ケルアン(カイラワーン)

チュニスの南約165キロの内陸部に位置するケルアン
北アフリカの聖都とも言うべき古都です。
アフリカ最古のモスクとアフリカで最も美しい霊廟があります。
2010年12月訪問

写真はグランド・モスク


ケルアンはウマイヤ朝によるマグレブのアラブ化のため派遣された総督ウクバ・イブン・ナーフィがビザンティン軍を破って7世紀に建設した街です。その後、9世紀にアグラブ朝の首都とされ、10世紀にはファティマ朝、11世紀にはジール朝の首都として栄えました。その間、アフリカ最古のモスクが築かれ、アフリカで最も美しいと言われる霊廟も建てられます。
11世紀にベドゥインの侵入により、首都はチュニスに移されますが、その後も北アフリカきっての聖都として今でも多くの巡礼者を集めています。


シディ・サハブ霊廟

シディ・サハブ霊廟は旧市街の西側にあります。


シディ・サハブ霊廟のシディとは「聖人」、サハブとは「友人」を意味します。ここはムハンマドの友人で床屋だった人物の霊廟で、バルバリエ(床屋)のモスクとも呼ばれます。
7世紀に建てられ、17世紀にモスク・神学校・ミナレットなどが増築され、現在の姿になったもの。外見は一見地味ですが、中に入ると美しいアラベスク模様に驚きます。

中庭を取り巻く回廊の美しいアラベスク模様。
   

余りに綺麗なので色々撮ってみました。
     


17世紀に建てられたドームは石膏とセラミックが美しい(左)。
ステンドグラスもはめ込まれていて、割礼に人気の場所だそうです。
右下は霊廟。観光客は中に入れませんが、外から覗くと凄い綺麗(右)。
真ん中の丸いのがお墓だそうです。
   



貯水池

街の北には9世紀アグラブ朝の時代に造られた貯水池があります。
大きい物なので階段を上がって、上から見学です。


写真では1つしか写っていませんが、大小4つの貯水池が残っています。かっては大きな貯水池が7つ、小さな貯水池が7つ、合計14の貯水池があったとか。
ケルアンは年間降水量が600oという乾燥地帯であるため、36キロ離れた山から水を引いたというもので、当時の世界最高技術のものだそうです。
地球の歩き方には今もケルアン市民の重要な水源になっていると書かれていますが、現地ガイドさんによると実際は観光用で使われていないのだとか。貯水池の周囲には観光客用のラクダなどが、いい商売をしています。



グランド・モスク

グランド・モスクは城壁に囲まれたメディナ(旧市街)内にあります。

ここはアフリカで最初に造られたモスク。

ビザンティン軍を670年に破ってケルアンの街を建設したウクバ・イブン・ナーフィが、672年に建てたのが始まりです。

このモスクに7回訪れると、メッカに1回参拝したとの同じになるそうで、現在も多くの巡礼者が集まるということでした。

現在のモスクは9世紀に再建されたものですが、四角いミナレットは古い時代の姿を残すもので、ミナレット下部の大きな石は7世紀のものだそうです。
ミナレットの高さは31m、128段の階段があるということでした。

中庭には大理石が敷き詰められ、わずかに傾きがあるのは地下の貯水池に水を貯めるという工夫がなされているから。

このモスクを建設するに当たっては、近くにあるローマ遺跡の柱などが使用されました。

いくつもの遺跡から持ってきたのか、柱はコリント式・イオニア式の柱が混じっています。


中庭から見た礼拝堂。柱が見事。



礼拝堂への入口のドアはレバノン杉(左)。実に見事です。
礼拝堂内部、柱が実に見事。荘厳な雰囲気(右)。
   


中庭には日時計もあります。礼拝の時間を決めるため9世紀に作られました。




メディナ

14世紀に作られた3、5キロの城壁に囲まれたメディナ(旧市街)。
チュニス門からショハト門の間には多くの店が並びます。
   


ラクダが水を汲み上げる聖なる井戸、ビル・バルータ。
目隠しされたラクダが井戸の周囲を廻ると水が汲み上げられる仕組みです。
この井戸はメッカに通じているという伝説があるとか。



民家の多くは白い壁に青い装飾を施した美しい作り。
売られている絨毯や色とりどりの皿と相まって美しい街並みを作っています。
   


ケルアンは余り大きくはありませんが綺麗な街です。
グランド・モスクは素晴らしかったですが、どれだけのローマ遺跡が破壊されたのか・・・
シディ・サハブ霊廟は本当に美しかったです。


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参考文献

世界遺産を旅する2(近畿日本ツーリスト)
21世紀世界遺産の旅(小学館)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。