カジュラーホ

インド中部の小さな町カジュラーホ
官能的な彫刻で有名な世界遺産ですが
寺院建築の見事さも見逃せません。
2005年12月訪問

写真はラクシュマナ寺院のミトゥナ(男女交合)像


カジュラーホは今ではインド中部の小さな村ですが、10世紀から13世紀にかけてチャンデッラ王朝の都として栄えました。チャンデッラ王朝の最盛期には80を超える寺院が造られたということですが、14世紀にイスラムに支配されるようになってからは多くの寺院が破壊され、残った寺院も森林に覆われ、19世紀初頭に発見されるまで人々から忘れ去られていたということです。

現在は25の寺院が残るだけですが、寺院を飾る上の写真のような官能的な彫刻と、寺院の本殿の屋根(シカラ)の見事さで多くの観光客を集めており、小さな町にも関わらず飛行場まであります。1986年に世界遺産に登録されています。


西の寺院群

カジュラーホの寺院は村の西・東・南に分散していますが、最も見ごたえがあるのが西の寺院群です。
現在は遺跡公園のように整備されていて、多くの寺院が残ります。

ラクシュマナ寺院



ラクシュマナ寺院は10世紀半ばにラクシュマナ王が建立したヴィシュヌ神を祀る寺院で、本殿とその四方に祠堂が配されています。
このラクシュマナ寺院は、本殿を飾るレリーフと、寺院の基壇部分のレリーフに優れたものが多いことで有名です。特に本殿は最初の写真のようなミトゥナ像だけでなく、美しい女性の像が多く彫られています。女性像のしなやかさが凄いですね。

   

今は博物館に収められている有名な恋文を書く女性もここを飾っていました。
化粧をする女性の姿もいくつも彫られています。




基壇部分には18歳未満お断りにした方がいいのではないかと思われるレリーフが残っています。世界遺産ですから載せてしまいますが、いいんでしょうか。




カジュラーホの寺院に男女の交合像(ミトゥナ像)が多いのは、性の営みが神聖なものとして真剣に考えられていたから。神的意識を獲得するために、性的儀式が行われたとのことで、このミトゥナ像は真面目な信仰の現われなのです。そのため、どこまでも堂々としていて陰湿な感じが全くありません。
正直なところ、これらのレリーフの前では観光客が大盛り上がりです。現地ガイドさんの説明も爆笑ものだし、レリーフ自体、どこかユーモラス。それに世界各国から観光客が来ていますが、おじさんたちが大喜びする様子が万国共通なのも別の意味で笑えます。



ガンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院



ラクシュマナ寺院と並ぶ見どころがガンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院です。シヴァ神を祀る寺院で、隣には同じくシヴァ神を祀る小さな祠堂・マハーデーヴァ寺院、更にその隣にはシヴァ神の妻パールヴァティを祀るデーヴィー・ジャグダンベ寺院が並びます。
上の写真の左からガンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院、マハーデーヴァ寺院、デーヴィー・ジャグダンベ寺院。

ガンダリーヤ・マハーデーヴァ寺院を横から撮ってみました。



カジュラーホが世界遺産に登録されたのは、この寺院があってこそ、と言われています。インドの寺院建築には北方型と南方型がありますが、この寺院は北方型の最高峰と言われています。

寺院は高い基壇の上に建てられていて、階段をあがると玄関があり、その先に回廊を巡らした広間、拝殿、そして一番奥に本殿という構造になっています。本殿の屋根をシカラと呼び、このシカラが水平層を重ねた形になっているものを南方型、砲弾のような形になっているものを北方型といいます。デカン高原のパッタダカルでは南方型・北方型の原型を見ることができますが、そこでは本殿の屋根のみを飾り、高さもそれほどではなかったのに、ここでは本殿のシカラは砲弾型というよりトウモロコシ型に成長し、しかも高さは31m。その上、本殿のシカラを取り巻くように多くの小さなシカラが並び、玄関の屋根まで連なっており、とてつもないエネルギーと躍動感に満ちています。

この寺院はシヴァ神の住むヒマラヤのカイラーサ・ナータ山を模したものなのだそうです。連なる屋根がヒマラヤの山々、本殿の高いシカラがヒマラヤにそびえるカイラーサ・ナータ山なのでしょう。


下から見上げるシカラは圧巻です。




寺院の壁は数えきれないほどのミトゥナ(男女交合像)で埋め尽くされています。
いったい何人いるんでしょうか。なんとも言えない凄いエネルギー。

   



隣接するマハーデーヴァ寺院(左の小さい祠堂)とデーヴィー・ジャグダンベ寺院(右)。




西群には他にも多くの寺院があります。
左下はヴィシュヌワータ寺院とナンディー堂。
右下は・・よく分からなくなってしまいました。遺跡公園内には10を超える寺院があります。

   



東の寺院群

村の東には、いくつかのジャイナ教寺院があります。

     


寺院の数は少ないですが現在もジャイナ教徒が信仰していて、入口には宿坊のようなものもあります。こちらは観光客も少なくて、静かな雰囲気。

見どころはジャイナ教24人の祖師を祀るパールシュヴァナータ寺院。西の寺院群の寺院と比べると、ずっと小ぶりですが、ここもレリーフが素晴らしいです。
左下のように全裸で直立する祖師といったジャイナ教独特の彫刻があり、間違いなくジャイナ教寺院なのですが、優美な女性像などが見られます。

   

ここには西の寺院群のようなミトゥナ像は見られません。しかし、下のヴィシュヌ神とラクシュミー女神の像でヴィシュヌ神が女神の胸を愛撫しているといったように、西群とは違うエロティシズムがあります。むしろ、こっちの方がい色っぽいかも・・・。化粧する女性像なども見事です。





私のカジュラーホ観光は半日で駆け足だったのが残念。
できれば1日ゆっくりと見たい遺跡です。
ミトゥナ像だけでなく、寺院建築の素晴らしさが記憶に残りました。



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参考文献

ユネスコ世界遺産D(講談社)
世界遺産を旅する8(近畿日本ツーリスト)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。