シュコツィヤン鍾乳洞とポストイナ鍾乳洞

多くの鍾乳洞のあるスロヴェニア
迫力ある地下渓谷で有名なシュコツィヤン鍾乳洞と
ヨーロッパ最大級のポストイナ鍾乳洞を訪れました。
2019年10月訪問

写真はポストイナ鍾乳洞


石灰岩でできた台地をカルスト台地と言いますが、スロヴェニア南西部のカルスト地方はその語源となった地方。水に溶解しやすい石灰岩の大地は雨や地下水、川によって浸食され、気が遠くなるほどの長い年月をかけて多くの鍾乳洞が形成されました。
スロヴェニアの鍾乳洞の数は6千とも1万とも言われています。その中で、世界自然遺産に指定されているシュコツィヤン鍾乳洞とヨーロッパ最大級のポストイナ鍾乳洞を訪れました。

シュコツィヤン鍾乳洞

シュコツィヤン鍾乳洞は首都リュプリャナから南西に約82qのところに位置します。

鍾乳洞は全長約6q。内部は細かく分岐し、多くの支洞があります。

この鍾乳洞の最大の特徴は、ヴェリカ・ドリーネから鍾乳洞内に流れ込むレカ川によって形成された世界最大級の地下渓谷。

ドリーネというのは石灰岩の大地の地下にできた空洞が発達し、表層面が陥没してできた陥没孔のこと。

ビジターセンター近くの展望台からはこのヴェリカ・ドリーネからレカ川が滝のように地下に流れ落ちていくのを見ることができます。展望台から撮ったのが左の写真。写真で撮ったあたりは現在の鍾乳洞観光の出口付近となっていますが、元々はここが入口となっていました。

この鍾乳洞は3000年前には人々が巡礼に訪れる聖なる場所とされていたそうです。川が流れ込む地下洞窟は古代の人々にとってあの世とか生まれる前の世界に通じる場所と考えられていたのでしょうね。

鍾乳洞入口のビジターセンターにあった周辺の立体模型
ヴェリカ・ドリーネは左側。この大地の下に鍾乳洞が広がっています。


鍾乳洞はツアーでないと見学できません。
林の中を下りて行って人工的に造られた入口から中に入ります。


鍾乳洞内は写真撮影厳禁となっています。
パンフレットや絵葉書で内部を紹介します。まずはパンフレット。


パンフレットの写真で上の方に光の帯のようなものが写っていますが、これが見学用の歩道。
見学者はガイドさんの後を足元の灯りを頼りに鍾乳洞内を進んでいくこととなります。

鍾乳洞の見どころは、まずはグレートホールと呼ばれる巨大な地下空洞。右の写真はグレートホールにある高さ15mの「ジャイアント」と呼ばれる巨大な鍾乳石(絵葉書)。25万年かかって成長したのだそうです。

その後、オルガンホールと呼ばれる場所や蝙蝠の棲家跡などを通り、様々な鍾乳石を眺めながらレカ川の流れる地下渓谷を目指して階段を下りて行きます。

上のパンフレットの写真は地下渓谷を下から撮ったものだと思います。ツアーでは地下渓谷には下りずに上から見下ろす形で進むのですが、途中、鍾乳洞を探検した探検家が岩肌に彫った探検用の足場を見ることもできました。

レカ川は現在は水位が下がっていますが、かっては水位が高く、洞窟内の水に探検家は行く手を阻まれていたのだそうです。1965年になって水位が下がり、ようやく内部の探検が可能となったということですが、真っ暗な未知の洞窟内を探検した探検家って本当に凄い。

ここからはしばらく絵葉書で紹介します。
オルガンホールと呼ばれる場所。パイプオルガンのような鍾乳石


洞窟の床面から成長する「石筍」と天井から垂れ下がる「つらら石」
石筍とつらら石が合体すると石柱となります。



最大の見どころレカ川の上にかかる橋
渓谷の深さは約45m。川音が洞窟内に響きます。凄い迫力。
   

レカ川はこの後、約35qに渡って地下を流れ続け、
その後地表に現れてティマヴ川の源流となりアドリア海に注ぎます。

鍾乳洞内最後の見どころの石灰棚ドゥヴォラナ・ポンヴィク




洞窟の出口が見えて来ました。ここから撮影可能となります。



レカ川の流れを見下ろしながら岩肌に沿ってビジターセンターに戻ります。
   

見学時間は2時間ほど。
鍾乳洞内は涼しいのですがアップダウンが結構あって汗をかきました。
次はポストイナ鍾乳洞へ移動です。

ポストイナ鍾乳洞



ポストイナ鍾乳洞は首都リュプリャナから南西約56q。鍾乳洞内のツアーの予約の関係でシュコツィアン鍾乳洞を先に観光しましたが、リュプリャナから行く場合、シュコツィヤン鍾乳洞より手前に位置します。シュコツィヤン鍾乳洞とは車で約30分の距離。ポストイナに着くと、自然豊かだったシュコツィアンと異なり、多くのレストランやショップが並ぶ一大観光地といった趣き。入口では各国語の音声ガイドが配られます。日本語のものもありました。そして中に入るとトロッコ乗り場。



上の写真はポストイナ鍾乳洞のパンフレット。ピウカ川によって10万年前から形成されたポストイナ鍾乳洞は全長約27qもの広さを誇るヨーロッパ最大規模の鍾乳洞です。

19世紀から観光地化が進められ、現在は観光用に公開されている5qのうち3.7qをトロッコ列車で一気に移動し、その後、徒歩で見学してから再びトロッコ列車で戻ってくるという観光ルートとなっています。1968年に現在のトロッコ列車全線が開通したということですから、シュコツィアン鍾乳洞の水が引いて探検が本格したころには既に観光地となっていたことになります。

余りに観光地化されてしまったため世界遺産になれないとの噂もありますが、他方で見学ルートも整備されていて足元もしっかりしているし、フラッシュ禁止ではあるものの基本的に写真撮影可能となっています。

自然豊かなシュコツィヤン鍾乳洞の見学が、ちょっとした探検家気分を味わえるハードなものであるのに対し、こちらは気楽に楽しめるレジャーランドといった印象。こういう対極な鍾乳洞が近くに2つあるというのも凄いなあと思います、

また、ポストイナ鍾乳洞は多くの種類の鍾乳石が見られることでも有名で、パンフレットによると「1つの鍾乳洞の中でこれほど多くの鍾乳石が見られるのはここだけで、その豊かさから鍾乳洞の女王と称される」とのことでした。

鍾乳石の中でも美しいものの一つが右の写真のように「カーテン」と呼ばれるもの。
薄暗い鍾乳洞で綺麗な写真を撮る腕も良いカメラもないのでパンフレットから拝借しました。

たぶん、パンフレット用に特別に光を当てて撮った写真だとは思いますが、まるで薄い布地が揺れているかのような「カーテン」。これが鍾乳石だというから驚きです。

元々鍾乳石は石灰岩洞窟において天井や壁からしみ出した石灰分を含んだ水から水分が蒸発して残った石灰分が長い時間をかけて成長していくもの。
しみ出した水が流れながら蒸発すると、長い年月をかけてカーテンに育つのだそうです。
他にもストローとかつらら石、床から育つ石筍などがあります。

トロッコから降りると天井から無数の鍾乳石が垂れ下がっていました。


細くて管のようになっているのをストローと呼び
管が塞がれ太く育っていくとつらら石と呼ばれます。

徒歩での見学ルートは最初にまず上り、後は基本的に下り坂。



見学用の遊歩道に沿って進むので迷うことはありません。



 赤い海藻のような鍾乳石
 カーテン?

形も様々ですが、色も様々。黄色っぽかったり、赤っぽかったり・・・
   


私は白っぽい鍾乳石が好みだなあ・・・
   


ポストイナ鍾乳洞で最も有名な鍾乳石「ブリリアント」


白く滑らかな鍾乳石ブリリアント
輝く姿からポストイナ鍾乳洞のダイヤモンドと呼ばれているそうです。
   

本当に真っ白で輝くばかり。

見学コースの終点はコンサートホールと呼ばれる巨大な空間
実際にコンサートに利用されることもあるそうです。
帰りのトロッコ列車の乗り場になっていて、お土産屋さんもあります。


トロッコ列車に乗って戻ります。


ポストイナ鍾乳洞内で写真撮影厳禁なのが、この生物


ピンク色の両生類「ホライモリ(プロテウス)」。白人の肌の色に似ていることから「類人魚」とも呼ばれます。伝承ではドラゴンの赤ちゃんとされているそうです。鍾乳洞の中で暮らすことから目が退化していますがとても刺激に敏感なので写真撮影は絶対禁止。1年間何も食べなくても生きていけるけど、とっても繊細な生き物なのです。コンサートホール手前の通路の水槽の中にいます。

鍾乳洞を出たらホライモリの人形が山積みになってました。


甲乙付け難い2つの鍾乳洞。
感動したのはシュコツィヤン鍾乳洞で
楽しかったのはポストイナ鍾乳洞


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参考文献

21世紀世界遺産の旅 小学館
シュコツィアン鍾乳洞パンフレット
ポストイナ鍾乳洞パンフレット(日本語版)
るるぶ クロアチア・スロヴェニア

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。