アビドス

ルクソールから車で1時間半ほどのアドビス
ここは、かってオシリス神信仰の中心地だった場所です。
2004年12月訪問


セティ1世葬祭殿

セティ1世は、あのラメセス2世の父です。この神殿はセティ1世が建築を始め、息子であるラメセス2世が完成させました。現在も屋根がしっかりと残り、保存状態が極めて良い神殿です。



この葬祭殿には、なんと6つの神と神格化されたセティ1世、つまり合計7つの神が祀られていて、7つの至聖所と入口があります。祀られている神は、右からホルス神、イシス女神、オシリス神、アモン・ラー神、ラー・ホルアクティ神、プタハ神、そして神格化したセティ1世。

多くの神々のレリーフが色鮮やかに残っていて、エジプトで最も美しい神殿の一つと言われます。


ハヤブサの頭のホルス神と王
ホルス神はオシリス神とイシス女神の子で、ファラオはホルス神の化身とされました。



壁画のテーマは神々に捧げ物をする王と、王に祝福を与える神々というのが基本。
でもエジプトは多くの神々がいるので見ていて楽しい。


 トキの頭のトト神とハヤブサの頭のホルス神が
王と手をつないでいます。
 こちらはトト神とホルス神が王に
何かを注いでいるようです。
現地ガイドさんに聞いたら、セティ1世葬祭殿は息子のラメセス2世が完成させたので、
神々がラメセス2世に水をかけているのだそうです。
父の葬祭殿なのに、ラメセス2世はやっぱり目立ちたがり屋。


オシリス神とホルス神に供物を捧げる王




神々が王に祝福のアンク(生命の輪)を差し出しています。
   


オシリス神・イシス女神・ホルス神のファミリー



ホルス神に供物を差し出す王




左は女神に愛でられる王でしょうか。女神の髪、衣服のひだ・・・非常に繊細なレリーフです。
右はオシリス神。青い肌はオシリスの特徴です。
   



乳をふくませるイシス女神や祝福を与える姿
   



こちらのホルス神は色も鮮やか。



ハヤブサの姿で描かれるホルス神
   


 山犬の頭のアヌビス神
 ライオンの頭のセメクト女神



破壊の跡が痛々しいものも多いのですが・・・それでも美しい。




ちょっと後ろに下がって撮ってみました。少しぶれてしまいましたが雰囲気は伝わるでしょうか。
二枚の羽根冠はアメン神のシンボル。太陽神ラーと習合し、アメン・ラーとなります。




聖なる船




天井を見上げたら、多くの星々で埋め尽くされていました。




ラー・ホルクアティ(左) 日輪を頭に載せているのが特徴。
プタハ神(右) 創造神です。坊主頭が特徴。
   


この神殿はラメセス2世が父セティ1世のために完成させたものだけに、父子を描いたレリーフも目立ちます。
左下は、ラメセス2世の幼い時の姿で、この髪型は少年に特有のもの。とても彫りが繊細で綺麗。
右下は、「アビドスの王名表」というかなり大きな壁面に描かれたセティ1世と幼いラメセス2世。壁面の右側から左側にかけて、エジプト第一1王朝の初代王からセティ1世までの王の名前が延々と描かれており、一番左側にこの親子のレリーフが描かれています。

   


左下は歴代の王の名前が記された王名表。右下は牛を追うセティ1世とラメセス2世父子。
   



オシレイオン

セティ1世葬祭殿のすぐ隣にあるのが、オシリス神の墓所と言われるオシレイオン。

アビドスは元々オシリス神の墓所があるとして聖地とされた場所。

冥界の王オシリス神の聖地であることから、歴代の王や貴族が死後の復活を祈願して巡礼し祠堂や石碑を奉納するようになったのだとか。

つまりセティ1世葬祭殿が、この地に造られたのも、オシリス信仰によるわけです。

このオシレイオン、セティ1世葬祭殿より、かなり低い位置にあります。
しかも、ご覧のとおり、すっかり水に浸かってしまっている状態で、上から眺めるくらいしかできません。

しかし、巨大な石柱は見事。巨大な石柱が10本残っているのですが、その上に置かれた石も巨大です。

この水は地下水と説明を受けましたが、帰国後に見たテレビでは、元々、オシリス神の石棺の周囲に水が張ってあったのではないかと言っていました。
本によっては「原初の海から創造された聖なる大地を象徴している」とも書いてあります。


上からは水に浸かっていない回廊部分を眺めることもできます。
オシリス神の巨大なレリーフが見事でした。





ラメセス2世葬祭殿

ラメセス2世がオシリス神に捧げた神殿です。


セティ1世葬祭殿が屋根も残って保存状態が極めてよいのに対し、こちらの神殿は屋根がなくなってしまい、崩れているところも多いのが残念。しかし、色鮮やかなレリーフが結構残っています。

   


外壁には、いかにもラメセス2世というか、またもカデシュの戦いが描かれていました。
   


アビドス、特にセティ1世葬祭殿はエジプトを訪れたら絶対行きたい場所です。
素晴らしい雰囲気。なんというか崇高な・・神秘的な・・気高い空気。
そして、美しいレリーフの数々。
エジプトで最も美しい神殿と言われるのは伊達ではありません。


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参考文献

図説古代エジプト2(河出書房新社ふくろうの本)


基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。