アジナ・テパ
タジキスタン南西部にあるアジナ・テパ
タジキスタンに残る数少ない仏教遺跡のひとつです。
巨大な涅槃仏で有名。
2015年9月訪問

写真は国立古代博物館に展示されている全長約13mの涅槃仏


アジナ・テパはドゥシャンベの南約100qのクルガン・チュベ近郊にある7〜8世紀の仏教遺跡です。アジナ・テパとはアジナ(魔女の)・テパ(丘)という意味。大雨や大風の後、不思議な物が見つかる丘ということで、人々から恐れられ、魔女の丘と呼ばれていたんだそうです。1961年から1975年までソ連による発掘調査が行われましたが、その後、日干し煉瓦による遺跡の劣化が進んでしまったため、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による修復が行われました。

農村を流れる小さな運河の向こうが遺跡です。
小さな橋を通って遺跡に向かいます。



遺跡入口。日干し煉瓦の大きな壁のようなものがありました。


上の写真の壁の横を抜けて遺跡に入りましたが、正直、何がなんだか分かりません。

ここで添乗員さんお手製のアジナ・テパ平面図登場。これは良く分かる。添乗員さん、グッジョブです。

右の写真で分かるように、アジナ・テパは2つの部分からなっています。
大きな主ストゥーパを祀る塔院部分(写真の上の部分)と、僧たちが暮らした僧院部分(写真の下の部分)です。
それぞれの大きさは50m×50m。

有名な巨大涅槃仏は塔院部分から発見されました。右の写真で緑色に記されているのが、発見された場所です。

塔院部分に幾つかピンク色の印がありますが、これは奉献ストゥーパが発見された場所。平面図上の部分は幾つかの小部屋になっていますが、左の3つの小部屋からは小型の奉献ストゥーパが発見されました。残りの小部屋からは仏像の破片が発見されていて、かっては仏像が置かれていたと考えられています。

僧院部分は中庭を囲んで、僧たちが暮らした小部屋が並ぶほか、集会所や仏像を拝んだ内陣・礼拝所がありました。

まずは主ストゥーパから見学
小高い丘のようです。


ストゥーパの直径は約25m、高さは7〜8mあったと考えられています。
このストゥーパ、登れます。恐れ多いですが、やはり登れると聞くと登ってしまいます。


ストゥーパの上から僧院方向をみたところ
中庭を囲む形に壁があるのが分かります。
手前は塔院の壁。細い通路もあったようです。



ストゥーパの上から涅槃仏が発見された場所も撮ってみました。


この後、涅槃仏が発見された場所にも近寄って覗いて見ましたが何もありませんでした。
遺跡はラクダ草が生い茂り、歩くと痛い。おまけに蜂もたくさんいます。

自由時間に僧院部分を散策してみました。

 集会所から中庭・遺跡入口方向を見たところ
壁龕が残る僧院部分
 


僧院、内陣・礼拝所からストゥーパ方向を見たところ



僧院の僧坊部分にも幾つもの壁龕が残ります。
かっては仏像が置かれていたんでしょうか。
   

この後、遺跡管理人のお宅でお茶をごちそうになりました。



国立古代博物館

アジナ・テパからの出土品は首都ドゥシャンベの国立古代博物館に展示されています。
なんといっても最大の見どころは全長約13mの涅槃仏


この涅槃仏、足の大きさだけで1、6mあるそうです。巨大な足の裏が写っていますが、小柄な女性だと足の裏にすっぽりと収まってしまうほどの大きさ。アフガニスタン・バーミアンの大仏がタリバンに破壊されてしまったことから、この涅槃仏が中央アジア最大の仏像となってます。


博物館には発見当時の写真も展示されていました。
この角度から見ると、大きさが際立ちますね。


上の写真でも分かるように、この涅槃仏、上半身の大部分が破壊されてしまっています。アジナ・テパの遺跡は7〜8世紀のものと考えられており、アラブの攻撃で終焉を迎えたのではないかとされていますが、火を放たれたりはしていないそうで、詳細は未だ分かっていません。

 修復された上半身
 下半身はオリジナル


遺跡から発見された奉献ストゥーパも展示されていました。
上部が失われているのが残念



既に書いたようにアジナ・テパは7〜8世紀の仏教遺跡とされています。7〜8世紀と言えば、既に日本にも仏教が伝わってきている時代。インドで誕生した仏教は1〜2世紀のクシャーナ朝の時代に一気に中央アジアに広まり、それが西域を通って中国に伝来されたと考えられていますが、不思議なことにタジキスタンでは早い時期の仏教遺跡が発見されていません。普通にルートを考えれば、早い時期の遺跡があっていいはずなのですが・・・・。もちろん、まだ発見されていないだけなのかもしれませんが。


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参考文献

興亡の世界史05 シルクロードと唐帝国(森安孝夫著・講談社)
中央アジアの歴史 新書東洋史(間野英ニ著・講談社現代新書)
文明の十字路 中央アジアの歴史(岩村忍著・講談社学術文庫)
玄奘三蔵、シルクロードを行く(前田耕作著・岩波新書)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。