古都トロギール

アドリア海東岸の小さな町
人々が造った人口の島には
中世の雰囲気が色濃く残っていました。
2019年10月訪問

水路から見た聖ロブロ大聖堂


トロギールはアドリア海東岸、スプリットの西約25qのところにある港町。町の歴史は古く、紀元前3世紀ころにギリシャ人の植民市として建築されたのが始まりとされています。当時の名は「トリグリオン」。元々は半島に築かれた町でしたが、中世、人々は防御のため水路を造って人工の島とし、町を城壁で囲みました。南北500m、東西1qの小さな町には中世の趣きが色濃く残っていて、その旧市街は世界遺産となっています。町の見どころは多く、聖ロブロ大聖堂を中心に旧市街を観光しました。15世紀に建てられたカメルレンゴの要塞も見どころとされています。

人々が町を本土から切り離すために造った水路には多くの船が浮かび
バスターミナル近くにある石造りの橋が本土とトロギールを繋いでいました。



橋を渡ると町の入口北門。赤い屋根の聖ロブロ大聖堂が見えます。



北門には町の守護聖人が置かれているはずなのですが見当たりません。
台座はあるんですが・・・修復中かな。
聖ロブロ大聖堂は細い路地を進むとすぐです。

聖ロブロ大聖堂

聖ロブロ大聖堂はイヴァナ・パヴァオ・ドゥルギ広場に面して建っています。すぐ隣には市庁舎、そして広場を挟んで向かい側は時計塔と裁判にも利用された建物。町の中心となる広場に位置する重要な寺院です。

この大聖堂は13世紀に殉教者ロブロに捧げるものとして建築が始まりました。ロブロは258年に焼き網の上で焼かれた殉教者です。

13世紀に建築が始まった大聖堂ですが、完成したのは17世紀。なんと4世紀もの間、建築が続いたこととなります。
このため、大聖堂ではロマネスク様式・ゴシック様式・ルネッサンス様式が混在し、見どころになtっています。

オレンジ色の屋根が印象的な美しい鐘楼は高さ47m。登ることもできます

14世紀に一旦完成したもののベネツィアの攻撃で損傷し、その後、時間をかけて修復されたことから、1階はゴシック様式、2階はヴェネツィアン・ゴシック様式、3階がルネッサンス様式となっています。
異なる様式が、かえって鐘楼にアクセントを与えているようで何とも美しい。

鐘楼も美しいですが、大聖堂最大の見どころは何と言っても入口の美しいロマネスク様式の門でしょう。

この門は13世紀のダルマチア地方出身の巨匠マスター・ラドヴァンによって製作されました。
そのボリューム・彫りの繊細さは目を見張るばかりで実に素晴らしい。

クロアチアのロマネスク美術の傑作とされ、ラドヴァンの門とも呼ばれています。

入口の左右にはライオンに乗るアダム(右)とイブ(左)。ライオンはベネツィアの象徴でしたが関係があるのでしょうか。トロギールがベネツィアの支配下に入ったのは15世紀で門が出来てから2世紀後のことですが・・・。

中央天蓋の上にはイエスの生誕。その上のアーチにはイエスの生涯。

アダムとイブの内側の柱には多くの聖人たち。
その更に内側には農作業や牧畜の姿。文字を知らない農民たちに農作業の時期などを教える意味もあったそうです。
そして、柱を支えるのはイスラムなどの異教の人々。キリスト教の勝利を意味するものだそうです。

美しいラドヴァンの門



アーチ部分にはイエスの生涯。一番高い外側中央に磔刑のシーン。
左側には最後の晩餐らしき場面。内側の一番下は受胎告知の大天使ガブリエル(左)とマリア(右)


ベツレヘムの星の下の聖母マリアと幼子イエス。その下には体を清められる幼子イエス。
右には東方の3博士。左にはイエスの誕生を祝すため駆けつける羊飼い。


 イブ(左側)
 アダム(右側)

少し角度を変えてアダムとイブを撮ってみました。彫りの深さが分かるかと思います。
   

農作業などのレリーフは12星座との説もあります
 
 不思議な動物のレリーフも美しい


素晴らしい門に見とれてしまいますが、きりがないので中に進みます。

大聖堂内部


大聖堂内部は意外とシンプルで清楚な雰囲気。

天井はゴシック様式の特徴である交差ヴォールトと尖塔アーチ。
そして、アーチから巨大な十字架が2つ吊るされています。
奥の十字架にはイエスの絵が描かれ、手前の十字架はどこから見ても十字架に見えるように立体的に造られたものでした。

そして身廊の奥には石造りの主祭壇。右の写真は近づいて撮ったもの、
15世紀に造られたもので4本の柱の上に8角形の天蓋が置かれています。天蓋の左右に置かれている2体の彫像は受胎告知のシーン。
左でひざまづくのが大天使ガブリエル。右が聖母マリア。

主祭壇の手前には聖歌隊席が置かれています。上の写真だと説教壇の影に隠れてしまっていますが、聖歌隊席は左右に置かれていて、元々は金箔で飾られていたのだそうです。

そして、説教壇は13世紀に造られたもの。

様々な時代のものが大聖堂の中で調和して置かれているのが素晴らしいですね。

天井の交差ヴォールトと尖塔アーチ
アーチから2つの十字架が吊るされています
 
 聖歌隊席
かっての金箔がところどころ残っていました



13世紀の説教壇
 8本の柱に支えられています
 美しい柱頭のレリーフ


説教台の裏手に美しい部屋が見えます



聖イヴァン礼拝堂


聖イヴァン礼拝堂はトロギールの守護聖人イヴァン・ウルシーニの石棺を祀る礼拝堂です。イヴァン・ウルシーニは12世紀にトロギールの初代司教となった人物。棺は12使徒に囲まれています。15世紀にイタリアの彫刻家ニコラ・フィレンティナッツによって建設されました。ニコラ・フィレンティナッツはシベニクの聖ヤコブ大聖堂の建設をユライ・ダルマティナッツから引き継いだ人物です。

 12使徒
 天井には何故か逆さまの聖人

大聖堂をラドヴァンの門から出ると奥にも美しいレリーフがあるのに気が付きました。

イエスに洗礼を行う聖ヨハネのようです。


レリーフの下の入口が開いていたので入ってみたら洗礼室のようです。
天使のレリーフが美しい。
   

大聖堂を出ると素敵な広場です。

イヴァン・パヴァオ・ドゥルギ広場

大聖堂が面する広場は舌を噛みそうな名前ですが
市庁舎と時計台が建っていて素晴らしい雰囲気。


市庁舎が修復中なのが残念。この市庁舎はかっての宮殿で13世紀末から14世紀に建てられたもの。中庭にはゴシック様式の階段や井戸が残っているそうです。
趣きのある時計塔は15世紀に建てられたもの。時計塔の下は教会になっています。時計塔に続くのは柱で屋根が支えられたロッジアというアドリア海東岸によく見られる建築様式で集会場や裁判所として使用されました。ロッジアにも15世紀のレリーフが残っています。13世紀からの建物が建ち並ぶ中世が詰まったような素晴らしい雰囲気の広場です。しかも時計塔の時刻は正確。



広場はカフェになっていて一休みに最適
中世の雰囲気に浸れる素晴らしい空間です。

 時計台
 ロッジア。天井が綺麗

ロッジアにあったレリーフ。
現地ガイドさんは裁判が行われたので正義の女神が彫られていると言ってました。



この広場からは大聖堂の眺めも素晴らしい。大聖堂の前に円柱があって、その上に彫像が置かれています。聖人なのかイエスなのか・・・天使もいます。鐘楼の眺めも素晴らしいけれど、大聖堂の前に建つ建物も、バルコニーがなんとも言えず素敵。中世が時を止めているようです。

   

広場の周辺には趣のある中世の建物が実に多いです。

 大聖堂前の建物のバルコニー
 現役のロマネスク様式の住居


細い石畳の路地が何とも言えない風情。
 



ロッジアの横の道を進むと海の門(南門)に出ます。

ロッジアの横の建物も素敵
 
 海の門(南門)

かって日没となると海の門は閉じられ、住民でも中に入れなかったそうです。

ここからの城壁の眺めは見事でした。



トロギールは本土とチオヴォ島の間に位置します。
チオヴォ島の上に月が上りました。




宵闇が増してくる中、町を離れます。




中世の雰囲気にどっぷり浸れました。
ツアーで駆け足の観光だったので要塞にまでは行けなかったけど
それでも満足できる素晴らしい町です。
スプリットに近いのでスプリット拠点にゆっくり訪れたら素晴らしいんじゃないかな。


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参考文献

21世紀世界遺産の旅 小学館
るるぶ クロアチア・スロヴェニア

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。