ティワナク

太陽の門で有名な世界遺産ティワナク。
ティティカカ湖にほど近い3850mの高原地帯にあります。
2009年8月に行くことができました。

写真は太陽の門


ティワナク文化は紀元前3世紀から後12世紀ころに栄えた文化です。後300〜500年ころに神殿群の建設が始まり、後500〜1000年ころに最盛期を迎えたと考えられています。最盛期にはボリビアからペルー南高地・チリ北部にも影響を与えました。

後1世紀ころに15キロ離れたティティカカ湖から灌漑用用水を引くだけの治水技術を持っていただけでなく、優れた石造技術を持ち、後のインカに影響を与えたと考えられています。写真の太陽の門は一枚岩でできていることで有名。デニケンなどは宇宙人が作ったと主張していたほどです。

下の写真は遺跡入口にある復元模型。もっとも、現在発掘復元されているのは遺跡のごく一部。



復元模型の手前のピラミッドは「アカパナ」と呼ばれます。7段の基壇からなり、その形も変わっていますが、頂上に貯水池があったという点も変わっています。
ピラミッドの奥にある広場が「カラササヤ」と呼ばれる広場。いくつものモノリート(1つの石からできた石像)が発見されました。太陽の門はカラササヤの隅にあります。
カラササヤの右隣にある小さな広場が「半地下神殿」です。

ティワナクはかってはパイピカラと呼ばれており、その意味は「中央の石」というものでした。世界が創造された場と言われたのです。ティワナクは世界創造の場として崇拝され、宗教センターとして機能していたようです。
 


アカパナ

アカパナは現在、発掘・修復が進められている段階です。
2009年では下の写真の状態でした。

アカパナは長さ204m、幅192m、高さ17m。
空の神に捧げたピラミッドだということです。
動物や子供のミイラが見つかっているとのこと。音が響きやすい構造をしています。

左下は修復が進む基底部。右下はピラミッドを横から見上げたところです。
   



カラササヤ

遺跡の中心部だったと思われるカラササヤ。
広場の大きさは135m×130m


カラササヤは大地の神のための神殿だったのではないかと考えられているようです。かって、ここには多くのモノリートがあったとのことですが、多くが持ち去られてしまったということで、今では遺跡に隣接する博物館に7,3mもの巨大なモノリート「ベネット」が展示されている他、「フライレ」と「ポンセ」と呼ばれる2体が残っているだけです。

「ベネット」は保存状態が良く、全身に細かい模様が彫られています。首には杖を持つ鳥人やひざまずく兵士、背中にはビラコチャ神と息子である太陽神と娘である月神、歯を剥くピューマなど。そして、顔には涙のような柄が彫られています。手には杖とカップを持ちますが、手が変であることがモノリートの特徴なんだとか。残念ながら博物館は写真撮影禁止でした。せめて絵葉書でも置いてくれればいいんですが・・・。 必見ですので、忘れずに博物館にも立ち寄ってください。


下は「フライレ」、「神父さん」という意味だとか。愛称ですね。
保存状態は余りよくないのですが、ベルトにカニのレリーフが刻まれているのが分かります。
   


こちらは「ポンセ」。発掘した先生の名前だそうです。保存状態が結構良いです。
   


顔と手のアップ。
手に持っているのは何なのでしょう・・・。右手は明らかに変ですね。握った時のように彫られてます。
   

横にも興味深いレリーフが多いです。
左下 頭の帽子部分には杖を持った鳥人?神が並んでいます。
右下 肩の部分にも杖を持った神?がうっすら見えます。イヤリングは人の顔。
   


ポンセは東を向いて立っています。
東には門がありますが、毎年6月21日、門からの光がポンセに当たるのだそうです。
門の下は半地下神殿。どのような意味があったのでしょうか。




 
この写真、何だか分かるでしょうか。

実は「太陽の門」の裏側です。
太陽の門の写真を一番最初に載せたので、受け狙いというわけではないですが・・・余り知られていないだろう裏側を載せてみました。

太陽の「門」という名で知られていますが、実際は建物の壁の一部というか建物の入り口付近だったのではないかとされているそうです。

実際、この入り口は人が一人通るのに丁度いい大きさです。
入り口から顔を出して記念写真を撮るのに最適な大きさとも言えます。

もっと大きなものだと思っていたのですが、意外に小さくて驚きました。


太陽の門は現在カラササヤの隅に置かれていますが、元々どこにあったのかは分かっていません。
発見された時は、半分埋まっている状態だったそうです。

太陽の門が一枚岩で出来ていることは既に述べましたが、その加工技術は素晴らしいものです。

やはり目をひくのは、正面上部に刻まれている両手に杖を持った神。ビラコチャ神が2本の杖を持っている姿とか、雷神・天空神とか言われているようです。
そして、左右には杖を持つ「鳥人」または「走る人」と呼ばれる姿が刻まれています。光芒を発するかのような頭飾りを付け、背中には羽根があり、横向きに走っているようです。人間の顔の姿もありますが、鳥の頭のものもあります。

   

この「鳥人」「走る人」と呼ばれる姿は、ペルーで栄えたワリ文化でも見られるものだそうで、かってはティワナク文化とワリ文化は同一のものと誤解されたこともあったそうです。ワリでは土器に描かれ、ティワナクでは石に刻まれたということです。今では別の文化とされていますが、当然、影響があったのでしょうね。


カラササヤは石を組んだ壁で周囲を囲まれています。
石組み技術は大したものです。
石を彫った拡声器もありました。
   



半地下神殿

半地下神殿はカラササヤに隣接するその名のとおり半地下の神殿です。
下の写真の左部分がカラササヤ、右が半地下神殿。


半地下神殿は28m×26mの広さ。深さは1,7m。
カラササヤの北に位置します。

 
半地下神殿は地下の神の寺院と言われているようです、

その中央にはモノリートがありますが、このモノリートからカラササヤのポンセを見ることができます。一直線に並んでいるといっていいでしょう。

この半地下神殿には右の写真のとおり、壁に無数の顔が埋められています。顔の数は全部で177あるそうです。

ティワナクの元々の名前は「中央の石」であり、ビラコチャはここで世界を創造し、人間に地中から出てくることを命じました。
それに応じて人間が地中から集団で現れ、各地に広がっていきました。
ビラコチャは各集団のシンボルの石像をこの地に置いたのだそうです。

各地に散った人々はティワナクをルーツとして信仰の場としました。

この顔は各地の集団を代表するものだったのかもしれません。


左下 実に色々な顔があります。
右下 巨石の下に手?のレリーフが残っています。昔は人が彫られていたのかもしれません。
   
それにしても見事な石組みです。


半地下神殿中央のモノリート
ヒゲがあります(左下)。横に彫られているのは狐とヘビ(右下)。
   


実に面白い遺跡でした。
駆け足の観光となってしまったのが残念。他にも見どころはあったのですが・・・。
発掘復元が進んだら、ぜひ再び訪れてみたい遺跡です。



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参考文献

古代アンデス 神殿から始まる文明(朝日新聞出版・大貫良夫/加藤泰建/関雄二 編)
埋もれた古代文明の謎(東京書籍・吉村作治監修)
沈黙の古代遺跡 マヤ・インカ文明の謎(講談社+α文庫・増田義郎監修・クォーク編集部編)

参考文献が少なく、基本的に現地ガイドさんの説明を紹介しています。
今後、発掘調査が進めば、全く違う事実も出てくるかもしれません。