チャンディ・パナタラン

東部ジャワのブリタール市北東12キロ
マジャパイト王朝最大の遺跡であるチャンディ・パナタランがあります。
見どころが多い広くて明るい遺跡です。
2005年5月訪問

写真は左からタンガル堂、蛇堂、本堂


マジャパイト王朝は東部ジャワで13世紀末から15世紀中ごろまで栄えたヒンズー王朝です。7代の王が続き、約150年間栄えました。

チャンディ・パナタランはマジャパイト王朝最大の遺跡で、東部ジャワを代表する聖地です。

寺院は公園として整備されていて、広々として、明るい雰囲気です。

入口にはかわいい守門神ドヴァラバーラがいました。

この遺跡からは1197年から1454年までの約250年間に渡って、この地が神聖な信仰の場であったことを示す碑文が見つかっています。

現地ガイドさんによると、もともとはこの寺院は近くのクルート火山を拝む場所として12世紀ころに造られたのが始まりだそうです。
山岳信仰ですね。

その後、ヒンズー教と結びついて寺院が発展し、マジャパイト王朝の中心的寺院となったのだそうです。

本堂の本尊はシヴァ神でジャワでよく見られるように霊廟でもあったようです。

広すぎてわかりにくいですが、この寺院もチャンディ・スクゥチャンディ・セトと同じように3層のテラスになっていて、少しづつ登っていく形となっています。3つともマジャパイト王朝の寺院なので、マジャパイト王朝の建築様式なのでしょうか。





プンドポの基壇

上の写真だと分かりずらいですが、入り口を入ってすぐのところに儀式の場であったプンドポの基壇があります。ここには、「太った男と痩せた男」という面白いお話のレリーフが残っています。



太った男と痩せた男は兄弟で、一人は瞑想の修行ばかりして痩せていて、もう一人はおいしいものを食べて太っていました。
ある日、トラが痩せた男を食おうとしたので、痩せた男は自分は痩せているから太った男を食えと言いました(ひどい兄弟です)。そこで、トラが太った男のところに行くと、太った男は喜んで自分の体を差し出そう、つまり食わせようとしました。そうすると、トラがインドラ神の姿を現し、太った男を乗せて天に昇っていきました・・・・というお話です。

東ジャワの人たちは、この寓話を「太った人=仏教、痩せた人=ヒンズー教」で、仏教の方が優れているととらえているんだそうです。でも、ここヒンズー教寺院なんですが(笑)。

それにしても、レリーフのトラはかわいいというか愛嬌があります。実際のレリーフでは、置いていかれた痩せた男がトラのしっぽにつかまって自分も天に行こうとしているところとかも描かれていて、かなり楽しいものとなっています。ボロブドゥールやプランバナンのような優美さはありませんが、親しみやすさが魅力といったところえしょうか。



タンガル堂(祠堂)

プンドポの基壇から2層目のテラスを進むと祠堂の前に出ます。この祠堂はタンガル堂と呼ばれています。タンガルとは「日付」の意味です。この堂の入口にジャワ暦1291年(西暦1369年)の年代を示した碑文があることから、そのように呼ばれているようです。

祠堂の中にはガネーシャが祀られていました。祠堂の前には天女の美しい像もあります(右下)。

   


この祠堂入口のカーラは見どころのひとつです。ご覧のとおり、彫りが繊細で素晴らしいですが、それだけでなくボロブドゥールプランバナンなど中部ジャワではなかった下あごが、このカーラにはついています。これは東部ジャワ特有の表現で、このカーラはその代表作なのだそうです。
また、カーラの下に四角く囲まれたところに彫られているのがジャワ暦1291年の碑文です。





蛇堂(ナーガ堂)

更に進むと、蛇堂(ナーガ堂)と呼ばれる建物に出ます。



この蛇堂(ナーガ堂)、蛇(ナーガ)が建物全体をうねるように取り囲み、それを天人・天女が支えています。実に綺麗。天人は鐘をもっています。非常に美しい建物ですが、意外なことに、もともとは武器庫だったのだそうです。

   



本堂

更に進むと、一番奥が本堂です。



2005年5月に訪れた時、本堂は3壇の建物でしたが、現地ガイドさんによると、本来はもっと高い建物だったのだそうです。現在、本堂の横で第4壇を修復中とのことで、完成したら上に載せるよ、と言っていました。




本堂には狭い階段を上がって入ります。本堂の入口にいる守門神ドヴァラバーラは遺跡入口とは違い、とても強そうです。横に童子を従えているんでしょうか。思わず、よく見ちゃいました。

なんと足元は頭蓋骨が並んでいます(左下)。足がたくましいなあ。後ろの彫りも素晴らしい(右下)

   


基壇にはそれぞれのテーマがあるようです。第1基壇にはラーマーヤナのハヌマーンの活躍が描かれ、第2基壇にはクリシュナ物語が、そして、第3基壇にはガルーダが彫られています。


左下は第1基壇のハヌマーンが魔王を倒すところ。しっぽがあるのがハヌマーン。
右下のレリーフも見事です。上にいるのは怪物でしょうか?
   


第1基壇の側壁には円形パネルに動物たちが彫られていました。これも美しい。
     


第3基壇の側壁のガルーダ。強そうですね。



着いたのが夕方で、ちょっと駆け足の見学になってしまったのが残念。
もう少し、レリーフをゆっくり見たかったなあ。


2005年当時、この遺跡は地球の歩き方にも載っていませんでした。
しかし、かなり見どころのある遺跡です。
もう少し知られても良いんじゃないでしょうか。



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参考文献

ボロブドゥール遺跡めぐり(新潮社 とんぼの本 田枝幹宏・伊東照司著)
この本はジャワ島の遺跡巡りに必携の本です。

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています