大チョーラ朝寺院
ブリハディーシュワラ寺院

中世南インドを支配したチョーラ朝
チョーラ朝寺院の最高傑作とされるのがブリハディーシュワラ寺院です。
チョーラ朝の寺院として最初に世界遺産に登録されました。
2010年8月訪問

写真は本殿とナンディ堂


タンジャヴール(タンジョール)は、9世紀から13世紀にかけて南インドを支配したチョーラ王朝の都だった街です。チョーラ王朝はパッラヴァ王朝(マハーバリプラムの海岸寺院等を築いた王朝です)を9世紀に滅ぼし、11世紀にはデカン・タミル地方を支配する大勢力となりました。

11世紀のラージャ・ラージャ1世の時代には最盛期を迎え、南インドだけでなくスリランカをも支配し、東南アジアとの交易で栄えました。

そのチョーラ王朝最盛期の王ラージャ・ラージャ1世が築いた大寺院がプリハディシュワラ寺院です。

シヴァ神を祀るこの寺院は、その巨大さでインドでも群を抜いています。

寺院の境内は約2万9000u。
本殿の高さは約63m。
当時、世界で最大級の建造物でした。

本殿にはインド最大の4mものシヴァ・リンガを置き、本堂の前に建つシヴァ神の乗り物ナンディ(聖牛)もインド最大級の大きさ。

大きさを追求した寺院とも言えます。
当時、王は神と同一視され、寺院の大きさは王の権威の大きさを示すものでもあったそうです。

寺院は周壁で囲まれ、入口を抜けると、その先に第1の塔門(ゴブラム)があります。

この塔門も約20mの高さ。

入口は比較的シンプルですが、上にはシヴァ・ファミリーが彫られていました(左下)。
中央にはシヴァ神と妻パールヴァティ、左にガネーシャ、右にスカンダ。
塔門にはびっしりと神々が彫られています(右下)。
シヴァやクリシュナが彫られていました。
   


最初の塔門を抜けると、再び塔門が現われます。
最初の塔門よりは、やや小さな塔門ですが、こちらも彫刻がびっしりです。
入口の左右には巨大なドゥヴァーラバーラ(守門神)。
屋根に彫られたガネーシャや象に乗るインドラ神などが印象的でした。





この2つ目の塔門の前で靴を脱がなくてはなりません。
靴置き場に靴を預けて、2つ目の塔門をくぐると本堂や多くの祠堂が現われます。



写真左が本堂。中央がナンディ堂。右はパールヴァティ堂。
境内が広すぎて、写真ではちょっと建物の大きさが分かりにくいですが、ともかく大きい。


ちょっと角度を変えて本堂とナンディ堂を撮ってみました。





ナンディ堂

ナンディはシヴァ神を祀る本堂を向いています。高さ3m、長さ6m。
インド最大のナンディは25トンもある1つの岩から彫られているそうです。
柱や天井も綺麗。

   



本堂



ブリハディシュワラー寺院は入口から前殿、前室、本殿という構造になっています。前殿は第1室と第2室からなり、第1室は柱と柱の上の獅子が綺麗でしたが、第2室は未完成となっています。
前室は前殿と本殿をつなぐもので左右に出入り口があり、その奥が4mのシヴァ・リンガを置く本殿。寺院内部は写真撮影禁止ですし、本殿内部はヒンズー教徒以外は入れません。しかし、本殿入口は開いているので巨大なシヴァ・リンガを見ることはできます。信者しか入れない奥にはダンシング・シヴァがあるそうですが、さすがにこれは見えませんでした。

本殿の屋根は高さ約63mと創建当時世界最大級の建造物であったことは既に述べました。上には巨大なドームが載っていますが、これは80トンもあるとのことで、どうやって屋根の上に置いたのか議論があるそうです。ドームの上に黄金に輝いている丸い飾りは純金製だそうです。


入口付近のレリーフ。
インド特有の妖艶さが見られず、柔和な表情が印象的。

   


本堂から時計回りに散策してみました。
寺院の外壁には、かすかに色も残っています。

   



本殿を下から見上げてみました(左下)。
入口方向を見ると前殿の大きさがよく分かります(右下)。

   

屋根は水平層が13段重ねられています。
シヴァ神の住居であるヒマラヤのカイラーサ・ナータ山を模したものなのだそうです。



ガネーシャ堂

本堂の左後方に小さな堂があります。
覗いてみたら、見事なフラスコ画が残っていました。
右下の孔雀に乗っているのはスカンダ。

   



スカンダ堂

本堂の右後方に、かなり立派な建物がありました。

   

ガイドさんによると、これはスカンダ堂だそうです。シヴァ神の子供としてはガネーシャが有名ですが、スカンダもシヴァの子供とされ、南インドでは人気があります。特にブリハディーシュワラ寺院のあるタミルナードゥ州ではムルガンという戦いの神と同一視され、現在も多くの信者がいるのだとか。
大きさこそ本堂にかないませんが、繊細な美しさという点では、このスカンダ堂の方が見事といってもいいと思いました。

入口の階段のレリーフも見事です。




スカンダ堂の前殿と思われる建物です。柱が見事なので近寄ってみました。
中には入れないのですが覗いてみたら余りに色鮮やかで美しいのにびっくり。凄いです。

   



回廊

寺院を囲む周壁は回廊になっていて、信者が奉納したリンガが並んでいます。
壁画は16世紀のものということですが、創建当時の古い壁画も見つかっているそうです。

   



パールヴァティ堂

本堂の周りをぐるりと回って、本堂の右隣にあるパールヴァティ堂に来ました。
パールヴァティはシヴァ神の妻です。
ここも美しい。入り口の柱からして見事です。

   


この堂は現在も信仰の対象となっています。
柱などに残る色が、なんとも言えない雰囲気を出しています。




柱にあった女性像。長い髪には意味があるのでしょうか。
柱や天井・壁の色が綺麗。

   


巨大な本堂と美しい周囲の堂。
南インドの世界遺産は、余り日本では知られていませんが凄いです。
チョーラ朝の世界遺産は他にもあるので別にまとめました。

大チョーラ朝寺院群(アイラーヴァテシュワラ寺院等)



南アジアの遺跡に戻る



参考文献

世界遺産を旅する8(近畿日本ツーリスト)

現地ガイドさんの説明をもとにまとめています。