ラブナー・サイール・シュラパック

2002年12月にウシュマル周辺の遺跡巡りをしました。
小さい遺跡ばかりですが、どれも魅力的。
サイールは2014年3月に再び訪れることができました。


ラブナー

疑似アーチの建物・ミラドール(展望台)・宮殿と見どころの多い遺跡です。
900〜1200年ころのものと考えられているようです。
2002年12月訪問

疑似アーチの建物


遺跡入口を入るとすぐ宮殿が見えますが、そのままマヤ時代の道(サクベ)を進むと疑似アーチの建物に出ます。キャザーウッドのスケッチでも有名な美しい建物で、マヤ建築の傑作とも評されます。壁面の上半分のみをモザイクで覆い、下半分は素地のままというプウク様式です。

疑似アーチの入り口が見事で、一見すると門のようですが、キャザーウッドの絵では壁が続いていたように見えます。実際、崩れた壁のようなものが周囲にあり、元々は建造物の入口だったようです。
また、アーチの両脇の壁面の上半分は当時のマヤの建物の模型なのだそうです。ウシュマルの尼僧院でも家をレリーフにしたものがありました。流行ったんでしょうか。面白いですね。

下の写真は、同じ建物を反対方向から見たもの。幾何学模様が美しく、こちらはモダンな印象。





ミラドール(展望台)



疑似アーチのある建物の近くにミラドール(展望台)があります。宮殿とは反対方向を向いているので、文字通り、外敵を見張る展望台だったのでしょうか。展望台は上の部分のみ修復されています。建物の屋根飾りが美しいですね。



宮殿




上の写真は疑似アーチのある建物方向から見た宮殿です。白い道はマヤ時代の道・サクベ。

宮殿は2階建てで、壁の上半分をモザイクで飾るプウク様式ですが、モザイクのない下半分にも柱を模した装飾が施されています。

左下の写真では、建物の角に大きく開いた蛇の口から人物(神?)が顔を出しているのが彫られています。マヤではよく見られるモチーフですが、メキシコで買った本では「統治者の神格化を象徴するため」とありました。
右下は2階からチャーク神の顔を撮ってみました。保存状態が良く象のような鼻が残っています。

   


この遺跡のサクベは印象的でした。宮殿からミラドール(展望台)を見たところです。





サイール

カンペチェ州との境界に近いユカタン州のサイール。
900年〜1200年ころのものと考えられている遺跡です。
サイールの見どころは、何と言っても3階建ての大宮殿
2002年12月訪問後、2014年3月に再び訪れることができました。

写真は宮殿全景。2002年より綺麗になっている気がします。


3階建ての建物はマヤでは珍しいのではないでしょうか。
それにしても巨大な建造物です。70もの部屋があるそうです。
上流階級の人達が住んでいたそうです。
真ん中に3階まで通じる階段があり、その左側は修復が進んでいます。
建物が赤っぽいのは鉄分を含む岩石で造られているから。


修復が進んでいる左側を撮ってみました。


サイールの宮殿では1階の屋根が2階のテラスになっています。1階と3階はシンプルな造りですが、2階の装飾が見事です。
ラブナーでも柱を何本か連ねた形の壁面装飾がありましたが、サイールでは更に何本もの柱を連ねた装飾壁と柱頭つきの柱が絶妙なバランスで配置されていて、なんとも言えないリズム感を建物に持たせています。ラブナーの宮殿より、少し遅れて建設されたと考えられているそうです。
2階上部のモザイク部分は、上の写真のちょうど中央付近に大きなチャーク神がアクセントを利かせています。面白いのは、チャーク神の左右にある「降臨する神」と呼ばれる彫刻。


まずはチャーク神。大きく見事です。




こちらが「降臨する神」


上の写真の真ん中あたりに彫られているのが「降臨する神」です。逆さまになったM字開脚のような足とお尻が分かるでしょうか。降臨する神はトゥルム遺跡に有名なものがあり、雨神チャークだとか蜂を象徴化したとか言われていますが・・・不思議な姿。マヤの人の発想は本当に独特です。更に、降臨する神の左右にはヘビがいて、右のヘビは右を、左のヘビは左を向いています。


降臨する神とヘビを拡大してみました。ヘビは大きく口を開けています。


2002年に訪れた時の写真と比較してみたら、随分とレリーフが見やすく、綺麗になっています。修復が進んだんでしょうね。しかし、残念だったのは2002年には登れた中央階段が登れなくなっていたこと。メキシコの遺跡は、どんどん登れなくなっているようです。2階に2つの広間があると読んだので、確かめてみたかったんですが・・・。下から眺めるだけになったのは寂しいですね。


1階の右側です。上層部は崩れていますが1階は綺麗。

柱を束ねた装飾壁が見事です。


こちらは1階左側。屋根が落ちてますが入口の円柱とまぐさ石、マヤアーチがよく分かります。


この入口、実はとても低い。現地ガイドさんはマヤの人達はとても小柄だったんだ、と語っていました。男の平均身長が1,3m、女が1,2mというのですが・・・・ちょっと低すぎない?本当かな。確かに入口はとても低くて、かがまないと入れないけど・・・。食糧事情とかあったんでしょうかね。


現地ガイドさんに連れられてジャングルの中を進むと屋根飾りが印象的な建物に出ました。
展望台と呼ばれている建物です。裏に廻ることはできますが、上層部のみ修復されているようです。
   



現地ガイドさんが、もう一つ見どころがあるというので、再びジャングルの中をしばらく歩いたら奇妙な石碑に出ました。

屋根で保護されており、大切な石碑のようですが、ただ一つ、ぽつんと置いてありました。

それにしても・・・・・非常に変わった石碑です。

見慣れたマヤの石碑とは、ちょっと違いすぎる。

ご覧のように人物像ですが、異様に大きな男性器が彫られています。

しかも、顔は丸く、マヤで良く見る顔とは違いすぎる。

マヤより古い時代のものなのか、それともプウク地方に多く見られる男根信仰と関係があるのでしょうか。

残念だったのは、現地ガイドさんが英語ガイドだったので、説明がよく分からなかったこと。
説明文を自動翻訳したら「肥沃の神」となりました。
豊穣神なのは間違いないと思います。



石碑といえば、遺跡入口に近い所にも2つの立派な石碑があります。
残念なことに余り保存状態は良くありませんが、とても大きい。
現地ガイドさんはカラクムルの石碑に似ていると言っていました。豊穣の儀式が彫られているそうです。
   



遺跡入口には石碑がいくつか置かれていました。
右下・・・テオティワカン・ゴーグルを付けたトラロックに見えるんですが・・・はて。
   



最後に遺跡入口で跳ねてたわんこ。
名前はパカル。パレンケの王様と同じ。
現地ガイドさんが言うにはマヤ犬だそうです。ほんとかな。
小柄なわんこで、超元気でした。





宮殿の修復が進んだら素晴らしいでしょうね。

他にも修復を待つ埋もれた建物がいくつもありました。




シュラパック

900年〜1200年ころの遺跡と考えられているようです。



シュラパックは広大なジャングルに埋もれた遺跡です。地図を見ると、かってはかなりの建造物があったらしいのですが、修復・復元された建造物はほとんどありません。

上の写真が数少ない修復された建造物。上部にチャーク神の顔がモザイクで刻まれ、下部は素地のままという典型的なプウク様式の建物です。チャーク神が見事です。

   

他にも幾つかジャングルに埋もれた建造物がありましたが・・・どちらかというと、建造物よりもジャングルの中で小動物にあうことを期待した方がいいかもしれません。



ウシュマルカバー、そして、この3つの遺産を2002年は1日でまわりました。
プウク様式を堪能するために、是非足を延ばしたい遺跡です。



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参考文献

マヤ三千年の文明史 日本語版(ボネーキ出版社)メキシコ国立人類学博物館にて購入 
古代メキシコ 日本語版(ボネーキ出版社)メキシコ国立人類学博物館にて購入
図説古代マヤ文明(河出書房新社ふくろうの本 寺崎秀一郎著)

現地ガイドさんの説明によるところが多いです。