コート・ディジー

モヘンジョダロにほど近いコート・ディジー
19世紀の砦とインダス文明以前の遺跡が残っています。
2014年12月訪問

写真はコート・ディジー砦


コート・ディジーはインダス川を挟んでモヘンジョダロの対岸に位置します。モヘンジョダロ観光の拠点となるサッカルからは約40q。1日でモヘンジョダロと合わせて観光することが可能です。私たちもモヘンジョダロ観光の後にコート・ディジに立ち寄りました。道が空いていたら1時間ほどとのことですが、サトウキビ渋滞にぶつかり、着いたのは予定より遅れて夕刻となってしまいました。

まずは閉門時間のある砦から観光

コート・ディジー砦

入口から見た城壁


コート・ディジー砦は巨大な要塞です。遠くからも丘の上に延々と連なる城壁を見ることができ、かなりの迫力です。この砦が築かれたのは19世紀の初め。当時、シンド地方を支配していたタルプール藩王国の王が戦いに備えて築いたものです。当時、この地方にはタルプール藩王国の他に2つの藩王国があり、元々は2つの藩王国との戦いに備えて築かれました。しかし、後にはイギリスへの備えの意味も持つようになったということです。砦の完成には27年間かかりましたが、結局、タルプール藩王国はイギリスを受け入れたため、この要塞が使われることはありませんでした。

一度も戦場となっていないので保存状態が良いわけですね。
要塞内には幾つもの門があります。この階段を登ったところにも門があります。



 要塞は焼煉瓦でできています。
 上の写真を登ったところの門


門をくぐると広い道。
ここを象や馬に乗った兵士が進んだのでしょう。


ここを登るのかと思ったら、途中で折れて進み、上から見下ろせる場所に出ました。

それにしても、この要塞、確かに全体的な保存状態は良いものの、瓦礫が多く、余り修理しているとは思えない。現地ガイドさんに、なんでもっと修復しないのかと聞いてみたら、なんと、この要塞は私人の持ち物。タルプール藩王国の王の子孫は今でも健在で、その人の持ち物なんですって。

なんでも子孫は近くの宮殿で暮らしているそうです。もともと、要塞は戦があった時に使うものなので王様はこの砦に住むことはなく、平時は近くの宮殿で暮らしていたそうで、今でも、その宮殿を子孫が使っているんだとか。現地ガイドさんが「あれ」という方向を撮ってみましたが・・・。

上から見た広い道
 
 丘の上にあるのが宮殿とのこと。


入口が見下せました。
 3つ並ぶのは穀物倉庫


また、門が現われました。



立派な門です。風情がありますね。



門を抜けると開けた場所に出ました。前方の塔に登れるそうです。
物見の塔でしょうか。



手すりもない急な階段を登ると、凄い良い眺めです。夕陽に映えて綺麗。下の写真で手前にある四角いのは貯水槽。水を貯めて使ったそうで、下に降りる階段もあります。また、写真左の中央部分にあるのは軍人のモスク。そして、城壁の通路の下に幾つも入口があるのは兵舎です。




城壁がずっと伸びています。


非常に良い眺めですが、手すりも何もないので、ちょっとコワイ。
ここで戦をするつもりだったなんて、凄いなあ。
昔の兵隊さんは高所恐怖症では務まりませんね。

しばらく眺めを堪能してから、反対方向に進みます。
王が滞在用に建てられた宮殿が残っていましたが・・・
かなり傷んでいます。かっての面影はほとんどない。


もったいないんだけど、もう王様じゃないから修復は大変なんでしょうね。


城壁は更に続きます。奥に見えるのは牢獄だそうです。



変わった建物が見えて来ました。



これは王が裁判をした場所
かっては、ここに玉座が置かれていました。

荒れ果てちゃっているのが残念
後ろの塔には大砲が置かれていたのだとか。


更に城壁は続きます。総延長2・5qだそうです。



夕闇が迫ってきているので砦を後にし、マウント(遺丘)に向います。
マウントは目と鼻の先。マウント近くからも砦が良く見えました。

 
 



マウント(遺丘)

砦から見えたマウント


コート・ディジーマウントはインダス文明に先立つ紀元前2800年からインダス文明にかけての集落跡で、インダス文明成立の鍵になるかもしれない貴重な遺跡です。インダス文明ではモヘンジョダロのような計画的都市が突然現れますが、いきなり完成した形の文明が現われるというのは奇妙な話で、当然、インダス文明を育んだ母文明があったはずです。
コート・ディジマウントはその一つと考えられていて、周壁に囲まれた集落や焼煉瓦を使った家などが発見されています。城砦部に上流階級が暮らし、その周囲に労働者階級が暮らしていたと考えられることや、土器の様式などにインダス文明との共通項が多いということです。モヘンジョダロの近くにあるというのも、意味ありげですよね。

とはいえ、近くから見たマウント(遺丘)は、こんな感じ。
素人には正直、さっぱり分かりません。



ただ、良く見ると土器のかけらが埋まってたりします。



ツアーの同行者が見付けた土器の破片は博物館のインダス文明の土器にそっくり。
赤と黒の模様が鮮やか・既にろくろが使われています。

同行者が見付けた土器の破片
 
 ラホール博物館のインダス文明の土器


暗くなって来たので観光終了
コート・ディジー砦がライトアップされていました。



個人でコート・ディジーに来るのは危険らしいですが
実に面白かった。
砦って、妙に興奮します。


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参考文献

インダス文明 インド文明の源流をなすもの(NHKブックス)
四大文明 インダス文明(NHK出版)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。