ダフニ修道院

アテネ近郊の小さな修道院
地震による損壊が痛々しいものの
素晴らしいモザイクが残っています。
2020年1月訪問

写真は中央聖堂


アテネ近郊にあるダフニ修道院は元々アポロン神殿のあった場所に建てられた修道院。ダフニという名はアポロンの求愛を受け月桂樹に身を変えた河神の娘ダフネに由来しています。最初に修道院が建てられたのは5〜6世紀と考えられていますが、現在残っているのは11世紀に建てられた中央聖堂。この中央聖堂に残る11世紀のモザイクが見事なことから世界遺産に登録されています。地震により損壊し、長らく修復中でしたが近時ようやく見学できるようになりました。



駐車場からは中央聖堂の横に出ます。建物は同時に世界遺産に登録されたオシオス・ルカス修道院と同じように石材の水平・垂直方向を煉瓦で縁取るクロワゾネ積みという工法で建てられています。オシオス・ルカス修道院に比べて石材も均一に組まれていて洗練された印象。聖堂の横の入口の手前は中庭になっていて、かって修道士達が暮らした建物が残っていました。

修道士たちが暮らした部屋の一部は博物館になっています。
アポロン神殿からの出土品が展示されていました。



中央聖堂

聖堂の中に入ると損壊の激しさと、修復されたモザイクの見事さに息を飲みます。


聖堂内の壁を飾っていたであろうモザイクの大部分が落剥し、壁の大部分が下地剥き出しの状態となっていますが、僅かに残された金色に輝くモザイクが実に素晴らしい。
聖堂は十字型をしており、その中央の正方形をした広間の上部に4つのアーチと4つのスクィンチ(4隅の窪み)で8角形を作り、それを足場としてドームを乗せるという複合型スクィンチ式教会と呼ばれる構造をしています。ドームは直径7,5m。

ドームには全能者ハリストス(キリスト)と16人の預言者



中央のキリストが実に素晴らしい。



聖堂の至聖所周辺



至聖所後陣の聖母子像は残念ながら上半身が失われています。
でも幼子イエスの足がかわいい。



聖堂の入り口側


聖堂の入り口上部には損壊が激しいもののマリアの臨終が描かれています。
モザイクの題材から聖堂は生神女(神の子を産んだ)マリアに捧げられたものとされています。


4つのスクィンチにはキリストの生涯が描かれていました。

受胎告知
大天使ガブリエルにより神の子の懐胎を伝えられるマリア



降誕
馬小屋の飼い葉桶で眠るイエス



洗礼
ヨルダン川での聖ヨハネによる洗礼を受けるイエス



キリストの変容
高い山でキリストがモーセ・エリヤと語り合いながら
白く輝く姿を弟子のペドロ・ヨハネ・ヤコブの前で示したとされるシーン



モザイクはスクィンチだけでなく、中央聖堂の左右の入り口付近にも施されています。


かっては聖堂上部は金色のモザイクで埋め尽くされていたんでしょうね。
見事だったろうなあ。


キリストの生涯は左右の横の入り口付近にも描かれていました。

エルサレム入城
エルサレムで自身が処刑されることを予告しながら
ロバに乗ってエルサレム入城を果たし群衆に歓迎されるイエス



磔刑
 
 復活


トマスの不信
イエスの復活を信じず、聖痕に指を入れようとするトマス



目立たない場所にもモザイク
窓のアーチ
 
 聖人たち


聖堂の壁や柱の低いところにはフレスコ画も残っていました。
   


ギリシャ正教の教会では聖堂前にナルテクスという玄関部分(前室)があります。
ここでは修理作業が続けられていました。



ナルテクスにあったモザイク



緑豊かな、静かな小さい修道院でした。
猫も人懐っこい。
   


オシオス・ルカス修道院に比べると小さな修道院だし
モザイクの損壊も痛々しいほどなのですが
個々のモザイクはオシオス・ルカスより素晴らしいかもしれません。


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参考文献

21世紀世界遺産の旅 小学館
生き残った帝国ビザンティン 井上浩一著 講談社学術文庫
ビジュアル図解聖書と名画 中村明子著 西東社

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。