セラ寺(色拉寺)

ラサ郊外のセラ寺
河口慧海も学んだチベット仏教の最高学府。
中庭での問答修行も有名です。

2010年5月訪問

写真は問答修行

セラ寺はラサ中心部から北に約8キロのセラ・ウツェ山の麓にあるゲルク派の寺院です。ゲルク派の開祖ツォンカパの弟子のジャンチェン・チョジョ・サキャ・イェシェによって1419年に創建されました。歴代ダライ・ラマが館長となったチベット仏教の最高学府で、地位の高いお坊さんが多いそうです。最盛期には5000人を超える僧侶がいたといわれていて、日本の河口慧海や多田等観がチベット仏教を学んだ場所でもあります。


セラ寺入口



門をくぐると・・・・お寺というより街のようです。


まるで街のように多くの建物が並んでいるのは、セラ寺にはチベット各地からお坊さんが修行に来ているから。ギャンツェやシガツェ、青海省、四川と各地からお坊さんが集まってきていて、それぞれの出身地で住む建物が決まっているのだそうです。


しばらく歩いたら、仏塔にマニ車。お香を焚く場所がありました。




印経院

更にしばらく歩いたら印経院が見えて来ました。左の写真の1階建ての建物が印経院です。

一見、地味な建物ですが、この建物の中には砂曼荼羅が置かれています。

砂曼荼羅というのは文字通り色砂だけで描かれる曼荼羅のこと。
曼荼羅とは仏教の世界観・宇宙観を描いたもので、仏教の密教化の中で生まれたものと言われています。

砂曼荼羅は僧侶の修行の一環として法要の前に造られ、法要が終わると破壊し、川に流すのだそうです。


これが砂曼荼羅。
ガラスケースに入っていたので上の照明が写ってしまったのが残念ですが
本当に綺麗。実に素晴らしい。


砂だけで描かれているなんて、ちょっと信じられない。


曼荼羅の四隅を撮ってみました。カルラ(左下)に獅子(右下)。
   

虎(左下)に龍(右下)
   

これを作るのにどれだけの時間がかかるのでしょうか。
しかも、法要の後は壊して流してしまう・・・というのが凄い。
作ったものに執着しない、無常、・・・そんな修行なんでしょうか。


印経院のそばに立派な建物があって気になったのですが
(後でツォクチェン・大集会堂と分かりました)
ガイドさんに従って先に進みます。
3時から始まる問答修行を見学するため、コースが限定されているみたいです。

少し歩くと岩に仏画が描かれていました。
チベットでは良く見る光景ですが、随分と立派な岩絵です。




河口慧海が学んだハムドン・カンツァンに向います。
坂を上って階段を登って少し小高いところに出ました。
遠くにポタラ宮が見えます。分かるでしょうか。右側の木の後ろです。




ハムドン・カンツァン



ハムドン・カンツァンはセラ・チェ学堂の僧坊の一つで、日本人の河口慧海や多田等観が学んだ場所だそうです。堂内には日本語の説明文と写真も置いてありました。

河口慧海はチベットが鎖国をしていた明治時代に日本人として初めてチベットに入った人物。
仏教の原点を知るため、1897年に日本を出て3年もの歳月をかけて1900年にチベット入国を果たし、ここセラ寺で学びました。
その経験を記した西蔵旅行記も有名です。

多田等観は明治時代、日本でチベット留学生の世話役をしている間にチベット語を習得し、辛亥革命発生後に帰国するチベット留学生とともにチベットに入った人物。河口が日本人であることを偽って学んだのに対し、多田はダライ・ラマ13世からチベット仏教を学ぶように言われてセラ寺で学びます。河口に比べて知名度は劣りますが、チベット仏教学に極めて貢献した人物です。


堂内は薄暗く、多くの仏像であふれていました。

   



問答修行

セラ寺は中庭で行われる問答修行で有名。多くの観光客は、これを見に来るといってもいいかもしれません。3時から始まるということで、その前から場所取りが始まります。時間になると若いお坊さんがたくさん出てきます。

問答修行というのは、簡単に説明すると質問役の僧と、それに答える僧に分かれて問答を繰り広げるという修行。質問役は立って手を鳴らし、大きな動きをしながら質問します。それに対し、座った僧が回答します。質問役の大きな動作が見どころ。

   


どんな内容の問答なんでしょう。結構なごやか。
   
実はイケメンも多い。



チェ・タツァン(セラ・チェ学堂)



問答修行を見た後で、問答修行が行われている中庭に隣接するチェ・タツァンに向いました。ここはセラ寺最大の学堂で、本尊は馬頭観音だそうです。入口には四天王を初めとして、美しい壁画が描かれていました。

チベットの四天王は日本とはちょっと違います。

 白い肌で琵琶を奏でる持国天
 青い肌で剣を持つ増長天


 黄色い肌で勝利の幡を持つ多聞天

 赤い肌で仏塔を持つ広目天



六道輪廻図

お堂の入口に六道輪廻図がありました。

これはチベット文化圏のお寺では必ずお堂の入口に描かれるものだそうです。

仏教では迷いのある者は輪廻転生を繰り返すとされます。
その転生を繰り返す先の世界は天人が住む天道、人間の住む人間道、阿修羅の住む修羅道、畜生の住む畜生道、餓鬼の住む餓鬼道、そして地獄道の6つ。

天人は寿命も長く、苦しみも少ないけれど、煩悩からは解放されておらず、しかも解脱はできません。

これに対し、人間は四苦八苦に苦しみますが、六道の中で唯一解脱の機会を持っています。

修羅道は争いの絶えない世界、畜生道は本能だけの世界、そして地獄は罪を償う世界。

善行を積めば天道に生まれ変わり、悪行を積めば地獄道に落ちる、という内容ですが、天道に生まれ変わることがゴールではなく、この六道から解脱することが本当のゴールというのが仏教の奥深さのような気がします。



ツォクチェン(大集会堂)



自由時間に気になっていたツォクチェン(大集会堂)に行くことにしました。ここはセラ寺で一番大きな建物で、セラ寺の開祖やゲルク派の開祖ツォンカパ大師の像や、永楽帝から贈られた大蔵経などがあるそうです。
既に閉まっていて中には入れませんでしたが、外の壁画だけでも一見の価値あり。実に見事。


ここも入口には四天王が描かれています。



四天王の描かれている壁を横から見てみました。柱や天井も美しい(左下)。
美しい壁画。何を意味するのでしょう。剣と花(右下)。
   


そして、ここにも六道輪廻図が。
こちらの六道輪廻図の方が内容は分かりやすいかもしれません。

最も外側は人間の行い「十二支縁起」。
無知・行・識・名色・六処・触・受・愛・取・有・生・老死。

その内側が「六道」。
天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄
上半分が幸せな転生を表し、下半分が不幸な転生を表します。

その内側は右が地獄に落ちる人間の姿(背景が黒地)、左が天道に行く姿(背景が白地)。

中心は三毒。仏教において人間の諸悪・苦しみの根源とされ、克服しなくてはならないとされる貪(とん 必要以上に求める心・むさぼり)、瞋(しん 怒りの心・いかり)、癡(ち 真理に対する無知の心・おろか)という三つの煩悩をそれぞれ象徴する鳥(貪)、ヘビ(瞋)、豚(癡)が描かれています。

そして、この輪をつかんでいるのは無常を象徴する怪物。

これらが理解できればチベット仏教に近づけるはずなのですが・・・・。
十二支縁起とか、かなり難しいです・・・・。


集合時間が近づいたので、入口に戻ることにしました。

山の上にお堂があります。


セラ寺ができる前から、このセラ・ウツェ山はゲルク派の始祖ツォンカパ大師の弟子たちの修行の場だったそうです。そのころからの修行の場であるセラ・ウツェというお堂(山の名前と同じですね)が山の上に残っていて、今でも修行に使われていると聞きました。あれがそうなのでしょうか。


ツアーで見学が限られてしまったのは残念ですが
セラ寺はとても気持ちのいい場所でした。
清々しくて、静かで。
   


戻る途中にはおとなしい猫さんもいました。
チベットの猫さんは、なぜか、みんなおとなしい。


同じゲルク派のデプン寺が破壊の爪痕が痛々しかったのに対し
ここセラ寺は、本当に気持ちの良い場所です。
お坊さんたちが静かに修行できる環境ができれば良いのですが。


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参考文献

ダライ・ラマの仏教入門(光文堂)
旅行人ノート・チベット(旅行人編集部)
地球の歩き方・チベット(ダイヤモンド社)
週刊中国悠遊紀行 bQ0(小学館)


基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。