ブラガ

ポルトガル北西部の街ブラガ
祈りの街として有名です
旧市街と郊外の巡礼地を訪れました。
2019年5月訪問

写真は街の入口アルコ・ダ・ポルタ・ノヴァ


ポルトから車で北に1時間ほどの場所にあるブラガ。ブラガを中心にスペイン国境ミーニョ川までのミーニョ都市圏はポルトガルでリスボン・ポルトに次ぐ第三の都市圏となっています。
ブラガはローマ時代からミーニョ地方の中心でした。レコンキスタ後に大司教座が置かれてからは宗教都市として栄え続けます。ポルトガルでは「リスボンは楽しみ、コインブラは学び、ポルトは働き、そしてブラガは祈りの町」と言われるそうです。4つの房を持つ帽子は大司教を表わすと聞いたことがありますが、18世紀に建てられた街の入口アルコ・ダ・ポルタ・ノヴァのアーチには、なんと5つの房を持つ帽子が彫られていました。宗教都市としての格の高さがうかがえます。

 旧市街の入口
 旧市街から見たアルコ・ダ・ポルタ・ノヴァ

アルコ・ダ・ポルタ・ノヴァをくぐるとソウト通り
通りを途中で右に折れて1本先の通りを行くとカテドラル正面に出ます。

カテドラル



ブラガのカテドラルはポルトガル初代王の父アンリと母テレサが12世紀に建立しました。

カスティーリャ王女テレサと結婚してミーニョ地方を支配するポルトゥカーレ伯爵となったアンリはローマ教皇を説得してブラガを大司教座とし、ブラガ大司教の権力は広くイベリア半島北西部に及んだそうです。

大航海時代が始まるとブラガは商業の中心から取り残されてしまいますが、16世紀の大司教ディオゴ・デ・ソウザは街を復興し、老朽化が進んでいたカテドラルの増改築を行いました。

カテドラルは、その後も増改築が繰り返されたため、ロマネスク様式・ゴシック様式・マヌエル様式・バロック様式が混在しています。

カテドラルのファサードには美しい聖母子とポルトガルの紋章。レコンキスタでムーア人から奪い返した7つの城が彫られています。

私が訪れた日のブラガは結婚式ラッシュで、カテドラルの鐘が結婚行進曲を奏でていました。鐘で聴いたのは初めて。1日に何組も結婚式を挙げていたようで何回も聴くことができました。結婚式に良い日だったのかな。

結婚式が行われていたため、遠慮しながらの観光になりましたが
厳かな雰囲気が素晴らしい。
   

美しい天井


ステンドグラスも美しい


現地ガイドさんが結婚式に負けずに絶対に見逃すなと言ったパイプオルガン
素晴らしい豪華さ・・・。



カテドラルには多くの付属礼拝堂があります。

司教の棺が置かれた礼拝堂


歴代司教・大司教の棺が置かれた部屋


アンリとテレサの棺が置かれた礼拝堂もあるらしいのですが見学できず・・・。

回廊
 
 小さな庭も味わいがあります

現地ガイドさん、これまでもちょこちょこ自由時間を作ってくれたんですが
ここでなんと更に再集合まで1時間半近い自由時間をくれました。

まずはカテドラルの外側を見て回ることにしました。

裏手に回ってみます
マヌエル様式の主礼拝堂
 
 窓の下には聖母子像
両側にポルトガルとソウザ大司教の紋章

カテドラルの周囲をぐるっと回るとソウト通りに出ます。

旧大司教館



カテドラルの横からソウト通りに出ると、カテドラルのすぐ前が旧大司教館
現在は図書館となっていて貴重な文書が保管されています。
旧大司教館前の宮殿広場にある噴水は18世紀に造られたということですが不思議な形。
   

ソウト通りを旧大司教館の前で左に折れると市庁舎とペリカン噴水のある公園

市庁舎とペリカン噴水



ペリカンと天使の可愛い噴水
中世ではペリカンは餌がない時に親が自分の肉を子に与えると考えられていて
愛の象徴だったんだそうです。



自由時間がたっぷりあったので、ブラガの教会をできるだけ廻ってみることにしました。
市庁舎の近くのポプロ教会はアズレージョが見事だそうです。
ちょっと迷ったけど大きな通り沿いにあるのを見つけました。

ポプロ教会

この教会でも結婚式。確かにアズレージョが見事。
   

アズレージョだけでなく18世紀ポルトガル・バロックの金泥細工の祭壇も見事


凄いなあ、探してよかった。

カテドラルの裏手にも見どころが多かったです。

コインブラス礼拝堂



カテドラルの裏手を進むと小さな公園があって、公園に面してコインブラス礼拝堂(左)と邸宅跡(右)

邸宅跡は入れませんが礼拝堂は入れます。
16世紀にコインブラス家の付属礼拝堂として建設されたもので、国の指定文化財。


外観の素朴なアズレージョも素敵でしたが
内部のアズレージョと金泥細工の装飾が素晴らしい。


品があって、豪華で、本当に見事。
国の指定文化財となっているというのも納得。


コインブラス礼拝堂の向かいにあるサンタ・クルス教会も内部が見事っていうので探したけれど
向かいにはそれらしき建物がないなあ、って少し先に進んだら立派な建物が現れました。


なんと右側の建物がサンタ・クルス教会でした。

サンタ・クルス教会

17世紀バロック・マヌエル様式
 
 内部の金細工が見事

彫刻師で修道士だったホセ・デ・サント・アントニオが装飾を手掛けたのだそうです。
金色がまばゆい。聖歌隊席と奥のオルガンが綺麗。


内部はちょっと大味な印象かな。でも、外観が面白い。
いや、十分豪華な教会なんですけどね。見ごたえのある教会が多すぎます。
さすが「祈りの街」だなあ。

ツアーでは旧市街だけでなく街の近郊の巡礼地にも連れて行ってもらえました。

聖サメイロ教会



ブラガ近郊の丘の上に建つ聖サメイロ教会。聖母マリアに捧げられた教会で、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼者の巡礼地・聖地となっています。ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世も訪れたということで日本のガイドブックには載っていませんが、地元では大変人気があるようです。
駐車場も広くて立派だった。訪れた時はここでも盛大な結婚式が挙げられていました。

逆光になってしまいましたが
教会正面
 
 結婚式を邪魔しないように見学
主祭壇のマリア様はベールを被っているみたい

ブラガの街を見下ろせます。


近くに、もう一つの聖地。

ボン・ジェズス



ボン・ジェズスはブラガ郊外の丘の上にある聖地です。現地ガイドさんによると、現在もとっても人気のある聖地で、ホテルが5つもあるし、レストランもあるとのことでした。

丘全体が聖地になっているようなのですが何と言っても見どころは丘を利用して造られた教会に通じる階段。バロック様式の美しい階段です。

下が五感の階段、上が三徳の階段といって、階段の踊り場ごとに泉が置かれています。

泉は下から五感の泉・視覚の泉・聴覚の泉・嗅覚の泉・味覚の泉・触角の泉と続いていて、視覚の泉では目から、聴覚の泉からは両耳から、嗅覚の泉では鼻から、味覚の泉では口から水が出る・・・という構造になってましたが、なぜか触角の泉だけは手に持った壺から水が出ていました。

更に泉の上には段ごとに美しい像が置かれています。それぞれ美しく、見ていて飽きることがありません。

上の三徳の階段は信仰・希望・博愛を示すものということで、踊り場も広く立派になっています。

熱心な信者は祈りながら膝を使って階段を上って行くのだそうです。
最初の五感の泉



視覚の泉
 
 嗅覚の泉


泉の上に置かれた彫刻も美しい
 
 どんな意味があるのか・・・


上から見るとこんな感じ。ブラガの街まで良く見えます。



三徳の階段まで来ると泉も立派になります。
   


最後の踊り場はモーゼス広場


教会の前にはキリストの処刑に関わった8人の像が置かれていました。

教会内部
 主祭壇
 ゴルゴダの丘の再現?珍しい形ですね


ここはポルトガルの庭園建築の中で最も美しいものの一つとされているそうです。
明るくて気持ちの良い空間


実は階段を上らずにケーブルカーを利用することもできます。


ポルト発のミーニョ地方を巡るツアーで訪れました。
ツアーのおかげで1日でギマンライスとブラガを巡ることができました。
ブラガでは結婚式で見られないものも多かったけど
逆にめったに体験できない祈りの町の雰囲気を味わえて得した気分。
教会の鐘が奏でる結婚行進曲は素晴らしかった。
ボン・ジェズスも予想以上でした。実に気持ちの良い聖地です。


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参考文献

図説ポルトガルの歴史 金七紀男著 河出書房新社ふくろうの本
21世紀世界遺産の旅 小学館

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。