カラル

リマから北に車で約3時間半。最後の1時間弱の道は未舗装。
海に近いのに荒涼とした土漠の中、世界遺産カラル遺跡が現れます。
2011年9月に訪れました。

写真は遺跡入口。


カラル遺跡の知名度は余り高くないと思います。世界遺産になったのも2009年と最近のこと。

しかし、ここには紀元前3000年から前2000年頃まで人が定住していたという極めて古い都市遺跡です。現時点で新大陸最古なだけでなく、旧大陸のいわゆる四大文明とも並ぶ古さです。

遺跡に併設する小さな博物館では「ピラミッドより古い」と説明されていましたし、現地ガイドさんも「メソポタミア・ヒッタイトに次ぐ古さ」と強調していました。 新大陸の歴史を変えてしまうかもしれない重要な遺跡なのです。



カラル遺跡の広さは66ha。現在発見されたピラミッドは32。その中で手入れがなされているのは8つとのこと。まだまだ発掘中の遺跡でもあります。

上の地図は見学可能な中心部。カラル遺跡で特徴的なのは円形広場でしょう。最初の遺跡入口の写真も円形広場と神殿の航空写真ですし、地図でも円形広場のある神殿が幾つか描かれています。 

遺跡に入ると、すぐに幾つものピラミッドが目に入ります。

それにしても荒涼とした景色です。
このような土地がなぜ栄えたのか?

ガイドさんによると、この遺跡の東側にスーペ川という川が流れており、このスーペ川流域と海岸地帯の交易でカラルは栄えたのだそうです。

こんなに荒涼とした景色ですが、スーペ川流域ではサツマイモ・トウモロコシ・カボチャ・ヒョウタン・豆・綿といった農作物が取れたのだとか。



遺跡からはクジラの骨やイワシなど魚の骨も見つかっているとのことです。海岸地帯の魚と農産物を交換していたんでしょうか。

カラル遺跡ではピラミッド・神殿と住居跡が発見されています。しかし、今のところ、武器は一つも発見されていないそうです。宗教都市だったのでしょうか。

ピラミッドを見ながら進むと、すぐに大きな円形広場がありますが、背の高い建物がないせいか、近くに行かないと気が付きません。しかし大きい広場です。左下の写真に小さく人が写っているのですが分かるでしょうか。 全体を見渡せる展望台があるといいのですが・・・低い位置からだと、一枚の写真に全体を収めるのは難しいです・・・

   

遺跡入口で売っていた絵葉書は高い場所から撮影されたものでした。全体がよく分かります。




この円形広場は大地の神を祀る神殿前に位置しています。
一般人は神殿内には入れなかったものの、この広場までは入ることが許され、儀式に参加したんだそうです。

説明の看板に人がたくさんいる絵が描かれていますが、一般人がここで楽器を奏でたりしたんだとか。
かなりの人数が入ることが出来たでしょうね。

動物の骨でできたラッパや笛、アンターラという楽器が多数発見されているそうです。



円形広場から、ピラミッド群へ進みます。遺跡に入ってすぐ目に入ったピラミッドです。
これらのピラミッドのすぐそばには神官のものと思われる住居跡も見つかっています。

 


遺跡を進むと、立石がありました。
この石、2.5mで4tの重さがあるとか。
日時計とも東西南北を示すとも言われているそうです。


ピラミッドに続いていて、何か意味ありげです。

この周辺を写した航空写真の絵葉書もありました。やっぱり、意味ありげな配置。





 カラル遺跡でちょっと注目すべきは、右の写真のようなものが出土していること。

インカには文字がなくキープといわれる結び縄で数字を表記したのは有名ですが、これ、キープに見えませんか?

これが出た時には、誰かが後から埋めたんだ!と大騒動になったそうです。今では本物ということに落ち着いたとか。

この時代から文字ではなくキープを選択したんでしょうか。カラルからは文字は発見されていません。



立石から少し進んだところで、初めて緑を目にしました。

遺跡から一段低い所に緑が広がっています。

緑の中を流れるのがスーペ川。

毎年12月から4月にはアンデスの雪解け水で増水し、洪水にもなるのだとか。

ピラミッド群のある高台とは別天地に見えます。

この緑あってこそのカラルだったのでしょうね。


ちょっと進むと、また円形広場のある神殿に出ます。
円形広場を横からみたところです。 



正面に廻ってみました。


う〜ん。ピラミッドに登れないのが残念。

 
円形広場があるということは分かるのですが、全体像が把握できません。

説明の看板が充実していることだけが救いです。
どうやらこのピラミッドは遺跡入口の看板に写っていたピラミッドのようです。
入口近くの円形広場のある神殿とは形が違いますね。

この神殿からは人身御供が見つかっているそうです。
足が切られていたとか・・・。

ここで再び絵葉書登場。これも航空写真です。せめて展望台があったらなあ。



 この先にも大きなピラミッドがあるのですが、残念ながら近くには行けませんでした。発掘作業中のようです。説明の看板を見る限り、かなり広い広場を持ったピラミッドです。円形の広場らしきものもあるようです。スペイン語だけど、セントラル・ピラミッドっていう意味ですよね。カラル遺跡の中心的な神殿だったのでしょうか。
   


展望台のようになっている丘に登りました。遺跡をある程度見渡せます。

円形広場のある神殿



近寄れなかったピラミッド、広い広場があるのがなんとなく分かります。



入り口近くの2つのピラミッド



発掘中のピラミッドが他にも見えました。



 

展望台から遺跡入口に戻る途中に、変わった建物(神殿?)がありました。

今度は建物の中に円形の部屋があります。

入ってみたけど、狭い。
小柄だったんだろうなあ。

それにしても円形が好きな人達です。

彼らにとっては円というのは何か意味があったのでしょうか。


 遺跡入口には、小さな博物館というか展示館もありました。

写真は遺跡の建造方法を説明したもの。

カラル遺跡の石組みは、写真右上のようにイグサのようなもので作った袋に幾つもの石を詰め、それを積み重ねて作られたものなのだそうです。使われている石は安山岩でもろいのだとか。

また、カラル遺跡の神殿は幾つもの神殿が積み重なっているという特徴があります。王が建てた神殿の上に次の王が新しい神殿を建て、更に次の王が・・・と、古い神殿の上に次々と新しい神殿が建てられ、どんどんと大きくなっていったわけです。

これは、その後のアンデス文明でも見られるものだそうですが、中米のマヤでも同じような工法が見られます。

中米と南米には文化の交流はなかったと言いますが、面白い共通点ですね。




土偶のようなものも展示されていました。
かわいいけど、ちょっとコワイ。
   


ざっと見学して1時間15分。
興味深い遺跡ですが、もう少し整備してほしいなあ。
この遺跡には展望台が不可欠なんじゃないでしょうか。
いずれにせよ、まだまだ発掘中。数年後には凄いことになっているかもしれません。



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参考文献

古代アンデス 神殿から始まる文明(朝日新聞出版・大貫良夫/加藤泰建/関雄二 編)

カラルについては参考文献が少なく、基本的に現地ガイドさんの説明を紹介しています。
今後、発掘調査が進めば、全く違う事実も出てくるかもしれません。