大チョーラ朝寺院群2

チョーラ朝寺院というとブリハディーシュワラ寺院が有名ですが
2004年に世界遺産に追加登録された2つの寺院をご紹介します。
日本ではほとんど知られていませんが、どちらも見事な寺院でした。
2010年8月訪問。


ガンガイコンダチョーラプラム



ガンガイコンダチョーラプラムという舌をかみそうな名前は「ガンジスを征服したチョーラ朝の都」という意味です。ここは一時期チョーラ朝の都が置かれ、チョーラ朝の最盛期を築いたラージャ・ラージャ1世の子であるラージェンドラ1世が11世紀中ごろに建てたシヴァ寺院があります。
チョーラ朝寺院はラージャ・ラージャ1世がタンジャヴールに建てたブリハディーシュワラ寺院が1987年に最初に世界遺産に登録されましたが、2004年にチョーラ朝寺院群として、この寺院とアイラーヴァテシュワラ寺院が世界遺産に追加登録されました。

この寺院も正式にはブリハディーシュワラ寺院と言いますが、ラージャ・ラージャ1世が建てた寺院と区別するため、ラージェンドラ1世の名前をとってラージェンドラ・チョーリーシュワラ寺院とも呼ばれています。

紛らわしいので、以下、ラージャ・ラージャ1世の建てた寺院をブリハディーシュワラ寺院、このラージェンドラ1世が建てたこの寺院をラージェンドラ寺院と呼ぶことにします。

入口を入ると、まず巨大な白いナンディのお尻が目に入ります。

ナンディの先にあるのが本堂。
ブリハディーシュワラ寺院の小型版といった印象です。
ラージェンドラ1世は父王に敬意を示すため、父王の築いたブリハディーシュワラ寺院より小さな寺院を建てたのだそうです。

そうはいっても本殿の屋根の高さは55mもあります。

ナンディも巨大ですよね。

巨大なナンディだけでなく、巨大な獅子もありました。
人の大きさから、その巨大さが分かると思います。




本堂には信者以外入ることはできません。
しかし、本堂入口付近にも小さなナンディがあって、巨大ナンディ像とのツーショットがかわいい。




中に入れないので外から観光です。

前殿の壁には壁龕に神々の彫刻が彫られていました。
表情の温和さはチョーラ朝の特徴のような気がします。
写真左下はシヴァ神と神妃の合体像。右半身が女性の姿になっています。

   


踊るシヴァ神。かすかに色が残り、周囲のレリーフも見事です。




本殿の屋根をアップで撮ってみました。
下の方には結構鮮やかな色が残っています。彫刻もびっしり。




ラージェンドラ寺院がブリハディーシュワラ寺院の小型化されたものと評されながら世界遺産に追加登録されたのは、その完成度の高さからということです。

確かにブリハディーシュワラ寺院に比較すると外壁の装飾などが華やかです。

   


ブリハディーシュワラ寺院と比較すると小さいのかもしれませんが
かなり大きく、レリーフも美しい寺院です。
何より周囲が芝で整備され、とても気持ちのいい寺院でした。




アイラーヴァテシュワラ寺院

ダーラスラムという町にも世界遺産に登録された寺院があります。
アイラーヴァテシュワラ寺院です。



アイラーヴァテシュワラとは「白い象の山車のシヴァ」という意味だそうです。この寺院は12世紀半ばにラージャ・ラージャ2世によって建てられた寺院で、チョーラ朝寺院の中でも美しさがぴかいちということから世界遺産に登録されたのだそうです。

この寺院は名前のとおり山車をかたどった寺院なのだそうです。本殿に昇る階段には車輪を引く象のレリーフが彫られていました。寺院に車輪をつけて象が引く、という意匠なのでしょう。

本堂に昇る階段。綺麗です。




本堂に昇る階段を正面から撮ってみました。本堂は壁のない開放的な造りです(左下)。
本堂の外側の柱に彫られているのはヤーリーという想像上の動物(右下)。
ヤーリーはライオン・象・ワニ・牛・ワシという5つの動物のMIXなのだそうです。

   


天井のレリーフも見事です。実に繊細な寺院ですね。




柱のレリーフも綺麗。レリーフには幾つかのパターンがあるようです。

   


ナンディが置かれていました。柱のレリーフの規則性や天井の美しさも分かりやすいかと思います。




アイラーヴァテシュワラ寺院は開放的な前殿、壁のある前室、シヴァ神を祀る本殿という構造になっています。柱の美しい開放的な空間は前殿にあたり、奥に前室・本殿と続いているわけです。

下の写真は本殿の裏から見たところ。
壁のある本殿と前室の外壁は美しい彫刻などで飾られています。




外壁には美しい彫刻だけでなく、ところどころに色も残っていました。

   


壁画も残っていました。かってはかなり華やかに彩られていたのでしょうね。

   


階段のレリーフには山車を引く象以外のものもありました。
左下の象を飲み込むライオンは仏教をヒンズーが追い払ったことを示しているのだそうです。

   


基壇部分のレリーフにも面白いものがあります。
左下の踊り子は左右と上に足が6本あります。動きの激しさを表現しているのでしょうか。
右下は妊婦と助産婦だそうです。

   



寺院の入口は小ぶりの塔門になっています(左下)。
面白いのは周壁。壁の上に何か載ってると思ったら、ナンディでした(右下)。

   


実に美しく見どころの多い寺院でした。
世界遺産に追加登録されたというのも納得。
おそらく日本では余り知られていない寺院だと思いますが
小さな町に素晴らしい世界遺産があるというのがインドの奥深さでしょうね。



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日本では余り知られていないようで、ほとんど文献がありませんでした。
現地ガイドさんの説明に基づいてまとめています。