エローラ(カイラーサ・ナータ寺院)

インド西部にある石窟寺院エローラ
7〜10世紀に建てられた仏教・ヒンズー教・ジャイナ教の石窟寺院が34も残っています。
最大の見どころは、やはりなんといってもカイラーサ・ナータ寺院。
2001年5月、2006年1月

写真は岩山から彫り出された第16窟カイラーサ・ナータ寺院


エローラは見どころが多いので、カイラーサ・ナータ寺院とジャイナ教・仏教寺院で分けました。
ジャイナ教・仏教寺院はこちら→エローラ(ジャイナ教・仏教寺院)


第16窟カイラーサ・ナータ寺院

エローラで最も有名なカイラーサ・ナータ寺院はヒンズー教のシヴァ神の寺院。「カイラーサ」というのはシヴァ神の住居と言われるヒマラヤの聖山の名前です。

地上から見たとき、この寺院は巨大で壮麗な建築物にしか見えません。しかし、実際は全て岩山から彫り出されたというか、彫り残して作られたもの。一つとして石を組んだものはないそうです。裏山に登ると、「彫り出された」というのが実感できます。崖のようになっているのは、職人達が彫り出した跡なのです。

写真は寺院前方から撮ったもの(2006年1月)


カイラーサ・ナータ寺院は楼門・ナンディー堂・拝殿・本堂(祠堂)という4つの部分から構成されています。上の写真の手前に写っているのが楼門、その奥にナンディー堂・拝殿・・・と続きます。
大きすぎて、写真に全景が収まりません。彫り出された間口は47m、奥行は81mにもなります。

両脇にある幢柱は17mあり、これも岩山から彫り出されたものだそうです。凄いですね。

この寺院は8世紀にラーシュトラクータ王朝のクリシュナ1世王の命令で着工されたもので、現地ガイドさんによると職人たちが7代に渡って従事し、220年以上かかって完成したのだそうです。


こちらは寺院後方から撮ったもの(2001年5月)。大きく写っているのが、一番奥の本堂(祠堂)頂上部分。高さは33m。その手前が拝殿の屋根部分。更に、その手前にある小さいのがナンディー堂の屋根部分になります。





楼門正面。




楼門の周囲の外壁にはヒンドゥーの神々のレリーフがびっしり(左下)
そして楼門から入ると正面で出迎えてくれるのがラクシュミー女神のレリーフ(右下)。
   


ラクシュミーのレリーフから左に折れるとカイラーサ・ナータ寺院が迫ってきます。

   

入口付近は多くの人で賑わっていました。そして、鼻が折れた象の彫刻と幢柱。どちらも岩山から彫り出されたもの。象と幢柱は右側にも同じようにあります。


象の奥は2階建ての石窟のようになっていますが、この石窟の中には3体の女神像が彫られています。インドの主要な川の女神なんだそうです。

   

この石窟から始まって岩肌の側面に寺院を囲むように回廊が造られ、多くの神像で飾られています。


拝殿に入る前にぐるりと一周

 一番奥の本殿(祠堂)を取り囲む塔堂
 拝殿


拝殿に入っていくと、奥まったところにシヴァ・リンガが置かれています(左下)。
この拝殿の天井には、かすかに天井画も残っています(右下)。

   


拝殿を出たところ。レリーフが美しいです。
屋根部分の細かいレリーフも美しいですが、壁の飛天も印象的。




シヴァ・リンガの置かれているところは2階部分にあたり、拝殿を出ると橋の様な通路を通って、ナンディー堂に行くことができます。写真は上から見た拝殿とナンディー堂。右の屋根の庇のようなものがあるのが拝殿、左がナンディー堂です。ナンディー堂の両脇に石の柱・幢柱が立っています。




ナンディーというのは聖なる牛のこと。ヒンズー教の神様は、それぞれ乗り物を持っていて、シヴァ神の場合はナンディーがそれにあたります(ちなみに、ヴィシュヌ神の乗り物がガルーダ)。


ナンディー堂には、ナンディーの像がぽつんと置かれていました。
頭は取れちゃってるんでしょうか。

このナンディー堂からは楼門に出ることができて、高い場所から寺院を見ることができ、写真ポイントの一つになっています。

冒頭の写真は、ここで撮ったもの。

寺院の裏山からの眺めも見事ですが、寺院内の近いところからの眺めもかなりのものです。

どちらも足元には要注意ですが。


地上に戻って寺院内を見て回りました。

建物の壁面も見事です。ところどころ色彩が残っていますね。





柱のレリーフなど非常に繊細。





外壁のレリーフではラーマーヤナやマハーバーラタ(右下)が有名。結構、細かいです。
右下はシヴァと妻パールヴァティーに嫉妬して(シヴァの住居である)カイラーサ山を持ち上げる魔王

   



堂の基壇部分は象が支えていました。
世界を支える象なのだそうです。





寺院を取り囲む回廊部分も、余裕があったら見てみたいところ。ここには大きなレリーフがいくつも彫られています。
それに、入口から見て右手の回廊部分は、2階・3階と登ることができて、そこからは寺院の細かい装飾がよく見えます。拝殿の壁の細かいレリーフなど回廊2階部分から出ないと撮れません。
ただ、登っていく階段は真っ暗なので、懐中電灯が必要です。石窟寺院観光の必需品ですね。

   


最後に本堂(祠堂)。実に美しい。
元々は後ろの岩山の一部だったなんて信じられないですね。
まさにインドの至宝です。




裏山に登らないとカイラーサ・ナータ寺院の魅力は半減です。
しかし、足元は決して良くないですし、手すりもなにもありません。
しっかりした靴で備えてください。特に左側は滑りやすく危険です。



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参考文献

ユネスコ世界遺産5(講談社)
世界遺産を旅する8(近畿日本ツーリスト)
インド神話入門(新潮社 とんぼの本 長谷川明著)

基本的に現地ガイドさんの説明に基づいてまとめています。