タオルミーナ

シチリア北東部に位置するタオルミーナ
青いイオニア海とエトナ山の稜線が美しい
世界的保養地なのも納得
2017年8月訪問

写真は市民公園からの眺め。


標高400mのタウロ山の山腹の街タオルミーナ。紀元前4世紀ころにギリシャ植民市として築かれたのが街の始まり。当時の名は「タウロメニオン」。ギリシャ語では牡牛はタウロス、古代ギリシャ人はタウロ山の2つの頂を牡牛の角に見立て、その頂にアクロポリスを築きました。
ギリシャ植民地後、ローマ帝国の支配下に入り、その後のビザンティン帝国時代にはイスラム勢力に対抗するための拠点となったそうです。

市民公園から見たタウロ山。
左手の頂には岩の聖母教会、右手にはアクロポリス跡に建てられた中世の城塞


山の中腹に広がるタオルミーナの街は西のカターニア門から東のメッシーナ門をつなぐウンベルト通りを中心に栄えています。下の写真はタウロ山上の岩の聖母教会から見下ろしたタオルミーナの街中心部。
写真の右側に三角屋根の建物と広場が写っていますが、この広場が4月9日広場。ウンベルト通りの、ほぼ中ほどに位置する広場です。4月9日広場に隣接して写真右端付近に写っている四角い建物は時計塔のあるメッゾ門。写真の左上部の緑が広がる方向の写真が切れた先あたりにギリシャ劇場。写真中央やや左寄りのウンベルト通りから少し外れた緑豊かな場所が市民公園。



ギリシャ劇場
 
 4月9日広場

ウンベルト通り沿いに街を散策。カターニア門から入りました。

カターニア門



タオルミーナの南の街カターニアに通じているからカターニア門。
門の外側も観光客で賑わってます。

カターニア門から少し進むと噴水のある小さな広場に出ます。

サン・ニコロ大聖堂と噴水



上の写真、噴水の裏手にあるのが大聖堂。

大聖堂というには小さな可愛い建物ですが、13世紀創建の由緒ある教会。15〜16世紀と18世紀に改修しているそうです。教会なのに屋根部分に銃眼があるのが特徴でしょうか。どうやら、かっては要塞も兼ねていたようです。

また、見逃せないのが噴水に飾られている女ケンタウロス像。ケンタウロスと言えばギリシャ神話でおなじみの上半身が人間、下半身が馬の神話上の生き物ですが、この像は女性で、しかも妊娠中でお腹が大きくなっています。

普通ケンタウロスと言えば男性の姿ですよね。女のケンタウロス初めて見ました。

女ケンタウロスのことを「ケンタウロッサ」というそうで、このケンタウロッサはタオルミーナの街のシンボル的存在。
彼女は右手に地球を、左手に王杖を持っています。

この噴水、一画が水飲み場になっていて、結構、多くの人で賑わっていました。ペットボトルに水入れる人が多いみたい。


せっかくなので大聖堂の中も案内してもらいました。
ピンク色の綺麗な円柱はかってギリシャ劇場の最上部を飾っていたもの。


主祭壇。手前に置かれているのは
カルタジローネ焼の最後の晩餐
 
 イコンを飾る銀の装飾
イコンは修理中

アントネッロ・ダメッシーナ作の祭壇画(16世紀)
上段中央ピエタ。その左が聖ルチア、右が聖アガタ
下段中央聖母子。左が聖セバスティアヌス、右が聖ヒエロニムス。
 
 


大聖堂をウンベルト通りを挟んで反対側が市庁舎
かってのユダヤ人街の名残で壁にダビデの星
 
 街のシンボル女ケンタウロス像


ウンベルト通りを進むと四角い塔が見えて来ます。時計塔のあるメッゾ門です。

   

メッゾ門を抜けると4月9日広場

4月9日広場



タウロ山を背にした美しいサン・ジュゼッペ教会と、その前に広がる4月9日広場。4月9日広場の名前の由来は、1860年4月9日、大聖堂でのミサの最中に、赤シャツ隊を率いたガリバルディがスペイン支配からシチリアを解放するために上陸するという噂が広がり、市民が熱狂した、ということにあるそうです。実際にガリバルディがシチリアをスペインから解放したのは5月のことでしたが、歓喜を忘れないために4月9日広場と名付けたのだとか。現在の4月9日広場はカフェやバールも多く観光客で大賑わい。テラスのように張り出した展望台からの眺めも素晴らしい。

青いイオニア海



遠くにエトナ山


ウンベルト通りを更に進みます。

サンタ・カタリーナ教会とコルヴァヤ館



上の写真、左の黄色い建物がサンタ・カタリーナ教会、そして小道を挟んだ灰色の建物がコルヴァヤ館。

サンタ・カタリーナ教会の裏手にはローマ時代のオデオンが残っているのですが、まずは、コルヴァヤ館を見学。

コルヴァヤ館はアラブ時代とノルマン時代の部分が残るスペイン時代の建物・・・つまり、3つの時代の特徴が残っている建物で、かってはスペイン貴族の館でした。15世紀の建物ということでしたが、もっと古い建物が何回も改修されたんでしょうか。現在はタオルミーナの観光案内所となっています。

右の写真は入口を入ったところ。
まず、中庭があるのはスペイン風。
写真正面の建物の上にじぐざぐの飾りのようなものがありますが、これはアラブ時代の特徴。
そして、窓に見られる2連アーチがノルマン時代の特徴。

コルヴァヤ館の中にはムッソリーニの豪華な花馬車やシチリアの操り人形が展示されていました。もちろん、観光地図ももらえます。

シチリアの操り人形プーピ。演目は騎士道物語が中心。かなり大きな人形たち。

王と王妃?姫?アンジェリカ??
 
 色男なのはノルマンの騎士らしい

コルヴァヤ館を見た後は、サンタ・カタリーナ教会の横の道を通ってオデオンに。

オデオン

ローマ時代の音楽堂で議会場でもあるオデオン。ギリシャ時代には神殿があったそうです。



メッシーナ門

コルヴァヤ館からメッシーナ門までは、とても近い。メッシーナ門はタオルミーナの街の北に位置するメッシーナの街に通じているのが名前の由来。カターニア門同様、名前の由来はシンプルです。

ただ、カターニア門が結構しっかりした造りだったのに対し、メッシーナ門はほとんどアーチが残るだけ。言われて初めて、え、これがメッシーナ門?という感じ。左の写真の中央の道上にあるのがそれです。

カターニア門からメッシーナ門までは約800m。
急いで歩けば10分ほどなんでしょうけれど、色んなお店を覗いたり、横道に入ったりするのが楽しい。横道に風情のあるところが多いです。

メッシーナ門を右に進むとマッツァーロ海岸へのロープ―ウェイ乗り場に出ます。

メッシーナ門の手前、コルヴァヤ館の前の道を右に進むとギリシャ劇場。

ギリシャ劇場に通じるギリシャ劇場通りにも色々なお店が並んでいてかなりの賑わいです。


ギリシャ劇場




ギリシャ劇場の入口を入ると、上の写真のような煉瓦造りの建物が見えて来ます。これはローマ時代に建てられたもの。
ギリシャ劇場はギリシャ植民地時代の紀元前3世紀に建てられたもので、元々は舞台の後ろの美しい景色も眺められるものでした。しかし、ローマ帝国支配下の後2世紀に舞台の後ろに煉瓦造りの壁が設けられ、闘技場に改築されました。

右は遺跡にあった説明図。現在の劇場は半円状の観客席となっていますが、ギリシャ時代の観客席は扇形をしていたそうです。ローマ時代に壁を造ったのは音響効果を考えたからとのことですけど、ギリシャ劇場も音響効果はいいはずなんですが・・・。観客席の形を変えたことが影響してるのかも。

舞台付近。円柱が印象的


ギリシャ劇場は現在も現役で使われています。
舞台から見た観客席


現在のギリシャ劇場は観客席に木製の座席が用意されていて本来の座席が見えないのが、ちょっと残念ですが、見晴らしの良さに感動です。

夏に訪れたので雪をかぶったエトナ山を見ることはできませんでしたが、噴煙らしき雲、なだらかな稜線、そして青いイオニア海。

かってギリシャ劇場を訪れたゲーテは「この劇場から見るパノラマは世界一の美しさだ」とイタリア紀行に記したそうです。

古代ギリシャ人は自然の斜面を利用して劇場を建設しました。彼らはタウロ山の景色の良い斜面を削って、この劇場を造ったのです。

劇場は直径115m。5000人を収容するシチリア第2の広さです(1位はシチリアの劇場)。

舞台に近いほど身分が高い人が利用したそうです。上の観客席は見晴らしはいいですが奴隷とかの席なんですって。ローマ時代には一番上の席と同じ高さの壁があったそうです。そのころは美しい景色は全く見えなかったと思うのですけど、ローマ人には美しい景色は、余り意味がなかったんでしょうか・・・。

観客席上部からの眺め。エトナ山とイオニア海の両方が写真に収まります。
エトナ山が霞んでるのがちょっと残念。


少し移動。イオニア海の青がまぶしい。


思っていたよりは小さい劇場でしたが、やはりタオルミーナ観光のハイライト


タオルミーナのメインロードであるウンベルト通りを中心に紹介しましたが
メインロードから外れた場所にも見どころはいっぱい。


市民公園

泊まったホテルは市民公園のすぐ近くでした。
実際には、ここから観光をスタートしています。


市民公園は元々はイギリス人女性フローレンス・トレヴェリアンの野鳥観察やお茶会等をするための私的庭園。地中海と南国の植物を植えた植物園でした。彼女が相続人なくして亡くなったので市民公園となったそうです。公園には第二次世界大戦の魚雷のコピーも置かれています。静かな散策や、冒頭に載せた写真のように見事なエトナ山とイオニア海の眺めを楽しむ場所。


イゾラ・ベッラ



ベルべデーレ展望台から見たイゾラ・ベッラとサンタンドレア岬。イゾラ・ベッラは島ですが潮が引くと細い砂浜が現れ島とつながります。映画「グラン・ブルー」のロケ地としても有名。


岩の聖母教会

タウロ山頂上にある小さな教会。タオルミーナの街の見晴らしが素晴らしい。
岩山を掘った教会で6世紀に古いフレスコ画も残っています。

 祭壇
 6世紀の聖母子のフレスコ画



カステルモーラ

タオルミーナの街から約5q離れた隣村のカステルモーラも訪れました。カステルモーラの村は標高529m。タオルミーナからタウロ山頂を経て、細い道をくねくね進むと小高い山の上に集落が見えました。カステルモーラの村です。カステルモーラは「最も美しい村」ということなのですが、良く聞いたら、イタリアの最も美しい村100選に選ばれた村ということで、どうやらイタリアの村おこしみたいなことらしい。ただ、美しい眺望は魅力だし、アーモンドワインの試飲はおススメ。

カステルモーラの村は山の上にあります。
人口500人
 
 見晴らしがいいんですが
写真にすると海が光っちゃいますね・・・


確かに美しい村ではあります。
   


でも、一番感動したのはエトナ山かな。村から見たエトナ山。煙が出ています。
村が高い場所にあるので遮るものがなく、絶景です。


村ではエトナ山の溶岩で出来たお土産が売っていました。



マッツァーロ海岸

メッシーナ門から北東の方向にあるマッツァーロ海岸にも足を伸ばしました。

 ロープーウエィで降りていきます。
ロープーウエィは4台連なる形
 海岸に出ると凄い賑わってました。
海水浴客が凄い数


ここからボートに乗りました。

タオルミーナの青の洞窟
 
 映画グラン・ブルーの舞台となったホテル


海から見たイゾラ・ベッラ。人々が島との間を歩いて渡っています。



写真で見ると穏やかな海ですが、ボートが遊覧ボートというより波乗りボートで
波をかぶって服はびしょ濡れ。えらい目に遭いました。



写真を整理すると、結構、タオルミーナの観光濃かったなあと思いますが
実感としてはホテルでまったりしてたのが一番の思い出
ホテルの部屋のベランダからエトナ山もイオニア海も眺め放題でした。



ホテルの朝食会場からもエトナ山が見えたし



部屋のベランダから見たエトナ山に沈む月は忘れられません。



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参考文献

芸術と歴史の島シチリア(日本語版) BONECHI シチリアで購入
シチリアへ行きたい 小森谷慶子・小森谷賢二著 とんぼの本 新潮社

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。