ガダーメス

サハラ砂漠の入口に位置するガダーメス。
砂漠の真珠とも呼ばれるオアシスの町です。
白壁がまぶしい、不思議な町でした。
2007年5月訪問

写真はガダーメス内部


ガダーメスはリビアの西、チュニジアとアルジェリアの国境にほど近い場所に位置します。サハラ砂漠のオアシスであるこの町は紀元前からトリポリとアフリカ内陸部を結ぶ交易路として栄えました。交易の担い手はトァレグ族。現在も青い服と黒い頭巾で有名な部族です。

世界遺産でもあるこの街の特色は、なんといっても白い壁と迷路のような街並みでしょう。砂漠の青空の下、白い街並みはまぶしく、「砂漠の真珠」と評されたのも納得です。

ガダーメスでは1983年に新市街が造られ、今では世界遺産となった旧市街には誰も住んでいないそうですが、かっての人口は6000人。

トァレグ族の中でもベニワジ族とベニワリド族という2つの部族が、この旧市街を住み分けていたのだそうです。

ガダーメスには7つの入口があるということですが、私達は博物館近くの入口から入りました。
トンネルのようになっている通路を抜けると、白い壁がまぶしい。

日干し煉瓦の上に漆喰を塗った白い建物が続きます。

この写真の入口付近は通路に天井がなく青空が見えますが、この先を少し進むと、今度は通路の上にも天井が付き、ぐっと涼しくなります。

ガダメスの民家は互いに接するように建てられていて、男性は下の通路を女性は天井のテラスを通って互いの家を行き来したそうです。
テラスでつながっているため、幾つもの建物が一つの建物のように見え、迷路のようです。

女性が上のテラスを移動したというのは家族以外の男性に姿を見られてはいけないというイスラムの教えを考慮したものなのでしょう。その結果、集合住宅のような形になって通路に天井が付き、強い日差しを遮ることができて、一石二鳥だったわけです。

内部は本当に涼しくて、強い日差しが嘘のようです。地元の人の知恵で風土に合った快適な住居が作られていたことがよく分かります。

1階部分の男性が使った通路部分にはベンチが付いています。このベンチで男の人たちが座って話をしたりして時を過ごしていたのだそうです。通路の天井に木が張ってありますが、この上が女性用の通路になっているわけです。

   


通路は色々な場所に通じています。ナツメヤシの菜園に続いている通路(左下)もあれば、広場(右下)・モスクに通じているものもあります。青空の下に出ると白い壁が本当にまぶしい。

   

右の写真の広場のベランダには三角形の穴が並んでいて、これはよく「奴隷市が開かれたときに、ベランダに座らされた奴隷がこの穴から足を出して品定めをされた」と紹介されています。

しかし、現地ガイドさんに言わせると「そんなのは嘘」「イタリア人の陰謀(で地元民を悪く言ってるということらしい)」なのだそうです。まあ、確かにいわれて見ると、いくら足が細い人でもちょっとどうかな、と思わないわけでもありません。

それにしても、この旧市街、現地ガイドさんがいなかったら、あっという間に迷子になること間違いありません。外部の人が入って来ることを想定していない街並みなんでしょうね。

   



1時間ほどガイドさんに連れられて散策をしてから、旧市街の中の民家を利用したレストランで昼食となりました。ガダメスの旧市街では、この建物の内部も必見です。

ドアを入って建物の中に入ると、外部と違って鮮やかな色彩にびっくりします。内部には赤などの原色を使った手描きのデザインがびっしり。床の絨毯・壁にかけたタペストリ等もびっしり。おまけに金属製のぴかぴかの食器などもかけられています。
これって誰が描くの?と聞いたら、基本的にはその家の主婦なのだそうです。中には上手い人がいて手伝ったりもするらしいけど、主婦が自分のイメージで自分の家の中を飾るということでした。

   

日本の本によると「北アフリカの伝統であるマグレブ美術の影響がうかがえる」ものだそうです。
難しい話だとそうなるのでしょうけれど、主婦の遊び心というか、楽しんでるのが伝わりますよね。





食後、屋上に登ってもいいよ、と言われたので、登ってみました。飾り付けのない部屋を通って、屋根の上へ。涼しい内部とは違って、暑い!陽射しがまぶしい!! まるで別世界です。

白い建物が強い日差しでまぶしくてよく見えないのですが、なんとなく屋根が隣の家と続いているのは分かります。でも、ここを通って隣の家に行ったりするのって、結構危ないのでは・・・。

   



ガダーメスの町を離れる前に、オアシスの水源である泉に寄ってもらえました。
(モデルは我らがツーリストポリス)



日本の本では「最近枯れてきている」と書いてありましたが、なかなかどうして青い色が印象的な豊かな泉です。

この泉、日本の本では「雌馬の泉」という意味の「アイン・エル・フラス」という名前で、7世紀のイスラム軍司令官の馬の名前にちなんでいる、と書いてありますが、現地ガイドさんに言わせると「もっと古くからの名前」で「雌馬」ではなく「牝牛」だとのこと。本当か?と念を押したら、「モ〜〜」と言ったので、たぶん間違いないと思います(笑)。


ガダーメスの見学は純粋に楽しい。
町全体が一つの家のようであり、巨大な洞窟のようでもあり、
迷路の中を進むような、わくわく感があります。
難点と言えばトリポリから車で約8時間というアクセスの悪さでしょうか。


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参考文献

世界遺産を旅する12(近畿日本ツーリスト)
ユネスコ世界遺産(講談社)
21世紀世界遺産の旅(小学館)


私が訪れたのは、いわゆるアラブの春の前。
カダフィ大佐が健在だった時です。
現地ガイドさんやドライバーさん、ツーリングポリスの人は元気でいるのでしょうか。
民族衣装を着てくれたりしてサービス精神にあふれていた彼ら安否が気になります・・・。
元気でいてくれたら、良いのですが・・・。

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。