キレナイカの遺跡

リビア北東部のキレナイカ地方
キュレーネ以外にも幾つもの遺跡が残ります。
その中でアポロニア、プトレマイオス、トクラーを訪れることができました。
2007年5月

写真はアポロニア遺跡



アポロニア

アポロニアはキュレーネにほど近いリビア北東部の海岸線に築かれた都市です。キュレーネを築いたギリシャ人達が、海上貿易の拠点として築いた港湾都市で、キュレーネ同様、ギリシャからローマ、そしてビザンチンと支配者を変えながら繁栄しました。4世紀に地震・津波に襲われ、現在残っているものの多くは、その後に再建されたものです。

遺跡に入ると最初に5世紀の教会があります(左下)。
そのまま進むと海沿いにいくつも並ぶ柱が見えて来ました(右下)。
   


6世紀に造られた教会だそうです。背後にも建物の跡が見えます。



6世紀の教会の裏手にあったのはローマ時代の浴場で4世紀の津波のあと貯水場となったもの(左)
教会の山側には6世紀の貴族の館跡が残ります。全部で80以上の部屋があるとか(右)。
   


海沿いに次々に遺跡が現われます。
こちらは東のバシリカ。



東のバシリカを見てから、しばらく海沿いの丘の上を歩きます。遺跡の一番東端に、アポロニア遺跡のハイライトである劇場がありました。

この劇場は紀元前3世紀に建てられたギリシャ式劇場です。

海沿いの丘を利用して建てられています。
ガイドさんによるとギリシャ時代の劇場は、このように斜面を利用して造られていたそうです。

古いものであるにも関わらず、劇場の形をかなりとどめています。

この劇場は4世紀の津波でも破壊されなかったのだとか。

写真のように、私が行った時には劇場の中央にヤシの木が打ち上げられていました。

今でも波が高い時は劇場まで波が押し寄せているのだと思います。
それなのに、この保存状態、凄いですね。

アポロニアの遺跡は決して大きな遺跡ではありませんが、海岸線に並ぶ遺跡は海の美しさと相まって綺麗ですし、何より、この海に臨むギリシャ式劇場が魅力的でした。




プトレマイオス遺跡

プトレマイオス遺跡は海のそばの小高い丘に広がる遺跡です。紀元前7世紀にギリシャ人によって築かれ、元々はキュレーネの影響が大きかったようです。
しかし、ローマ皇帝ディオクレティアヌスの時代(284-305)にはキュレーネに代わるキレナイカの中心都市となります。最盛期には4万人が生活していたと考えられているそうです。

遺跡入口(左)。かってはアーチがある7mの高さのコンスタンティヌスの門があったそうです。
門からは列柱道路が続き、商店や小さな神殿があったということですが・・・(右)。
   


しばらく進むと丸い不思議なものがありました。ビザンチン時代のお風呂だそうです(左)。
美しい柱もありました。スペインから持ってきた柱だそうです(右)。海も見えて来ました。
   


更に進むとプトレマイオス遺跡のハイライト、宮殿です。



この宮殿は2世紀のユダヤ人の反乱で壊された宮殿をハドリアヌス帝が修復したものです。
柱が見事だからでしょうか、柱廊の宮殿というのだそうです。

   

柱も立派ですし、ところどころモザイクも残っています。





左下は宮殿内のプライベートプール。噴水もあったそうです。
海の見える宮殿での生活は快適だったでしょうね。
   


宮殿から少し行ったところに2本の柱が立っていました。
何かと思ったら貯水池なのだそうです。
地下に水を貯めていたんですね。そういえば地面に四角い穴が開いてます(左)。
地下も入れます(右)。

   

この貯水池は紀元前2世紀のギリシャ時代に築かれたもの。2キロ先の水源から水を引いていて、6mの深さがあり、800万リットルの水を蓄えることができたそうです。貯水池の上にはかっては小さな神殿があったそうですが、ローマのハドリアヌス帝の時に運動場に変えられたのだとか。



こちらはオデオン。
かっては1000人ほどを収容できたそうです。




日本ではほとんど知られていませんが、かなり立派な遺跡なのにびっくり。
発掘されているのは全体の30%程度ということですから、これからの発掘調査が楽しみです。



博物館

プトレマイオス遺跡には博物館もあります。ライオンを9匹倒した剣闘士の像などの彫刻も面白いですが、見どころは遺跡の各所から見つかったモザイクだと思います。柱廊の宮殿のプールから見つかったメドゥーサや虎のモザイクなど興味深いものが数多く展示されています。

左下は教会から発見された天使とスピリットのモザイク。
右下はオルフェウスのモザイク。動物たちが集まっています。
   


鶏や魚のモザイクも凄い。魚のリアルさは海沿いの街ならではでしょうか。
   




トクラー遺跡

トクラー遺跡は海際にあり、元々プトレマイオスの姉妹都市で主要な貿易港だったところです。
現在は、わずかにギリシャ時代の墓が残るくらいで、ほとんど何も残っていませんが、海際にオスマン・トルコ時代の要塞が建っていました。1653年に建てられたものだそうです。海の守りを担っていたのでしょう。

要塞入口。オスマン・トルコの建築物は武骨な印象を受けますね。




要塞の壁と要塞から臨む地中海。綺麗です。
   



トクラー遺跡は要塞が残るだけと言ってもいい場所ですが
アポロニア遺跡は海に沿って並ぶ建物跡とギリシャ式劇場の雰囲気が素晴らしいですし、
プトレマイオス遺跡は、その広さに驚きます。
リビア北東部に行ってキュレーネを見るだけでは勿体無い。
ちょっと足を伸ばすことをお勧めします。


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私が訪れたのは、いわゆるアラブの春の前。
カダフィ大佐が健在だったころです。
現地ガイドさんやダライバーさん、ツーリストポリスの彼らは元気でいるのでしょうか・・・。


日本では、ほとんど参考文献を見付けられませんでした。

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。