プランバナン(ロロ・ジョングラン)

ジョグジャカルタから車で東に30分のプランバナン村
ここには8〜10世紀の多くの寺院が残り、世界遺産となっています。
中でも白眉はヒンズー寺院ロロ・ジョングランでしょう。
2005年5月訪問

写真はロロ・ジョングラン全景


プランバナンは世界遺産ですが、プランバナンという名の寺院があるわけではなく、プランバナン地区にある遺跡群を総称して言うものというのが正確なようです。

世界遺産となっている史跡公園内に、ヒンズーの巨大寺院ロロ・ジョングランを始めとする幾つものヒンズー・仏教寺院があり、更に、その周辺にも多くの素晴らしい寺院が点在しています。
素晴らしい寺院があまりに多いので、ここではロロ・ジョングランだけに絞って、他の遺跡群はプランバナン遺跡群として別にまとめてみました。→他のプランバナン遺跡群を見る。

ロロ・ジョングランはマタラム朝によって、850年ころから900年ころにかけて建造されたヒンズー寺院で、同時に王家の霊廟でもあります。マタラム王朝6代目のラカイ・ピカタン王が建造し、また、彼の霊廟ともなりました。

史跡公園に入ると、最初に大きな3つの塔のような寺院が見えてきます。しかし、そばに近づくにつれ、実は巨大な3つの寺院と、その前に立つやや小ぶりな3つの寺院を中心とする建造物群だ、ということが分かってきます。上の写真だと、5つの建造物にしか見えないかもしれませんが、実は、真ん中の巨大な建造物の前にも、やや小ぶりな建造物が建っているのです。

建物の配置は下の写真の方が分かりやすいでしょうか。遺跡の半分しか写ってはいませんが・・



ロロ・ジョングランには、高さ47mのシヴァ聖堂を中心に左右に高さ23mのヴィシュヌ聖堂、ブラフマー聖堂が並び、更に、3つの聖堂の前には、それぞれの神の乗り物であるナンディ、ガルーダ、ハンサを祀る堂が置かれています。

そして、この6つの堂をとりまくように、かっては224の祠堂が建っていたのだとか・・・。今でもその跡をみることができます。


8世紀から9世紀といえば、ジョグジャカルタの北西にボロブドゥールが建造された時代でもあります。このころ、ジョグジャカルタ周辺には仏教国であるシャイレーンドラ王朝と、ヒンズー教国であるサンジャヤ王朝支配下のマタラム朝とがあり、二つの王朝がそれぞれの信仰する宗教寺院を競うように築いていたわけです。

ボロブドゥールが大地に根を下ろしたような安定感のある建造物であるのに対し、ここプランバナンでは幾つもの聖堂が天に向かって聳え立ち、なんともいえない躍動感を感じます

   


シヴァ聖堂・ヴィシュヌ聖堂・ブラフマー聖堂の三聖堂はどれも見事ですが、やはり中央のシヴァ聖堂が一番の見どころでしょう。

右の写真はシヴァ聖堂。左後方に写っているのはブラフマー聖堂です。

聖堂は基本的に全て3つの部分からなっています。
すなわち、下から基壇・堂・尖塔(屋根)です。

東に面した階段を登りつめると堂に入る入口があり、内部に神が祀ってあります。

シヴァ聖堂では中心のシヴァ神を祀る部屋だけでなく、その右にドゥルガー(シヴァ神の妻)、後ろにガネーシャ(シヴァの息子)、左にアガスティヤ(聖仙の長)を祀る小部屋もあり、それぞれの部屋には回廊を通り階段を登って入ります。

シヴァ神を祀る部屋に向かう階段を途中で折れると基壇の上に設けられた回廊に出るので、その回廊を通ってドゥルガー等を祀る小部屋を巡ることができる仕組み。

右の写真で人が登っていますが、ちょうど、人の姿が隠れるあたりから回廊に出ます。主神であるシヴァ神を祀る堂に入るには、更に、まっすぐ階段を登らないといけません。

ちなみに小部屋があるのはシヴァ聖堂のみで、他の聖堂は回廊はありますが小部屋はありません。
シヴァ聖堂はやはり別格なのです。



シヴァ聖堂の回廊にはラーマーヤナのレリーフが彫られています。正確にはシヴァ聖堂の回廊だけでは足りなくて、ブラフマー聖堂の回廊にまで物語りは続いています。

ラーマーヤナはラーマ王子が悪魔王に連れ去られた妻シータを弟やハヌーマンの助けをかりて救い出すインドの有名な物語ですが、インドネシアでは非常に好まれたとのことで、レリーフの中のラーマ王子は大活躍です。

   


悪者も分かりやすいですね。お腹に顔があります。




回廊には他にローカパーラという方位を守る神がいて、これが素晴らしい。ヒンズーの神で東西南北をそれぞれ守っているというのですが、理屈抜きで、丸彫りに近い神々の姿は惚れ惚れします。
個人的にはラーマ・ヤナのレリーフ以上に、この神々に感動しました。

美しいローカパーラ。左には天女アプサラス達。




角度を変えて撮ってみました。非常に彫りが深くてレリーフと言うより彫刻。
   


こちらも美しい。




ローカパーラは経典によって神々の担当する方位が違っているそうで、神々の名前は特定できませんでした。
東はアグニ・南はインドラ・西はヴァルナ・北はソーマという名を持つというのが有力のようですが・・・・

   



回廊を廻った後は、聖堂内に入ります。まずはシヴァ聖堂の中央の部屋に安置されるシヴァ像。高さ約3mの巨大な石像です。

シヴァは破壊と創造を司る神ですが、このシヴァ神の像の真下9mの場所にラカイ・ピカタン王の遺骨が埋められていたと言われています。ですから、この寺院はシヴァ神を祀ると同時に王家の霊廟という意味もあるわけで、このシヴァ神には王の面影があるのでは・・とも言われているそうです。

   


しかし、ロロ・ジョングランではシヴァの妻であるドゥルガー像の方が有名になっています。「ロロ・ジョングラン」というのは「細身の乙女」という意味。確かに官能的なインドの像と違い、ほっそりとして品があります。

現地ガイドさんがこの地の伝説を語ってくれました。

ロロ・ジョングランは、この地の王の娘でしたが、父が戦いに破れたため、敵王の妻にされることになってしまいました。

これを嫌ったロロ・ジョングランは「一晩で1000の寺院を作れたら嫁ぐ」と苦し紛れの約束をしましたが、なんと敵王は999の寺院を作ってしまい、朝までに1000の寺院を作る勢い・・・。
(近くにあるチャンディ・セウがその寺院だと言われています。)

そこで、ロロ・ジョングランは鶏を鳴かせて敵に朝が来たと勘違いをさせたのですが、敵王は1000の寺院が作れなかった理由がロロ・ジョングランにあると知るとロロ・ジョングランを石の像に変えてしまいました。

そして、この像が石に変えられてしまったロロ・ジョングランなのです。

現地ガイドさんの話だと、現在のインドネシア人はほとんどがイスラム教徒なのでヒンズーの神々には興味がないのですが、このドゥルガー像はロロ・ジョングランの美しさにあやかろうと多くの人に参拝されているのだそうです。

確かに、この像は多くの人に触られたからか黒光りしています。



ロロ・ジョングランの伝説は、かってこの地にあって滅ぼされた王家の伝説なのかもしれません。もし、その王家がこの寺院を築いたマタラム朝によって滅ぼされた王家だとしたら、ちょっと皮肉ですね。今では、この寺院はロロ・ジョングランと呼ばれているわけですから。

左下は象の頭をしたシヴァの息子ガネーシャ。富の神で、日本では聖天・歓喜天と呼ばれます。
右下はアガスティヤ。南インドの聖仙の長です。

   



既に述べましたが、シヴァ・ヴィシュヌ・ブラフマー聖堂の前には、それぞれの神が乗る動物を祀る祠堂があります。これらの祠堂はそれぞれの神の聖堂と向かい合っています。

左下はナンディ堂とハンサ堂。
右下はナンディ堂の中にあったナンディ。シヴァの乗り物である聖牛です。

   



ヴィシュヌ聖堂とブラフマー聖堂の中には、それぞれヴィシュヌ神像とブラフマー像が祀られている他、ブラフマー聖堂の回廊にはシヴァ聖堂の回廊に続くラーマ・ヤナの物語のレリーフが彫られています。

しかし、レリーフは回廊だけではありません。各聖堂の壁面にも美しいレリーフが彫られています。神々の像や繊細な装飾は見ていて飽きません。

   


男性像なのに、ため息がでるほど美しい。
   



祠堂入口を飾るカーラ。カーラは色々なところで見ることができます。
このカーラの左右には天女も彫られていて、繊細でいながら豪華な美しさです。





壁面を飾るレリーフ。獅子を挟んで左右に天樹と半人半鳥のキンナリー・キンナラ。




左下 天樹とキンナリー・キンナラの部分を撮ってみました。実に美しく細かい彫り。
右下 こちらは愛嬌があります。これも祠堂壁面のレリーフです。
   



左下は入口階段の下に彫られた海の怪物マカラ。口から天女が姿を現しています。
右下は階段側面のレリーフ。ちょっと面白い。トラでしょうか。丸いのは波?ナーガ?

   



ロロ・ジョングランでは散策していると次々と聖堂・祠堂が現れます。
このような景色はなかなか見られませんよね。

   


ロロ・ジョングランは素晴らしい遺跡です。
レリーフの美しさだけではボロブドゥールに及ばないかもしれませんが
多くの聖堂・祠堂の美しさは何とも言えません。

実はこの旅はスマトラ大地震が起きた直後のGWに行っています。
少しでも復興支援になるかと思って行ったのですが、インドネシアはその後も大地震が続いています。
ロロ・ジョングランも被害を受けたと聞きましたが修復は進んでいるのでしょうか。



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参考文献

ボロブドゥール遺跡めぐり(新潮社 とんぼの本 田枝幹宏・伊東照司著)
この本はジャワ島の遺跡巡りに必携の本です。

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。