エピダウロス遺跡

医術の神アスクレピオスの聖域エピダウロス
保存状態の良い古代劇場で有名ですが
他にもスタジアムやら音楽堂が残っています。
2017年4月訪問

写真は古代劇場


エピダウロスはペロポネソス半島東部、アテネとはサロニコス湾を挟んで対岸に位置する港町。そこから内陸に入ったところにエピダウロス遺跡はあります。
エピダウロス遺跡は医神アスクレピオスの聖地で古代の医療施設。多くの病人がここを訪れ快癒を願った場所です。もっとも、医療施設といっても古代ギリシャ人は病気というのは肉体と精神のバランスが崩れるのが原因で生じると考えていたことから、重視されていたのは「癒し」というか「リラックス」。劇場だけでなく、浴場やら、スタジアムまであって、まるでレクレーション施設です。

アスクレピオスはアポロンとテッサリアの王女コロニスの間に生まれたとされます。
アポロンはカラスからコロニスが浮気をしていると告げられ、怒ってコロニスを射殺すのですが、その直後に後悔し、コロニスのお腹の中にいたアスクレピオスを助け出します。
アポロンは芸術と予言を司る神ですが医術の神でもあり、その関係なのでしょうか、助け出されたアスクレピオスは医術に優れたケンタウロスの賢者ケイロスに預けられます。

ケイロスから医術を学んだアスクレピオスは優れた医師としてギリシャ世界で名を馳せるようになります。しかし、人を救うことに熱心な余り、アスクレピオスは死者を蘇らせるという人間には許されないことをしてしまいます。
冥界を司る神ハデスは、これに怒り、ゼウスに訴えたため、ゼウスはアスクレピオスを雷光で焼き殺しました。しかし、その偉業から彼は死後、神の列に加えられたのだそうです。アスクレピオスは人間として生まれながら、神に列せられた数少ない一人です。

右の写真はアテネの考古学博物館のアスクレピオス像。エピダウロスから出土したローマ時代のもの。杖に巻きつく蛇は彼のシンボルで、現在でも医療のシンボルとされています。


劇場

エピダウロス遺跡一番の見どころといえば古代劇場


エピダウロスは紀元前6世紀ころからアスクレピオスの聖域として栄え初め
紀元前4世紀から前3世紀に多くの建造物が建てられました。劇場も前4世紀の建設。

見事な観客席
 
 劇場入口付近


エピダウロスの劇場は古代ギリシャの劇場の中で、最も保存状態の良い劇場として知られています。

現在も現役の劇場として利用されていて、毎年6月から8月にはエピダウロス・フェスティバルとして古代ギリシャ劇や世界一流の芸術家による演劇などが上演されます。
2015年には日本の人間国宝・観世流の梅若玄祥氏によるオデッセイアを原作とする新作能が上演されていて、日本のテレビでも特集を組んでいました。私もテレビで観ましたが、素晴らしいロケーションでの素晴らしい芸術で実に感動的でした。

この劇場を建設したのはアルゴスの建築家ポリュクレイトス。丘の斜面を利用して建てられており、収容人数1万2000人。

この劇場は音響効果の素晴らしさで有名。
ステージ中央に丸い石が置かれているのですが、ここにコインを落とすと一番上の観客席から聞こえるとのこと。残念ながら修学旅行生が多くて聞こえませんでしたが、紙を破く音は余裕で聞こえました。
古代の人の建築技術って本当に凄い。


この劇場のステージは、ご覧のとおり円形をしています。



劇場のすぐ近くに考古学博物館があります。

考古学博物館



この考古学博物館、ともかく狭い。遺跡からの出土品を展示していて、神殿を復元したり、結構工夫も感じられるのですが、狭いところに凄いものが無造作においてあって、これでいいのか疑問が生じます。レプリカらしきものもありますが、オリジナルっぽいものもあるし・・・・。

遺跡から出土した品々
無造作に並べられています。
 
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アスクレピオス神殿西面破風を飾っていたもの


こちらは神々でしょうか



治療に使った医療器具も展示されていました。
   


カタゴゲイオン



考古学博物館から、ちょっと北に歩くと、いかにも遺跡といった建物の跡が現れます。

ここはカタゴゲイオンといい、エピダウロスを訪れた巡礼者たちの宿泊所。ホテルみたいなものです。

今は基礎の石組みしか残っていませんが、結構大きい。説明図からすると多くの部屋があったみたいです。
健康というのは今も昔も人々の願い。多くの巡礼者が訪れたのでしょう。

更に歩くと、次々と建物の跡らしきものが現れます。

ギリシャ式浴場




次に現れたのは「浴場」。今も昔も「癒し」といえばお風呂ですよね。
ローマ浴場?って聞いたら、現地ガイドさんに、ローマのはギリシャのパクリと怒られました。

ギリシャの時代から浴場はあったんですね。知らなかった。帰国後調べたら、確かにローマ浴場の起源はギリシャの浴場なんだそうです。これって余り知られてませんよね。それとも私が単に無知なだけ?水道の跡とかも、残っていました。
 

ギリシャ式浴場に向かい合う形で、結構立派な建物の跡があります。

オデオン



こちらはローマ時代のオデオン(音楽堂)。ローマ時代のオデオンというと、普通は「音楽堂でもあり、議事堂でもあった場所」と説明されることが多いですが、なんとここのオデオンは大宴会場が併設されていたそうです。だから、やたら大きいんですね。ここでアスクレピオス祭が行われたのだそうです。
それにしても、お風呂、音楽、大宴会場・・・楽し過ぎる。古代の人が病気を治すために真剣に考えた結果なんでしょうけれど、病気でなくても訪れたくなりそう。今もストレスが万病の元と言われるし、案外昔の人の方が分かっていたのかもしれない。リラックス効果間違いなし。

白い建物が目を引きます。
 
 下水施設らしきものもありました。

オデオンの少し先にはスタジアムもあります。

スタジアム



スタジアムはオデオンのそばから見下ろす形で見学。両側に観客席があって、中央平坦なところがスタジアム。ここでも4年に1度、競技祭が行われていたそうです。古代ギリシャ人って、本当にスポーツが好きですね。


スタジアムの近くから見渡した遺跡


奥の方に修復工事中の建物と列柱が見えますが、その手前は石が転がるのみ。
しかし、このあたりに、かってはアスクレピオス神殿がありました。


トロス



修復工事中の建物は円形の「トロス」でした。
紀元前4世紀に作られた建物で、かっては大変美しかったそうですが、今は修復工事中で、近くに寄ることもできません。

実はこの建物、用途不明の迷路のような地下室があり、結構謎の建物。アスクレピオスの霊廟との説もあれば蛇を飼ってたとの説もあるとか。杖に巻きつく蛇はアスクレピオスのシンボルですが、エピダウロスではたくさんの蛇が飼われていて、やや茶色の蛇はアスクレピオスの御使いとして神聖視されていたそうです。


アバトン



トロスの先にある列柱が美しい建物はアバトンと言い、病気平癒を祈ってエピダウロスを訪れた人々にとって極めて重要な建物でした。この建物は「聖なる仮眠所」であり、ここで眠るとアスクレピオスが夢でお告げをしてくれて、そのお告げに従った治療法が施されたのだそうです。

この建物、地下室もあって、治療のレリーフが写真展示されていました。
   


地下室部分から1階部分を見たところ
木造の天井というか1階の床が見えます。
 
 列柱に木の梁が渡されていました。
こうやって柱は使われたんですね。



アスクレピオス神殿があったと思われる方向を撮ってみました。
かって、神殿には象牙と金で作られたアスクレピオス像が祀られていました。


キリスト教が広まるとギリシャの神殿は衰退していきますが
エピダウロスはキリスト教徒からも「癒しの聖域」として
5世紀ころまであがめられていたそうです。



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参考文献

古代ギリシャ・時空を超えた旅(2016年東博展覧会図録)
ギリシャ神話 呉茂一著 新潮社
ギリシャの神話・神々の時代 カール・ケレーニイ著 中央公論社
ギリシャの神話・英雄の時代 カール・ケレーニイ著 中央公論社
図説ギリシャ・エーゲ海文明の歴史を訪ねて 周藤芳幸著 ふくろうの本
図説ギリシャ神話・神々の世界篇 松島達也著 ふくろうの本
図説ギリシャ神話・英雄たちの世界篇 松島達也・岡部紘三著 ふくろうの本
目で見る世界七不思議の旅 森本哲郎編 文春文庫ビジュアル版
古代ギリシャがんちく図鑑 柴崎みゆき著 バジリコ株式会社

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。