バナーラス

インドと言えば、この街を思い浮かべる人が多いはず。
バナーラスはインドを代表する街
紀元前10世紀に遡るヒンドゥーの聖地
2005年12月、2012年12月訪問

写真は夜明けのガンガーとガート


かって英語名でベナレスと呼ばれたバナーラス。一般的にはバラナシと呼ばれることも多いこの街の正式名はヴァーラーナスィー。インドで最も聖なる河ガンガー(ガンジス河)の2つの支流ヴァルナー河とアッシー河に挟まれていることに由来する名です。この地は古来から神聖な場所・崇高な巡礼地として栄え、街の建設は前10世紀ころと言われています。
ガンガーはインドで最も聖なる河。ガンガーは天国から流れ出て人々の世俗的な罪を洗い流すと信じられています。人々はこの地で沐浴をすることで罪が流され、この地で死んで遺灰をガンガーに流されれば天国に行けると信じ、この地を訪れることを願うのです。


ガンガー

バラーナスを訪れたなら、なんといってもガンガーを見たいものです。
実は2005年に訪れた時は霧が深く、こんな光景でした。


これも幻想的ではあったんですが、やはりちゃんと見たい。


ガンガーの観光は早朝が良いとされています。
朝のうちに沐浴に来る人が多いことや、ガンガーから見る日の出が見事なのが、その理由。

私達も早起きしてガンガーに向います。
街には巡礼者や観光客目当ての露店が数多く出ていました。お花やガンガーの水を入れる壺などを売っています。

バナーラスではガンガーの岸辺は石で階段状に整備され、多くの寺院・離宮などが並びます。

歴代の王達にとって聖なる河ガンガー沿いに離宮を建てることは夢だったわけです。これをガートと言い、全部で84ものガートがあるそうです。

観光はどこかのガートからボートに乗って、河沿いのガートを見るというのが一般的。

河の上は寒いということで、途中で暖かいチャイを飲んでからガートへ。

冬のインドは霧が出ることが多く、2005年に訪れた時は上の写真のような状態だったし、2012年も霧でデリーからの飛行機が随分遅れたのですが、幸い、この日は霧の心配はなさそうです。


ダシャーシュワメード・ガートからボートに乗ります。
ダシャーシュワメード・ガートは岸辺のほぼ中央に位置するガート。
最も多くの巡礼者が訪れると言われ、この日も既に巡礼者の姿が見られました。

   


乗船してガンガーへ。河辺に建ち並ぶ建物
ガンガーは南から北に流れ、ガートは日の出が見える位置・西側に造られています。




ボートに乗る前に花で飾られたろうそく・灯篭を買いました。
死者の供養のためにガンガーに流すのだそうです。
川面に浮かぶ灯りが幻想的

   


次々と現れるガート。
河に面して階段が造られているのが分かるでしょうか。
雨季には水位が上がり、階段が全て水の下になることもあるそうです。




12月は寒いので沐浴の人たちも少ないそうですが、それでもちらほら目に付きます。
左下の泳いでるおじさんは、ボートのそばまで泳いできました。

   

それにしても、この河で泳げるのは凄い。
ヒンドゥーでは、どこの家にもガンガーの水があり、
子供が生まれた時と人が亡くなる時に飲ませるのだそうです。


途切れることなく続くガート
これらの建物はムガール帝国が衰退化した18世紀以降に建てられたもの。




途中でボートは反転し、マニカルニカー・ガート(耳飾りのガート)を目指します。
火葬場のガートです。




マニカルニカー・ガートに近づきました。
死者を焼く火が見えます。
このあたりで撮影禁止



耳飾りのガートとは変わった名前ですが、これはシヴァ神が耳飾りを落とした場所と言われているから。

他の場所では火葬は日の出から日の入りまでの間しかできませんが、ここは神がいるので何時でも火葬できる特別の場所なのだそうです。

現地ガイドさんも、お父さんをガンガーで火葬したとのことで説明してくれました。

遺体をまずガンガーで沐浴させてから火葬し、その後、バラモンがお経を唱えて、遺灰をガンガーに流すのだそうです。縁者は髪を剃り13日間喪に服し、13日目に再びバラモンにお経をあげてもらう・・とのことでした。

火葬場の近くには薪が積まれていましたが、火葬には薪が300キロ必要で、ガイドさんのお父さんのときは5000ルピーだったとのこと。

この火葬のためのお金を持って死を待つ家も、この周辺にはあるそうです。

また、最近では、お金がない人のための電気火葬場もあるのだとか・・・。



黄金寺院

マニカルニカー・ガートから歩いて行けるところにヒンドゥー教最大の聖地ヴィシュワナート寺院があります。シヴァ神を祀る寺院で、ヴィシュワナートとは「宇宙の主」という意味。800キロの金が使われていることから黄金寺院とも呼ばれています。
しかし、残念ながらセキュリティーチェックが厳しく写真撮影は厳禁。ヒンドゥー教徒以外は中にも入れません。この寺院は13世紀のイスラム侵攻以降、何回も破壊され、18世紀にヒンドゥーの王がモスクを壊して現在の寺院を建てたという宗教対立の歴史を持つ寺院。2005年は過激派を警戒して武装した警官だか軍人がたくさんいたほどの場所なのです(隣のモスクをヒンドゥー過激派が狙っているとの説明でした)。
中を見学できず、写真も撮れないのも残念ですが、寺院に向かう途中の街並みが素敵。細い路地が延々と続き、ところどころに古い寺院跡なのか見事な建造物を見ることができます。

   



ドゥルガー寺院

旧市街南側にあるドゥルガー寺院
ドゥルガーとは戦いの女神の姿となったシヴァ神の妻です。
ドゥルガー寺院も異教徒は中に入れません。

写真は入口と、門前で献花を売る店
   


この寺院、外壁が回廊のようになっていて、異教徒も外壁の上に登ることができます。
寺院のすぐ隣が沐浴場になっているようです。






バナーラス・ヒンドゥー大学美術館


バナーラス・ヒンドゥー大学はドゥルガー寺院より更に南にある広大な敷地を持つ大学です。

広々として緑が豊か、ガートの付近とは別世界。大学の中には学生寮もあればヒンドゥー寺院もあり、更には飛行場まであるとのこと。
広い構内を車で走り、美術館を見学しました。

小さな美術館ですが、興味深い展示品が多いです。

ミニアチュール・細密画の展示は充実していました。特に気になったのが右のミニアチュール。実際はペンダントヘッドにでも入れていたのかと思わせる小ささ。
あのタージ・マハルに葬られたムムターズです。シャー・ジャハーンに溺愛されたムムターズは、ご覧のとおり、可愛い系の美人でした。

隣にシャー・ジャハーンのミニアチュールもありましたが、彼は痩せ形の王様でした。


彫刻も優れたものが多かったですが
かわいい踊るガネーシャと美しい仏像を紹介
   




プージャー

ガンガーのほとりで行われるプージャー



プージャーとは礼拝という意味。

毎日、日没時にガンガーのほとり、ダシャーシュワメード・ガート(わたしたちがボートに乗ったガート)で行われている儀式です。

ヒンドゥーの人たちがガンガーで火葬をしたり、遺灰を流していることから、私は最初、死者に対する儀式かと思ったのですが、そうではなく、ガンガー自体に対する儀式とのこと。

ガンガーが明日も穏やかでありますように・・と、ガンガーに祈りを捧げる儀式なのだそうです。

この儀式、なかなか美しい。観光客用にショー化しているんでしょうけれど・・・・

ドラや太鼓が響く中、バラモン僧達が火に供物をくべます。花を散らす散華、立ち昇るお香の煙。華やかで厳かな儀式です。

意外なことに、密教とつながる要素も多いとのこと。仏教が密教化する過程でのヒンドゥーの影響は良く言われることですが、このような儀式で目にすると非常に興味深い。
日本では仏壇に、お線香、水、お花、ロウソクを供え、リンの音を響かせますが、その要素も全て、この儀式には入っています。


ロウソクの灯りとお香の煙が印象的





バナーラスはやっぱりインドを代表する場所。
ガートをやっと見ることができました。



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参考文献

インド政府観光局・バラナシ
地球の歩き方インド(ダイヤモンド社)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。