デプン寺

ラサ市郊外にあるデプン寺
チベット最大規模の僧院の一つ
岩山の麓に多くの伽藍が並びます。

2010年5月訪問

写真は集会場1階の本尊

デプン寺はラサ市の北西約12キロの岩山の麓にあります。チベット最大宗派であるゲルク派の寺院で、1416年にゲルク派の開祖ツォンカパの弟子ジャムヤン・ジュチェによって創建されました。
ポタラ宮が建てられる前にダライ・ラマが暮らしていた地でもあります。寺院の面積は20万uを越え、最盛期には1万人もの僧がいたと言われています。しかし、文化大革命時に徹底的な破壊が行われました。修復が進められているとはいえ、破壊の爪痕が非常に大きい寺院でもあります。

デプン寺に入ると様々なマニ車がお出迎え。

左下は入ってすぐにあった水力で動くマニ車
下中央は巨大なマニ車1回回すと21万回分の効果があるそうです。
右下は並ぶマニ車とヤク。ヤクはチベットの牛で毛が長いのが特徴。
     


デプン寺は山の麓にあるのですが、少し進んだところで山肌に仏画が見えました。

大きな岩に描かれているのは、ゲルク派の開祖ツォンカパ大師の像。

デプン寺は毎年ショトン祭の時に巨大なタンカが山肌に開帳されることで有名です。この山の斜面にタンカがたらされるとのことでした。

ショトン祭というのはチベット暦の6月30日に行われるお祭りで、ヨーグルト祭とも呼ばれます。

インドで発生した仏教では雨季の間、多くの虫や小動物が発生することから、遊行によって小動物に対する無用の殺生を避けるため、僧達は一か所に定住して修行に励みます。これを夏安居とか雨安居と言い、この夏安居の期間が明ける時期がチベット暦では6月30日とされているのです。この日にヨーグルトがふるまわれることからヨーグルト祭ともいうのだとか。

ショトン祭はチベットで最も重要な祭りの一つとされていて、その開催を告げるのが、デプン寺で山の斜面に巨大なタンカが広げられること。
タンカは長さが80mほどもあるということです。
ここでタンカを拝んでから、人々はノルブリンカでチベット・オペラなどを楽しむということでした。


ツォンカパ大師の岩絵のそばには多くのタルチョ(五色の旗)が捧げられています。




ガンデン・ポタン



デプン寺には多くの建物がありますが、文化大革命の時に徹底的な破壊が行われたこともあって見学できるのはごく一部。まずはポタラ宮ができるまでダライ・ラマの居城でもあったガンデン・ポタン(寝殿)を見学しました。ガンデン・ポタンの外観は白と赤い壁で、ちょっとポタラ宮を思わせる色使いです。階段が面白い。3つに分かれていて左が上る階段、右が下りる階段、真ん中がツォンカパ大師の階段なのだそうです。ツォンカパ大師の階段には綺麗な金色の布がかけてありました。

中に入ると、豪華な玉座が置かれていました。ツォンカパ大師の玉座です。非常に立派。

上にかけてある白いスカーフのようなものはカタと呼ばれるもの。チベット人は高僧の祝福を受ける時に、この白いスカーフを渡し、自分の首にかけてもらいます。仏像や玉座には置くだけ、ということになりますが。

ツォンカパ大師が、ここでお経を読んだということで、周囲には多くのタンカ・仏像そして供え物が置かれていました。

ゲルグ派の開祖ツォンカパ大師は、いわばチベット仏教の宗教改革者です。

チベットに仏教が広まったのは7世紀の吐蕃国の時代。8世紀に国教とされ、9世紀に弾圧された時期はあったものの、11世紀以降復興し、以後、多くの宗派が盛んとなりました。

しかし、セクシュアルな色彩の強い密教によってチベット仏教界は乱れていくことになります。

ツォンカパ大師は退廃した仏教界を嘆き、戒律を重視することを説き、妻帯を禁止し、顕教と密教の位置づけを定める宗教改革を成し遂げました。その後も宗派間の抗争は続きますが、ゲルク派はチベット最大宗派になって行きます。


左下は美しい供え物。なんとバターで作ってあるそうです。
右下は白ターラー菩薩。観音菩薩の涙から生まれた少女の姿の菩薩でチベットで人気があります。
   


ちょっと自信がないのですが、ツォンカパ大師の像。



周囲には多くの仏像や高僧の像が並んでいます。
   

チベットでは写真のように仏像や高僧の像を前面をガラス張りにした箱に入れることが多いです。
厨子って言うんでしょうか。
ちょっと陳列棚が並んでいるような・・・日本とは違う感性ですね。

左下は高僧の部屋、右下は美しい十一面千手観音。
   


興味深い壁画も数多くありました。

右の写真、現地ガイドさんは「ツォンカパ大師の伝説を描いた壁画」としか説明してくれなかったのですが、ちょっと気になる壁画です。

人々がひれ伏して拝む貴人に、雲の上から蓮華が降り注げられているように見えます。これがツォンカパ大師なのでしょうか。ツォンカパ大師は文殊菩薩の化身とされているそうなので、それに関連した伝説なのか・・・。気になる。

チベット仏教の特色の一つとしてダライ・ラマに代表される「転生活仏」という制度があります。
これは本来ならば解脱できるにも関わらず衆生を救済するために、この世への誕生を繰り返すという利他を重視するチベット仏教独自の制度で、高僧が亡くなると生まれ変わりの幼子を探してエリート教育をして後を継がせるのです。

ダライ・ラマは観音菩薩の化身として有名ですが、最初のダライ・ラマの称号は16世紀にモンゴル王によってゲルク派宗主ソナム・ギャンツォに授けられました。ギャンツォは3世で、1世と2世は後から遡って決められたのだとか。

ダライ・ラマの下、ゲルク派は最大宗派に成長し、ダライ・ラマ5世がチベット再統一を果たすこととなります。


ある意味ではゲルク派がダライ・ラマを産み出したわけで
ゲルク派の開祖が非常に敬われているのも納得と言えます。


こちらもツォンカパ大師の壁画


金箔が施されているのでしょうね。綺麗。
ちょっと自信がないのですが、両脇はダライ・ラマ1世とパンチェン・ラマ1世だと思います。
私のメモにダライ・ラマが太陽、パンチェン・ラマが月と書いてあったので、日月の意味もあるのかも。
ダライ・ラマが観音菩薩の化身であるのに対し、パンチェン・ラマは阿弥陀如来の化身。



ここからは特別料金

お坊さんにお金を渡さないといけません。


特別料金を取るだけあって見事
右下は「活仏の部屋」とのことでした。
   
何故か活仏の部屋を撮ったこの一枚だけ写真が白く霞んでいました(右上)。
不思議。やっぱり、何かあるのかなあ。


ずらりと並ぶ掛け軸。高僧が描かれているようです。




ガンデン・ポタンの出口付近に変わった壁画がありました。
黒地に金泥で描かれているのですが・・・

色々な動物だけでなく、カラス天狗みたいのがいるな、などと思ってみていたら

上の方に、なんか気持ち悪い人間みたいなものが・・・


なにこれ?地獄図?気になるんですが・・・・。
先を急ぐガイドさんからは特に説明もなく、立ち去るしかありませんでした。
ツアーだから仕方がないんですが・・・



移動中にいくつもの立派な建物が見えました。
山の麓に広がる一大伽藍といった感じだったんでしょうね。





ロセリン・タツァン

次のロセリン・タツァンは大学だそうです。
デプン寺最大規模の学堂とのことでした。



大学といってもお寺だからか千体仏が凄い(左下)。凄い数でした。
乾隆大蔵経がずらりと並んでいるのはさすが(右下)。
   



この後、再び移動したのですが、ところどころ工事中で非常に足場が悪い。
文革で壊したのを建て直してる(修復している)そうですが、最初から壊さなければいいのに。
工事中の所を迂回したりしているうちに、どう歩いてきたのか分からなくなりました。
   


前方に修復中とはいえ、かなり立派な建造物が・・・。

これを見るのかと思ったら、更に移動。



どこに行くのかと思ったら、お寺の大調理場だそうです。
最盛期には1万人の僧侶がいたというデプン寺。その食事を作っていた場所です。
大きな釜やら、何やらがたくさん。
実は左下の写真では釜の上で猫が寝ています。暖かいのでしょうね。熟睡中。
   

この大調理場、文革の時には倉庫として使われていたのだそうです。

大調理場を出て足元を気にしながら工事中のところを歩いていたら、大きな建物に横から入りました。
さっきの立派な建物??



ツォクチェン(大集会殿)

ツォクチェンは延床面積4500uという巨大な建物です。
本殿は3階建て、183本の柱に支えられているとか。
文化大革命の時に最も徹底的に破壊された建物の一つで30年かけて修復中とのこと。

写真は1階の大集会場。かなり広い。全体は写真に収まりません。
ヤクの毛の絨毯が敷かれているそうです。


ツォクチェンのメインは2階にある「見ただけで解脱できる」と言われる弥勒仏。高さが15mもあるそうですが、残念ながら2階は工事中ということで立ち入ることができませんでした。見学できるのは1階だけ。1階では毎朝600人の僧侶がお経を唱えているのだそうです。上の写真のように600人の僧侶たちが座る空間が大部分を占めているので、端を観光するという形になります。


左下 角度を変えて僧侶たちが座る場所を撮ってみました。天井とか、かなり綺麗です。
右下 女人禁制の場所。聞いたところでは怖い顔の吉祥天が置かれているとのこと。

   


堂内は他のチベット寺院でも見られたような棚に入った仏像や高僧像がずらり。

大きな立派な仏像の前に来ました。1階の本尊のようです。



メモを取っていたのですが仏像が多すぎて、よく分からなくなってしまいました。
綺麗な仏様です。印相からすると弥勒菩薩かなあ・・・。自信ありません。
光背もとても美しい。良く見ると上の方にはガルーダみたいのもいます。



こちらも立派。


たぶん釈迦如来像で両脇はダライ・ラマ3世・4世だと思います。

他にもツォンカパ大師とダライ・ラマ13世や16羅漢像などもありました。



堂内は薄暗いのですが、よく見たら壁画も素敵。
美しい。観音でしょうか。



こちらは、いかにもチベット風の憤怒仏。人を踏みつけ、頭には骸骨を付けています。
右下にあるのは何だろう・・・。



見ていて楽しい。
空を駆ける馬。
男女が抱き合う父母仏(歓喜仏)も描かれています。
   

これらの壁画も修復されたものなのでしょうか。



横から外に出ました。この立派な建物が今までいた建物かな・・・?





デプン寺の観光はこれにて終了。
あとは歩いて戻ります。

途中、多くの建造物がありました。
工事中のところも多い。

   


山の斜面に建つ多くの伽藍。
工事現場のようになっているのが哀しい。




なんで、こんなに凄いものを壊すのかなあ。
いつか元の姿に戻るんでしょうか



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参考文献

旅行人ノート・チベット(旅行人編集部)
地球の歩き方・チベット(ダイヤモンド社)
週刊世界遺産 bU2(講談社)
週刊中国悠遊紀行 bQ0(小学館)


基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。