タムガリとチャリン・キャニオン

青銅器時代の岩絵が残る世界遺産タムガリ
カザフスタンのグランドキャニオンと呼ばれるチャリン・キャニオン
どちらもアルマトイから日帰りで訪れることができます。
2016年GW訪問

写真はタムガリの岩絵


カザフスタンの旧首都であり、今でも南の首都と呼ばれるアルマトイから、北西に約180qのところに青銅器時代の岩絵が残っている世界遺産タムガリがあります。また、アルマトイから東へ約190q行くと、そこにはカザフスタンのグランドキャニオンと呼ばれるチャリン・キャニオン。
アルマトイを拠点にチャリン・キャニオン、タムガリの順に訪れました。訪れた順に紹介します。


チャリン・キャニオンへの道

アルマトイからチャリン・キャニオンに向かう道


成田を午後2時近くの飛行機で出発し、仁川空港乗り継ぎでカザフスタンのアルマトイに。アルマトイに着いたのは夜遅く、雨が降っていました。翌日も朝は雨が残っていましたが、チャリン・キャニオンを目指して東に向かう途中で雨が上がってくれました。水たまりができています。

昼食をとった村は新疆ウイグルから移ってきた人々の村。料理が美味しいことで有名。

シャシリク(肉の串焼き)
 
 大きなナン

なんとも新疆ウイグルと似た景色ですが、看板の文字はロシア語。
ここは旧ソ連圏なのです。国境を超えると文字も変わる・・という当たり前のことに驚きます。


舗装された道を外れて途中から、かなりの悪路
しばらく走って、ようやくチャリン・キャニオン入口


チャリン・キャニオン

入口から少し歩くと谷のようなものが見えて来ました。
遠くに見える雪を抱いた山は天山山脈



近くまで寄って下を覗くと、おお凄い。チャリン・キャニオンです。



延々と峡谷が続いているのが分かります。


チャリン・キャニオンは天山山脈からの雪解け水が流れるチャリン川が造った渓谷です。砂岩がチャリン川の浸食により削られ、ミニ・グランドキャニオンといった風景が60qに渡って続きます。

グランドキャニオンの規模には遠く及びませんが、天山山脈が見えるところが売りでしょうか。

 


渓谷の奇岩も見どころ。現地ガイドさん曰く、写真中央は恋人の岩
恋人が抱き合っているように見えるでしょう、っていうけど、う〜〜ん。


景色は面白かったけど、正直、風が凄かった。
アマルトイに戻って、明日はタムガリ。



タムガリへの道

タムガリに行く日は朝から良い天気でした。
アルマトイの街を出てしばらく行くと草原が広がり、
牛が放牧され、馬に乗った遊牧民の姿が・・・


逆光になってしまいましたが、これぞステップという感じ。
野草が綺麗だね、と言っていたら
草原は、どんどんと赤い絨毯のように・・・

赤いケシの花が群生しているのです。


現地ガイドさんによると、このケシの花は全て野生のもの。毎年、2週間くらいの間だけ見ることができる景色だそうです。その年の天候で微妙に開花時期が違うそうですが、ラッキーなことに、ちょうど花が咲き始めた時期にあたることができました。雨があがって一斉に咲きだしたようです。

余りに綺麗なので、車を降りて、しばらく散策

赤いケシの花だけでなく様々な花々
 
 青い花は牛の好物とのこと


お花ばかり見ているわけにはいかないので、名残惜しいですがタムガリへ。
車窓から見た赤い絨毯。まるで燃えているようです。


タムガリまで赤い絨毯が続いていました。


タムガリ

アルマトイを朝の7時半に出て、タムガリに着いたのは11時ちょっと前。お花見しなければ3時間しない距離かも。

入口に右のような世界遺産の看板と地図がありました。地図が示すように、かって、ここにはタムガリ川という川が流れており、その両岸に住んでいたサカ族が多くの岩絵を残したのです。

岩絵のある範囲は3500haという非常に広い範囲に及んでいて遺跡公園となっています。

岩絵は全部で5000に及び、全部見るには数日キャンプする必要があるということでした。
我々が見たのは入口付近のものだけですが、それでも結構見ごたえがあります。

最も古い岩絵が描かれたのは紀元前14世紀ころ。青銅器時代です。サカ族というのはペルシャ系のアーリア人。つまり白人です。

現地ガイドさんによると、ここでキャンプしたオーストラリア人の青年が、夜、2mの身長の白い鬚のおじいさんに会い、おじいさんは我々サカ族がこの地に暮らしていたのだ〜〜と言って消えたという事件があったとのこと。
新聞に載ったと言ってましたが。う〜〜ん。


遺跡公園の管理人室はユルタ
 
 入口から進むとタムガリ川の跡

タムガリ川の跡を越えると、早速、岩絵がありました。

岩絵は崖というか斜面の岩に描かれています。
黒い岩で硬そうです。石か金属で削って描いたとのこと。何千年も残っているというのは凄い。

遊牧騎馬民族として有名なスキタイもサカ族の一派と考えられているそうですが、歴史上、遊牧民の活動が開始されるのは紀元前12〜前9世紀と言われています。ですから、岩絵の描かれた紀元前14世紀は遊牧活動が始まる前ということになります。

ここで見られる岩絵の多くは動物、そして狩りのシーン。
他方で、野生の動物を飼い慣らしているような場面もあって、もしかしたら、狩猟生活から牧畜生活への移行を示すものなのかもしれません。

現地ガイドさんによるとサカ族の岩絵の中には雪ヒョウを狩猟に使った場面もあって、彼らは子供のころから雪ヒョウを育てて飼い慣らしていたんだ、とのことでした。

雪ヒョウを飼い慣らすなんて、ちょっと信じられません。よっぽど動物の扱いに長けた人たちだったんでしょうね。そういった人たちだからこそ、馬を飼い慣らし、遊牧騎馬民族となることができたんでしょうか。


岩絵は拙くも見えますが、結構、動物の特徴をとらえています。

斑点のある動物?
 
 この角は鹿ですね


見事な岩絵のある岩が地面に置かれていました。2つに割れていますが、見事

角の立派な山羊と亀だそうです
 
 角が立派な山羊がたくさん。


動物だけでなく人物も描かれています。

馬に乗る人物のようです。既に馬に乗っていたんですね。



なんと山羊に乗ってます。
周りの人物は何をしているのか。
 
 弓を構えた人物。
狙ってるのは馬?


踊る人々
子供が生まれたお祝いにラクダを捧げているのだとか。ラクダはふたこぶラクダ。



なんとも変わった頭を持つ人物像
現地ガイドさんは子供の将来が明るくなるように
という思いで描いたと言いますが
神格化された太陽像として有名なものです
 性生活を描いた岩絵
分かりますか?分からないので聞いたら
下の絵のように見るのだそうです。
ピンクが女でブルーが男

タムガリ面白かった。キャンプして色んな岩絵が見れたら贅沢ですね。

私たちのツアーは、タムガリから国境を越えてキリギスの首都ビシュケクを目指します。

途中、お馬さんたちが水を飲んでいました。



アルマトイからタムガリに向かう途中は
まさに「ステップ」地帯という印象
オアシスとは違う、緑のシルクロードです。


国境越えに時間がかかるときもあるそうですが
幸い我々は短い時間で国境を越えることができました。
国境からキルギスの首都ビシュケクまでは30分足らずです。



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参考文献

中央アジアの歴史 講談社現代新書 間野英二著
文明の十字路=中央アジアの歴史 講談社学術文庫 岩村忍著

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。