オビドス

リスボンから車で北に約1時間
歴代王妃の直轄地だった小さな町オビドス
中世の風情を残すポルトガルで一番可愛い町
2019年5月訪問

写真はサン・マリア教会広場
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リスボン近郊の小さな町オビドス。人口僅か800人ということですから町と言うより村と言うべきかもしれません。オビドスは丘の上にあり、周囲を城壁に囲まれています。前4世紀頃からケルト人が住み始め、ローマ支配時に城壁が築かれました。ローマ帝国滅亡後は、西ゴート王国・イスラムの支配下に入りますが、ポルトガル初代王アフォンソ1世の軍が1148年に町をイスラムから奪還し、以後ポルトガル王国の領土となります。1282年にディニス1世は新婚旅行でオビドスを訪れ、王妃イサベルに町をプレゼントしました。以後、町は歴代王妃の直轄地とされます。王妃達に愛された町は谷間の真珠とも呼ばれ、中世の風情を残す絵のように可愛い町と観光客に大人気。



リスボンから車で北に約1時間。オビドスの町が見えて来ました。町の周囲を囲む城壁や城が見えます。この町を王妃にプレゼントしたディニス1世は開墾を進め商業を盛んにし、コインブラ大学の前身となる大学を創設した王でポルトガル中世の黄金期を築きました。その王妃イサベルは慈悲深いことで有名で聖女とされているほど。聖女の直轄地とされるなんて幸せな場所ですね。

町に近づくと水道橋が見えて来ます。
16世紀の王妃カタリナが町に水を供給するために築いた水道橋です。


水道橋は観光客用の駐車場まで続いていました。
バスを降りると教会があり、その後ろに城壁や塔が見えます。

教会背後の塔はファッショの塔
 
 観光用の馬車も走って来ました。

教会は聖ジョアン・パティスタ教会。イサベル王妃が創設し、現在は美術館とされているそうです。

駐車場から町の入口へ。町を囲む城壁が延々と続いています。



町の門(ポルタ・ダ・ヴィラ)

町の門を入ったところに美しいアズレージョ(装飾タイル)があり
オビドスの見どころの一つなのですが、なんと、修復工事中。
余りに残念無念なので絵葉書を買いました。見たかったなあ。



城壁の中から見た門。城壁に上る階段もありますが閉鎖されてました。



町に入ると道が二手に分かれています。
まずは左手の道を進みます。ディレイタ通りというメインストリート。

町に入ってすぐの所に カモンイス記念碑
 お洒落な小道がメインストリート

白壁の家が続きます。
黄色か青色で縁取っている家が多くて可愛い。


サンタ・マリア教会

通りを進むと道から一段低くなっている広場にサンタ・マリア教会があります。

8世紀に建てられたゴート様式の建物が原型とされ、イスラム支配時はモスクとして使われていましたが、レコンキスタ後に教会として利用されるようになりました。
オビドスの町のほぼ中央に位置し、町で最も重要な教会とされています。

15世紀のポルトガル王アフォンソ5世は、10歳の時、この教会で僅か8歳のイサベルと結婚式を挙げたとされています。
アフォンソ5世は有名なエンリケ航海王子の甥で、父王の死により僅か6歳で即位しています。アフリカ王とも呼ばれた王ですが、こんな小さな町で結婚式を挙げたというのは意外ですね。

教会の前の通りにあるのは「ペロリーニョ」という罪人を吊り下げて晒したという柱。この柱はアフォンソ5世の息子であるジョアン2世の息子がテージョ川で溺死した時、悲しんだレオノール王妃が王子を引き上げた漁師の網を彫らせたという話もあります。
悲しい話なんですが、教会の前に罪人を晒すというのは、ちょっと我々の感覚とは違いますよね・・・。

自由時間に教会内部も見学したので、ここで紹介
教会の中は美しいアズレージョ(装飾タイル)で飾られています。


壁だけじゃなく天井まで美しいアズレージョ
   

美しいアズレージョは17世紀のもの


アズレージョの美しさに満足して出てきてしまったのですが
実は内陣にオビドス市長の美しい棺があって見どころの一つだったみたいです。


教会の横にはテーブルが設けられ
休憩するのに良さそう。
 
 教会前、ペロリーニョの裏にある
カタリーナの泉 

カタリーナの泉は水道橋を築いた王妃が村人のために作ったもの

隣の建物から見た教会
 
 お洒落なお土産屋さん


サンタ・マリア教会から少し歩けばサンティアゴ教会が見えて来ます。
   


城・城壁

サンティアゴ教会の前で道はおしまい。本当に小さな村です。

サンティアゴ教会の右隣はオビドス城。
ローマ時代に小さな岩山の上に築かれた要塞が時々の支配者によって手を加えられ、現在の姿になっています。

今はお城はポサーダ(歴史建造物を利用した豪華ホテル)になっていて、宿泊ができるだけでなくレストランも人気とのこと。
何より、このお城から城壁に上ることができて、城壁から眺めるオビドスの町並みは最高・・とのことなので、意気込んで向かったのですが・・・

何故か、入っちゃダメって言われました。何かイベントがあるのか、城壁の修理でもしているのか、理由が分からないのですが、ともかくダメとのこと。押し寄せる観光客を一切入れてくれません。

オビドスの城壁は手すりもなく危ないというのは聞いていたので、もしかしたら事故でも起きたのか、それとも観光客の増加を見込んで安全対策工事でもしているのか・・・そういえば町の入口のポルタ・ダ・ヴィラも修復中だったし・・・色々考えても分からず、なんにせよ残念。

追い出される前に撮った城の壁
岩山の上に建っているのが分かります
 
 未練がましく城壁の周囲を散策
城壁の高さはかなりのもの


残念なので、また絵葉書を買いました。この目で見たかったなあ、この景色。



こちらの絵葉書は城壁からの眺めではなさそうですが、ついでに買っちゃいました。



気を取り直して町を散策
民家の背後に城壁が続いています。



本当に可愛い町だなあ



横道に猫発見
 
 3匹遊んでました


サンタ・マリア教会から先は来た道とは一本違う道を散策してみることにしました。
左の扉が立派な建物はおそらくミゼリコルディア教会(慈善教会)


中世の風情を感じます。

小さな村なのに教会が多い。

サン・ペドロ教会
 
 入ってみたら見事な金泥細工の祭壇


散策していると建物の背後に城壁が見え隠れします。
花を飾る家が多くて、本当に可愛い町
   


町の入口まで戻って来ました。
   


ポルタ・ダ・ヴィラが修復中だったのと城壁に上れなかったのが残念でしたが
本当に可愛い町でした。

町を離れる時、車窓から撮ったオビドスの城壁



名残惜しいですが・・・オビドスの町が遠ざかります。


何時か、また訪れたいものです。
その時は城壁に上りたい。


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参考文献

中世の村オビドス ヴィットル・ヴィエイラ(オビドスで購入・日本語版)
図説ポルトガルの歴史 金七紀男著 河出書房新社ふくろうの本
21世紀世界遺産の旅 小学館
るるぶ情報版ポルトガル JTBパブリッシング

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。