ミーナークシ寺院

南インドのマドゥライにあるミーナークシ寺院
古来からのドラヴィタの女神ミーナークシがシヴァの妻として祀られています。
塔門を埋め尽くす神々の像と信者の熱気は圧巻。
2010年8月訪問

写真は東の塔門


マドゥライ市のシンボルとも言えるミーナークシ寺院はミーナークシ女神とシヴァ神を祀る「生きている寺院」です。現在の建物は15世紀から17世紀にかけて建てられたもので12もの塔門を持つインドでも有数の規模を誇る巨大な寺院です。。
市内の至る所から見ることができる塔門のうち、最も高いものは60m、それ以外も45〜50mの高さがあります。ピンクや青、黄色・・カラフルに彩られた多くの神々が彫られた巨大な塔門は圧巻。いったい何体の神が彫られているのでしょう・・・。ここには毎日1万人もの巡礼者が訪れると言われ、遺跡で見慣れたヒンズー寺院とは違う「生きている寺院」の姿を見ることができます。

南インドのマドゥライは古代・中世のドラヴィダ文化の一大中心地だった古都です。

ミーナークシ寺院も元々は「魚の眼を持つ女神」と言われるドラヴィダ系の土着神ミーナークシ女神を祀るものだったと考えられています。

「魚の眼を持つ女神」というのは変わった名前ですが、魚が寝るときでも目をつぶらないように、常に目を開けて世界を見守る女神という意味だったようです。

その後、北方のヒンズーイズムの影響で、ミーナークシ女神はシヴァ神と結婚することとなり、シヴァ神の妃であるパールヴァティと同一視されるようになります。

ミーナークシ寺院には、ミーナークシ女神を祀るミーナークシ神殿とシヴァ神を祀るスンダレーシュワラ神殿を中心に多くの神が祀られていて、毎晩、クロージングセレモニーではシヴァ神をパールヴァティの部屋に運ぶという儀式も行われています。

写真は東の塔門で4時の開門を待つ人々。
寺院は東西南北に塔門があり、東が正門となっています。


しばらく列に並んで、いよいよ寺院内に。
入ってびっくり。何とも言えないど派手な天井。
見事な歴史的建造物といっていい場所にお店が並んでいます。
門前町みたいな感じなんでしょうか。




千柱堂

東の塔門から入って真っ直ぐ進むと右手に千柱堂があります。
ここも「ど派手」と言うか、蛍光色で彩られています。



千柱堂は実際に千本近い柱からなる堂で(実際は985本らしい)、かっては寺院として使用されていたものの、今は博物館になっています。入り口にはシヴァ・ファミリーの像が並び、入口右手の柱は7つの音色がすると言われる柱があり、叩いて実演してもらえます。

左下は7つの音色がする柱。
下中央はパールヴァティ。シヴァの妻。
右下はスカンダ。南インドで信仰されるシヴァの息子で孔雀に乗っています。
     


先に進むと名前のとおり千本柱が並ぶ空間に出ます。
柱に彫られている動物はヤーリー。
ライオン・象・ワニ・牛・鷲という5つの動物が合体した想像上の動物です。




柱には多くの神々が彫られています。
左はパールヴァティ。ライトアップされていました。
右は顔が男、体が女の奇妙な像。アルジュナの変身した姿ということでした。
アルジュナが街の人たちが自分をどう思っているかを女性に姿を変えて聞いたのだそうです。

   


一番奥にはダンシング・シヴァの像が祀られていました。





千柱堂を出て、真っ直ぐ歩くと象がいました。
祝福を与えてくれる象です。
インドの寺院でよく見る光景ですが、庭ではなく建物中にいるというのは珍しい。
ミーナークシ寺院の巨大さがわかると思います。
天井が実に高い。





スンダレーシュワラ神殿

スンダレーシュワラとは「美しいシヴァ」という意味。スンダレーシュワラ神殿はミーナークシ女神と結婚をしたシヴァを祀る神殿ですが、異教徒は手前のナンディを祀ったホールまでしか入れません。しかし、本殿手前のこのホールで、既に物凄い熱気です。カラフルな寺院を多くの人々が行き交い、祈りを捧げています。博物館だった千柱堂と異なり、信仰の場であるここは実に人が多い。

何とも華々しく、エネルギーにあふれた寺院です。
カラフルな天井に、多くのレリーフ。




ナンディ。シヴァ神の乗り物である聖牛です。




ヒンズー寺院というのは、本来、こんなに熱気のあるものなんですね。
高い天井のホールに多くの人々・・・凄いなあ。

   


寺院を飾るレリーフの数々。

     


祈りを捧げる女性たちと、捧げ物を売る女性たち。
人波が途切れた時に撮ったもの。

   


他にも、ここかしこに神々が・・・。
左下は安産祈願の像。スカートの下には子供が生まれているのだそうです。
下中央はガネーシャ。象の頭のシヴァの息子です。
右下は天井。ふと見上げると天井にも神々の絵がびっしりと描かれていました・・・。

     



ミーナークシ神殿も異教徒は入れません。
次の見どころ、黄金の蓮のタンクに移動します。


黄金の蓮のタンク



黄金の蓮のタンクはミーナークシ寺院の南側、ミーナークシ神殿の手前にあります。周囲を赤と白で彩られた回廊で囲まれた沐浴場で、名前のとおり、沐浴場の中央には黄金でできた蓮が置かれています。
この周りを巡ると、南塔門を初めとする幾つもの塔門や、入ることができなかったスンダレーシュワラ神殿とミーナークシ神殿の黄金の頭頂部を見ることができます。神殿に入れない異教徒の観光客としては、外せないポイントです。


左に見える高い塔門は西の塔門。
右の塔門の陰にちらりとスンダレーシュワラ神殿の黄金の頭頂部が見えます。
どの塔門も、びっしりと神々の像や神話のシーンが彫り込まれています。



左下の写真は南の塔門。高さ60m。ミーナークシ寺院で最も素晴らしい塔門といわれています。
右下の写真の塔門の下に見えるのはスンダレーシュワラ神殿の黄金の頭頂部。
   



ミーナークシ神殿の模型がありました。東の塔門側から見たところです。
かなり歩いた気がしますが、巨大な寺院のごく一部を見学しただけのようです。






寺院前の商店

ミーナークシ寺院の東門の前に商店があったのですが
よく見ると入口にはランガナータスワーミ寺院の千本の柱のホールで見たような彫刻が・・。




中に入ってびっくり、巨大な神像が並ぶ下で店を開いています。
ここも、かってはミーナークシ寺院に付属する神殿だったのではないでしょうか・・・。
彫刻も立派な、文化財といえる神殿のように見えますが、どうなっているのやら。
贅沢な商店というか、なんというか・・・。

   


南インドには「生きている寺院」が多いのですが
ミーナークシ寺院は、その中でも代表的な寺院だと思います。
ともかくエネルギーに満ちていて圧倒されます。


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参考文献

インド神話入門(とんぼの本 新潮社)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。