ボロブドゥール周辺

ボロブドゥールの付近に、チャンディ・パオン、チャンディ・ムンドゥという仏教寺院があります。
この2つの寺院、実は、かってはボロブドゥールと参道でつながっていたといわれるもの。
どちらもボロブドゥールと同じシャイレーンドラ王朝によって築かれたもので、ボロブドゥールの先駆的な作品とされています。


チャンディ・パオン



チャンディ・パオンは、ボロブドゥールから2キロ弱のところにある小さな仏教寺院です。
高さ12mほどの小さな堂がひっそりと建っているだけで、訪れる人もあまりいません。
建てられたのは8世紀後半とされていて、シャイレーンドラ王朝のインドラ王の遺灰を埋めた所とするのが有力だそうです。

この寺院の見どころは、側壁の天樹と飛天、そして半人半鳥のキンナリ・キンナラのレリーフです。
天界の姿を描いた美しいレリーフで、これを見るだけのために足を運ぶ意味があると思います。




中央の天樹は天界に咲く吉祥の樹木カルバタールというのだそうです。天樹の下には金を入れた袋と天界に住むキンラナとキンナリー。天界に住む半人半鳥の美しい生き物を男をキンナリー、女をキンナラと呼びます。空には天人が飛んでいます。飛天もキンナラも左右対称ではなく、それぞれに動きがあって美しいですね。

また、他にも美しいターラ(仏教の女神)像があります。どちらも足が長いなあ。

   




チャンディ・ムンドゥ



チャンディ・ムンドゥはチャンディ・パオンから約1キロ、ボロブドールからは約3キロ弱のところにあります。

いまは一つしか建物が残っていませんが、もともとは周囲に多くの伽藍を有していたのではないかと言われているそうです。建造時期は800年ごろ。ボロブドールの少し前に建てられたと考えられています。

この寺院は内部も、外壁のレリーフも、ともかく見事。特に、内部の三尊仏はインドネシア最高の石像と言われているそうです。

内部は薄暗いのですが、案内の人が外から鏡で光を入れてくれると、巨大な三尊仏が光の中に浮かび上がります。



中央は釈迦牟尼仏。3mの巨大さです。
深く椅子に腰かけ、初転法輪印という法輪を回している手の形をしています。
これは釈尊が悟りを開いて初めて鹿野苑で説法をした姿を表しているそうです。

脇侍は高さ2.5m、どちらも片足を下におろした遊戯座という姿です。
向って左側は観世音菩薩。右側は金剛手菩薩と言われています。

   

観世音菩薩の右手は何でも願いをかなえて下さるという施与印、左手は蓮華を握っている形。
金剛手菩薩の右手は手のひらに金剛杵を乗せている形をして、左手は地面につけています。

この三尊仏はインドのエローラの影響を受けていると言われますが、模倣を越えた傑作として高い評価を得ているそうです。確かにお美しい。素人判断なのですが、エローラの官能性が消え、柔和な優美さがインドネシア独自の美しさと精神性の高さを醸し出しているように思えます。



インドネシア独自の柔和性・優美性という意味では、この寺院のレリーフも同じだと思います。
下のレリーフは毘沙門天とされるもの。まるでお父さんと子供の家庭的な雰囲気。子供が遊ぶ樹の上には鳥が飛んでたりするし、何より子供達がかわいい。それでいて、この美しさ。これがインドネシア美術の魅力のような気がします。




このレリーフの向かいには鬼子母神のレリーフがあるのだけど、そちらは子供を膝に乗せた慈愛深い母といった雰囲気。



この寺院は外壁のレリーフも見事です。外壁には様々な観音・菩薩像が彫られています。
左下は、おそらく観世音菩薩。脇侍を従えています。右下は入口左側の虚空蔵菩薩。

   


どちらも小さいながら魅力的な寺院です。
ボロボドゥールが生まれる源流のようなものを感じます。
ボロブドゥールから近いですし、時間があれば是非訪れたい場所です。



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参考文献

ボロブドゥール遺跡めぐり(新潮社 とんぼの本 田枝幹宏・伊東照司著)
この本はボロブドゥールに必携の本です。

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。