カカシュトラ

メキシコシティから車で約2時間
プエブラ郊外の小高い丘の上にカカシュトラ遺跡はあります。
なぜか日本では余り知られていませんが、素晴らしい壁画に驚かされます。

2003年1月訪問


カカシュトラは全く事前情報のない状態で訪れました。日本では、ほとんど知られていない遺跡だと思います。しかし、保存状態の良い壁画は素晴らしいの一言。なぜ、日本で知られていないのか、不思議なほどです。
この遺跡はテオティワカンが滅んだ後、メキシコ湾岸地帯から移住した人々によって8世紀から9世紀ころに築かれたものと言われています。彼らはオルメカの末裔(オルメカ・シカランカ)という説もあるようですが、描かれている壁画はマヤのもの。メキシコ中央高原にマヤの人達が移住したのか、それともマヤの工人の手になるものなのか。 



写真で分かるように、遺跡全体に屋根がかけられています。この屋根は、壁画保存のため日本のJICAが協力して作ったものだそうです。

遺跡入口に入ると、左手に神殿の基部のようなものが見え、ガラスケースで厳重に保護されているのが目に付きます。

このガラスケースで保護されているのがカカシュトラで一番有名な壁画。戦闘シーンが延々と描かれており、ジャガーの戦士と鷲の戦士の戦いの場面とも、昼と夜の戦いとも、マヤの生死観を表現したものともいわれているようです。残虐な戦闘シーンながら、マヤブルーと呼ばれる青が大変美しい。ただ、ガラスで保護されているため、写真は大変撮りずらく、2003年1月当時はデジカメなど持っていなかったので、余り綺麗に撮れなかったのが残念。大きめの写真で紹介します。


黄色に黒の斑点のついた衣装がジャガーの戦士。鷲の戦士は青い鷲の頭飾りを付けています。


戦闘はジャガーの戦士が優勢のようです。鷲の戦士は打ち倒されています。


中央に青い鷲の頭飾りを付けた鷲の戦士


倒れた戦士には内臓のようなものが描かれています。


青も美しいのですが、白や黄色の使い方も効果的。



少し保存状態が悪いところもありますが・・・戦闘シーンは延々と22mも続きます。



実はこの遺跡自体の保存状態は余りよくありません。下の写真を見てもらうと遺跡全体の雰囲気がなんとなく分かるかと思います。それなのに、所々に残る壁画の保存状態は余りに見事です。なぜ、こんなに見事に壁画が残っていたのだろう・・。本当に奇跡としかいいようがありません。

マヤブルーだけでなく、わたしには赤も印象的でした。たとえば下の写真には、階段の横に描かれているとうもろこしと神官、それに雨神としての蛙の壁画が写っているのですが、赤の鮮やかさが目を引きます。



2003年に訪れた時点では遺跡内は定められた通路を移動しながら見学する形になっていて壁画に自由に近寄ることはできませんでした。必死に望遠で撮ってみましたが、私のカメラだとこれが限界。現地ガイドさんから人物像は神官と聞きましたが、最近出た本では「4のシカ」という名の交易商人または交易神と説明されていました。人物の後ろにあるのは品物の荷なのだそうです。




他の蛙とトウモロコシ。
これは近くで見れました。
トウモロコシからは人間の顔がいっぱい出ています。



次の壁画も見事でした。入り口を挟んで左右に人物(神?)が向かい合うように描かれています。




ここも近寄れないので、必死に横から撮ってみました。
(前にある壁が邪魔で上手く撮れない・・・)
壁の横も綺麗に描かれているし、後ろの壁にも何か描かれていたらしいのが分かります。



なんて美しい壁画なんでしょう。

近寄れなかったのが残念ですが
2014年3月メキシコシティの国立人類学博物館でレプリカを間近で見ることができました。
見比べた方がオリジナルが分かりやすいかもしれないので並べてみます。

   左側の壁画

下はレプリカ

黄色に黒の斑点がある衣装です。
おそらくジャガー


衣装だけでなく、頭飾りもジャガーのようです。
しかも、人物が乗っている蛇?もジャガー柄

両手で持っているのは何なのでしょう。
レプリカを見ると水滴のようなものが落ちています。


右側の壁画 

下はレプリカ


鳥のような頭飾りから顔を出しています。
足は鳥のようです。
肩には羽根のような飾りをつけています。

乗っているヘビはケツァルコアトルでしょうか。
羽毛が生えているようです。
美しいケツァル鳥も飛んでいます。
手に持っているのは何でしょう・・・・
ヘビのように口を開けてる?
 

これもジャガーと鷲のモチーフなんでしょうか。

蛙とトウモロコシの壁画もそうでしたが、壁画は額縁のように縁取りが描かれています。

ともかく美しい。



他にも、遠くに、あ、あそこにも壁画が!状態
しかし、望遠で撮るにも限界が・・・



やはり遠くから撮った写真
騒いだら、金星・ケツァルコアトルだと説明してくれました。
小さく、ぼんやりですが、なんとか写った。
近くで見たい。



今でもここまで美しい壁画
往時はどんなに美しい場所だったのでしょうか。
マヤの美意識、おそるべし。



遺跡には柱の跡や、格子模様の壁?も残っています。
   


柱に残るレリーフ。
人物の足元部分だけが残っていました。




ともかく素晴らしい壁画。
近くで見学できるようになったら、また是非行きたい遺跡です。



中米の遺跡に戻る





参考文献

古代マヤ・アステカ不可思議大全(草思社 芝崎みゆき著)

他には全く文献が見当たりませんでした。
基本的に現地ガイドさんの説明に基づいてまとめてあります。