テッサロニキ

ギリシャ第二の都市テッサロニキ
ギリシャ北部に位置する中央マケドニアの首府は
古代マケドニアの旅の拠点でもあります
2018年10月訪問

写真は海際に立つアレクサンダー大王騎馬像


テッサロニキはギリシャ第2の都市。北部テルマイコス湾に面し、商工業の中心都市として古代から栄えて来ました。人口は約120万人。うち12万人が学生という学園都市でもあります。
海に面した公園にはアレクサンダー大王騎馬像と古代マケドニア軍の長槍と盾のモニュメントが置かれていますが、実はテッサロニキはアレクサンダー大王没後に築かれた街。前315年に、カッサンドロスが大王の異母妹テッサロニケと結婚し、妻の名の街を建設したのが始まりです。


前323年にアレクサンダー大王が遠征先のバビロニアで突然亡くなると、妻ロクサネが妊娠中でお腹の中の子が男か女かも分からないこともあって後継者争いが始まります。

その後継者争いの中で、前317年、カッサンドロスは大王の母オリンピアスを殺害し、大王の妻ロクサネと死後誕生した幼いアレクサンダー4世を軟禁します。そして、大王の異母妹テッサロニケと結婚して王位継承権を得たのです。
更に、その後、大王の妻ロクサネと遺児アレクサンダー4世を殺害しただけでなく、大王の遺族を根絶やしにしてマケドニア王となります。

カッサンドロスは大王を非常に恐れると同時に憎んでいたとされ、大王は彼によって毒殺されたのだという説が古来から有力とのこと。
それを考えると、カッサンドロスが造った街に大王像があるのはちょっと違和感がありますが、海際に立つ大王像は格好よくて素敵です。

カッサンドロスの王朝は長くは続きませんでしたが、テッサロニキの街は交通の要衝であることからローマ、ビザンティンと繁栄を続け、ビザンティン時代はコンスタンティノープルに次ぐ都市だったとされています。


ビザンティン帝国が衰退し、オスマンが台頭すると、1423年にテッサロニキはヴェネツィア共和国の支配下に入ります。

現在、テッサロニキのランドマークとなっているホワイトタワーはヴェネツィア時代に要塞の見張り台として建築されたもの。

しかし、ヴェネツィアとオスマンの攻防はオスマンの勝利に終わり、1430年にテッサロニキはオスマントルコの支配下に入ります。

もっとも、オスマン時代もテッサロニキは交通の要衝・交易の中心としての地位を保ち続けました。20世紀にギリシャが独立してからは戦争の惨禍を受けながら、近代都市として復興しています。

左の写真のホワイトタワーは、オスマン支配下で牢獄として用いられ「血塗られた塔・ブラッドタワー」と呼ばれたそうです。
しかし、19世紀に牢獄としての役割を終え、現在のように白く塗られることとなりました。周囲は公園となっていて、市民憩いの場。アレクサンダー大王の騎馬像も、ホワイトタワーのすぐ近くにあります。

このように長い歴史を持つテッサロニキ
ビザンティン時代の優れた建築物が多く世界遺産とされているのですが
今回は古代に絞っての観光となりました。


考古学博物館

考古学博物館では先史時代から展示が始まるのですが、やっぱり見どころはマケドニア時代

マケドニアの街の様子


街はギリシャに似ていますが、マケドニアならではの特徴もあります。

 マケドニア軍の防具
 マケドニア軍の武器

右上の写真の説明図


大王騎馬像の周囲に置かれていた槍も長いものでしたが、この長槍がマケドニア軍の特徴。歩兵は5mの長槍を持ち、左手に盾をかけ、自身の左側と隣の兵士の右側を守りながら密集して進みます。まるでハリネズミのような歩兵部隊と縦横に駆け回る騎兵部隊を組み合わせたマケドニア軍は当時、最強を誇りました。これはアレクサンダー大王の父フィリッポス2世が考案したもので、若いころテーベで人質として暮らしたフィリッポス2世がギリシャの戦いを学び、それを改良したものだそうです。しかも、フィリッポス2世はギリシャのポリスにはなかった常備軍を創設しました。

また、マケドニアといえば黄金です。多くの黄金の出土品は彼らの豊かさを実感させます。

美しい花冠


精巧で美しい王冠の数々




こちらは胸飾り



小さな金色に光る人物たち



金細工の見事さも目を引きます
   


細かい細工はガラスで光って上手く撮れないので絵葉書を買いました。本当に凄い。
   

マケドニアに豊かな富をもたらした金鉱山はアレクサンダー大王の父フィリッポス2世が政治力を駆使して獲得したものです。

マケドニアには大きな金鉱山が2つもありました。この金が常備軍の維持を可能にしたのでしょう。
また、出土品の素晴らしさからも分かるように、当時の金加工の先進地域だったそうです。

しかし、金鉱で働くのは奴隷や戦争で負けた者たち。金鉱での労働は非常に過酷なもので、「金鉱で働く奴隷の暮らしは死ぬより辛い」と言われたそうです。博物館では彼らの働く姿を描いたものも展示されていました。


マケドニア時代の墓の展示も充実していました。

死者を寝かせる寝台


出土した多くの寝台から様式が決まっていたことが分かったため
フィリッポス2世の墓の復元が可能となったそうです。


死者を葬るときは口から魂が逃げて行かないように口を金で覆いました。
お金持ちほど金を贅沢に使ったため、顔全体を覆うマスクとなっているものもあります。
   


絵で飾られた石棺



ローマ皇帝ガレリウスの宮殿のプライベートルームにあった美しいアーチ
   

興味深いことに、テッサロニケと夫であるカッサンドロスの肖像が彫られています。
カッサンドロスの時代のものをローマ皇帝が飾っていたのでしょうか。

テッサロニケ
 
 カッサンドロス

テッサロニケは幼くして生母を失い、大王の母オリンピアスに育てられたそうです。
オリンピアスを殺害したカッサンドロスに無理やり結婚させられましたが大事にされたのだとか。

酔っぱらったサテュロス(前1世紀・ヘレニズム期)



ローマ時代のテッサロニキの大邸宅から見つかったモザイク。
アリアドネとディオニッソスの出会い



眠るアリアドネ



ローマ時代の彫刻
 初代皇帝となったオクタヴィアヌス
 なんとも美しいアフロディテ


時代の流れに沿って紹介しましたが、実際はマケドニアの金製品は順路で言うと終わりの方にあります。

そして、最後に展示されているのが
現地ガイドさんが凄い気合入れて説明してくれた「世界遺産登録申請中」の2品

 銅製のクラテール(ワインと水を混ぜる壺)
上にヘラクレス、
下にディオニュソスとアリアドネの結婚
 オルフェウスのパピルス
非常に古いパピルスで歴史的意義があるとのこと
ただ、見た目は真っ黒


テッサロニキの街中にも古代は残っています。

ローマン・アゴラ

街中に突然現れるローマン・アゴラ
   

長い歴史を持つテッサロニキの地下には古代の街並みが眠っています。

ローマン・アゴラは1917年にテッサロニキで起きた大火事の後、発見・発掘されたもの。発掘は大規模に行われ、もっと海側からの場所からは裁判所も見つかったそうです。

しかし、都市計画の関係で見つかった遺跡の多くは埋め戻され、一部のみが残される形となりました。遺跡を全部残していたら、別の場所に新しい街を造らないといけなくなってしまうからでしょう。

残されているローマン・アゴラはローマ時代の街の中心。長方形の広場の周囲を二重の列柱廊が取り囲んでいます。回廊部分には屋根がかかっていました。現在残されているのは本来のアゴラの4分の1ということですから、かっての街の繁栄ぶりが偲ばれます。

回廊の東側にはオデオンが残っています。オデオンは音楽堂でもあり議事堂でもあった場所。
このオデオンには2000人から2500人が収容可能だったそうです。
オデオンの近くには造幣局や貯水池もあったということでした。


ガレリウスの凱旋門



ガレリウスは広大になり過ぎたローマ帝国の四分統治が開始された3世紀末に東方副帝とされ、ササン朝ペルシャを破ってチグリス川の東方にまで帝国の領土を広げた人物。305年には皇帝となりました。この凱旋門は皇帝となる前の303年にササン朝ペルシャへの勝利を記念して建てられたもの。元々は3つのアーチからなる建物で、煉瓦の上にレリーフの彫られた大理石が貼り付けられています。この門はかってのエグナティア街道に建てられています。

ササン朝との戦いの様子が、びっしりと彫られています。
   

この皇帝、軍事では偉業をなしとげましたが、キリスト教徒弾圧で後世の評判は良くないみたいです。

凱旋門のすぐ近くに変わった建物があります。

ロトンダ



凱旋門から見えるロトンダは丸い形で煉瓦造りという特徴ある建物です。元々はガレリウス帝の霊廟として306年に建てられたものですが、皇帝が別の場所に葬られたため400年ころにキリスト教会とされます。更に、オスマン支配下ではモスクとされ、ミナレットも造られました。ビザンティン時代のモザイクやフレスコ画がとても見事ということで世界遺産に登録されています。

ビザンティン時代の教会も見てみたかったですが
今回は古代を巡る旅なので次の機会を待つことにしました。
午前中テッサロニキを見て、午後にペラとヴェルギナを見学しています。


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参考文献

古代ギリシャ・時空を超えた旅(2016年東博展覧会図録)
図説ギリシャ・エーゲ海文明の歴史を訪ねて 周藤芳幸著 ふくろうの本
図説アレクサンドロス大王 森谷公俊著 ふくろうの本
古代ギリシャがんちく図鑑 柴崎みゆき著 バジリコ株式会社

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。