうとのこと。

この遺跡は資料が余りなく、今後の調査を待たなければならないことが多いようですが、その際、盗掘による遺跡の破壊が障害になりそうです。


回廊があったのでしょうか。かなり崩れています。




ところどころに、かっての寺院の栄華をしのばせるようなレリーフが残っています。
仏教寺院だったことが、よく分かるレリーフです。





かっては、さぞ美しかっただろうという建物が次々に現れます。
仏像と細かいレリーフが刻まれた建物(左下)。
面白い形の建物もありました。塔堂でしょうか(右下)。

   


右上の写真の建物には生々しい盗掘の跡が見られました。
おそらく美しいデバターを盗んだのでしょう。ひどいです。

   


今でも残っているレリーフが美しいだけに、盗掘による破壊は悔しい限りです。

   



更に進むと繊細なレリーフが残っている建物がありました。





こちらも美しいですが、盗掘にやられています。





こちらの建物は美しい連子状窓が残っています。偽窓のようですね。





存在感のある建物が残ります。

   


1時間ほどの観光でしたが、やはり盗掘が悔しい。盗掘された場所は修復しようがありません。
かなり立派な遺跡なだけに、はやく整備して、これ以上の盗掘を防いで欲しいものです。




プレア・ストゥン



プレア・ストゥンは近くにある小さな遺跡で、バイヨンのような四面塔が残っています。
バイヨンと同じくジャヤヴァルマン7世によって建設されたものです。結構保存状態がいいです。




四面塔は顔が綺麗に残っています。

   


近くに民家があるので荒らされなかったのでしょうか。
デバター像も綺麗に残っていました。




チャーミングなデバター達です。
顔が違うのが面白い。モデルがいたんでしょうか。

   




プレア・ロムレイ(象の寺)



付近にはバレイ(貯水池)もあり、そのほとりに象の寺と呼ばれる寺院もあります。現在はガネーシャが祀られていて地元の人々の信仰の対象になっていますが、保存状態の良いガルーダが残っています。上の写真は名前の由来になった象の石像。


ガルーダ。ナーガに乗っています。

   



スピアン・トゥモー

大プリア・カンに向う途中にあったアンコール朝の橋をついでに紹介します。
シェムリアップを出て車で1時間ちょっとのところにありました。
石造で今も現役でオートバイや馬車は通っています。
(大プリア・カンとは関係ない遺跡?です。)

   



私が大プリア・カンを訪れたのは、観光客が行けるようになって間もない時期だったので、今はもう少し整備が進んでいるかもしれません。アンコール王朝最大規模の寺院跡なのですし、なんとか修復・調査が進んで、盗掘者が出ないようになって欲しいものです。


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参考文献

アンコール 遺跡を訪ねる旅 日本語版(ARCHIPELAGO PRESS ディエリー・ゼフィー箸)

基本的にガイドさんの説明に基づいてまとめています。